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研究者のEMARF活用 -設計から施工までを自らの手元で一気通貫するものづくり‐

今回の記事では、日本大学大学院の小林直明研究室で建築デザインを研究されている間田さんと小山田さん、そして鷹田さんをご紹介します。

お三方は、少子高齢化による職人・作り手の不足という社会課題に対し、専門的な施工者を必要とせずに誰でも空間を自由に作り上げられる建築の在り方を模索される中で、デジタルファブリケーションを用いて研究を行っています。

近年このようにデジタルファブリケーションを学びに取り入れる教育・研究機関が増えており、実際にEMARFのローンチ以来、大学などでも多くご利用いただいてきました。先日VUILD黒部が担当した、東京理科大学でのEMARFを使ったスタジオ課題もその例の一つです。

しかし、例えば研究のために1/1スケールのモックアップを作りたいと思っても、加工のための機械が身近にないことも多く、誰でも気軽にものづくりにアクセスできるわけではないのが実情です。

今回は、場所や環境を問わず設計から施工までのプロセスを一気通貫して行うことができるようになるEMARFを用いて、加工機を持たずとも実現したものづくりについて伺いました。

お話をお聞いた方々:
日本大学大学院 理工学研究科 海洋建築工学専攻 博士課程 小林直明研究室/MAMM DESIGN一級建築士事務所代表 間田真矢様
日本大学大学院 理工学研究科 海洋建築工学専攻 修士課程 小林直明研究室 小山田駿志様
日本大学大学院 理工学研究科 海洋建築工学専攻 修士課程 小林直明研究室 鷹田知輝様
株式会社ディックス 田村尚土様
聞き手:VUILD株式会社 EMARF事業部 濱田

▶︎ EMARFを知ったきっかけを教えてください。
以前からVUILDの活動についてはWebメディアやSNSを通じて知っており、2年ほど前に川崎の工房への見学もしたことがあります。その関係で、EMARFのリリースについてもSNSなどで拝見していました。

▶︎ 今回の製作物と製作背景を教えて下さい。
今回製作したのは、緩やかに空間を分節するパーティションや棚として利用することを目的とした立体格子で、形状としては、180mm角のパネルを相欠きによって組み合わせています。

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置く場所や用途によって形状が代わってくるので、デジタルファブリケーションが生かしやすいのではないかと考えたのですが、現状では大学に必要な設備が整備されていなかったため、EMARFを活用することにしました。

また、製作の背景には、少子高齢化による職人・作り手の不足という社会課題に対し、専門的な施工者を必要とせずに、誰でも空間を自由に作り上げられる建築の形を模索したいという研究テーマがあったことも今回EMARFを利用した理由です。

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▲製作物は、研究室前のエレベーターホールに設置予定。

▶︎ 設計プロセスについて教えて下さい。
EMARFありきで製作可能かつ、加工された部材を自ら施工できる形状を前提に設計を進めていきました。

そのため、単純なパネルの構成で、自由な形状・空間を作り出していくことを目指したのですが、その一方で、オブジェではなく機能を付加した作品にしたかったため、株式会社ディックスさんが開発されている「Grasshopper *」用プラグイン「EEL」を用いて、荷重等の安全性をシミュレーションしました。

「EEL」の活用にあたっては、田村さんに研究室の学生に向けてレクチャーして頂きました。

*3Dモデリングツール「Rhinoceros」上で動作するプラグインのモデリング支援ツール。

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▲赤や黄色になっているところが変形が大きく改善や補強が必要な部分。
※プラグインはディックスのHPからダウンロード可能で、現在はベータ版として公開されており、構造解析やデータ変換が可能とのこと。

▶︎ EMARFを使った設計・製作で良かったこと、メリットを教えて下さい。
自分たちで設計し施工するまでの工程がスムーズに行えるので、ものづくりを行うユーザーのニーズに応えるサービスだと思いました。

発注までの工程が明確で、設計の実現性を高めていると感じますし、設計と製作の間のフィードバックのループが早く回せるようになった実感もあります。

▶︎ 反対に、困ったことや不便に感じたことを教えてください。
設計時に、相欠き部のクリアランスの設定に悩みました。また、最初に共芯のシナ合板を使わせてもらいモックアップを作成しましたが、予算の都合で通常のシナ合板で本製作を実施したところ、同じ12mmでも精度の違いがあり、相欠きの寸法調整が必要となりました。この辺りの情報をデータ作成前に頂ければよかったと感じました。

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▶︎ 金額感・スピード・設計したものがそのまま実現するという、EMARFの3つのメリットについてはいかがでしたか?
3次元ベースで設計したものを専門の業者に委託せずに製作できる点に非常にメリットを感じましたし、ユーザーがものづくりに親しみやすい環境を作り上げていると思いました。

▶︎ 今後作ってみたいものがあれば教えて下さい。
今回はすべて同じ形状のパーツだったため、デジタルな製作のメリットがあまり生かしきれなかったこともあり、今後は、今回作成したパネル構成を応用した形状(すべての形状が違う作品)など、研究の中でバリエーションを検討していきたいです。

また、用途や場所に応じて各パーツの形状も変化させられるようなモデルを「Grasshopper」で作る予定です。

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▶︎ 今後、どのような展開を期待しますか?
5軸CNCルーターが利用できれば製作できる部材形状が飛躍的に増えると思いますので、是非ご検討下さい。

※5軸加工機を用いた加工も別途受け付けておりますので、興味のある方はぜひお問い合わせください。

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▲ VUILD本牧工場の5軸CNCルーター「Biesse」

作品写真 太田拓実
加工機写真 黒部駿人

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