オンラインで気軽につくる 〜デジタルネイティブの創作論〜EMARF学生アンバサダー紹介vol.5
VUILDがローンチした日本初のクラウドプレカットサービス「EMARF」を使い、「ものづくりの文化を広げる」とともに、「学生ひとりを独立した企業家に育てる」ことを狙いに3ヶ月に渡り活動するEMARF学生アンバサダー。7月頭にスタートをきってから、2ヶ月が経過しました。
7月末には月次報告会を終え、残り2ヶ月の活動予定をメンバー同士で共有。活動期間残り1ヶ月を残した今、このnoteでは、多くの応募のなかから選出された10組のアンバサダーの方々にインタビューを実施し、応募当時の思いと、これまでの活動、そして今後の活動予定について伺いました。
シリーズ最終回となる第5弾は、デジタルファブリケーションを専門に扱ってきた経験から、EMARF前・後のものづくりを考えるSoSugitaLab(広島工業大学 )と、「建築と異分野の融合」を軸とし、コンペからクライアントワークまで多岐に渡って活動するND3Mのインタビューをお届けします。
これまでに培ってきたノウハウから、EMARF前・後のものづくりを考える 広島工業大学 SoSugitaLab
ー 研究室で取り組んでいることと、アンバサダーに応募したきっかけを教えてください。
森本 SoSugitaLabとは、デジタルファブリケーションとコンピュテーショナルデザインを専門としている研究室で、主に建築やものづくりに関する研究や活動を行っています。
奥川 研究室には、ShopBot、レーザーカッター、3Dプリンターが設置されており、最先端のものづくりを実践することができます。昨年度は、木組みでパーテーションを制作するプロジェクトを、広島のハウスメーカー「山根木材」と産学連携して行いました。
最先端のデジファブ技術を研究室に取り入れていくためにも、今回EMARFアンバサダーに応募させていただきました。
学部3年生が毎年制作するパビリオンプロジェクト
ー 7月の活動を教えてください。
藤安 僕たちは3ヶ月間のアンバサダープログラムを通して、研究室に置くミーティングブースを制作しています。研究室がコンクリート床にガラス張りの無機質な空間であることや、デジファブを扱っている研究室なのに市販の机や椅子を使っていることから、木質で温かみのある自分たちらしいミーティングブースを作りたい思いました。
また、これまで制作してきた作品が研究室内に溢れているため、それらを収納できるように机、椅子、棚の3要素で構成されている一体型のデザインにしました。
森本 7月にはモデルが完成していたのですが、大規模になりすぎてしまったことで金額が膨らんでしまいました。そのため、モデルが完成してから8月中旬まで不要な部分をカットしてブラッシュアップするという作業をしてきました。
藤安 今までオフセット値は自分たちで考えていましたが、EMARFを使うことでどの程度の違いが生じるか分からなかったため、まずはそれを検討するために70近くあるブロックのうち4ブロック分のモックアップを研究室のShopBotで作りました。先日EMARFで発注した椅子部分の部材が届き、組み立てたところです。
ー 今回EMARFを使ってみてどうでしたか?
奥川 普段から研究室のShopBotを使って制作している身としては、3Dモデル作成後、一番手間のかかる加工データ作成にEMARFコマンドを使うことでかなりの時間を短縮できるため、かゆいところに手が届く便利ツールになっています。ドッグボーンやオフセット値を細かく設定できる点もとても助かっています。
森本 EMARFを使うことで、加工データを作る面倒くささの壁がなくなりましたね。
藤安 単純なミスもなくなりますし、予算を事前に検討できる点も良いですね。EMARFの機能を使い切れているとはまだ言えませんが、今まで再現不可能だと思っていた加工方法などが容易に実現できる気がしています。また、色々な工法を考えるきっかけにもなりました。
ー EMARFアンバサダープログラムの前半を終えた感想を教えてください。
奥川 アンバサダーになる以前からデジタルファブリケーションを用いて活動してきましたが、そのワークフローの中にEMARFを取り入れることが新たな可能性に繋がる気がしています。
これまでは、レーザーカッターで作成した模型で全体の検討を行い、詳細を検討するためにShopBotで実寸モックアップを作成していましたが、その後の流れにEMARFを組み込むことで、最終成果物をEMARFで発注するという流れができました。
さらに、他のEMARFアンバサダーの活動からも刺激を受けています。プロジェクトの一部としてEMARFを使うメンバーや、新しいEMARFの使い方を模索するメンバーなど、様々な特徴を持つメンバーが全国各地から集まって活動しているので、真似したくなるようなものばかりです(笑)。
ー プログラム終了後の予定は何か決まっていますか?
藤安 これまで僕たちは単なる模型を作るだけではなく、建物が成り立つ構造を1分の1モックアップを用いて詳細に見せたいと考えてきました。なので、今後はモックアップを作るツールとしてもEMARFを活用したいと考えてます。
また、来年からは社会人になるので、EMARFを使ってオンリーワンの家具を自宅に揃えていきたいと思っています。これまでは、研究室に材料を持ち込んで加工したものを自宅に持って帰るという手間がありましたが、EMARFを使えば切り出しから配送までをオンラインで一貫して行えるので、個人的なものを作るモチベーションに繋がります。部材が研究室に届いた時はプレゼントをもらったような気がして、逆に新鮮な体験でした(笑)。
奥川 自宅をカスタマイズしたり友人へのプレゼントを作ったりと、個人的に活用したいということはもちろんありますが、より多くの人にEMARFを知ってもらいたいと思っています。広島工業大学では、2年生の前期にデジタルファブリケーションを扱う授業があります。今後は、そこでデジファブに興味を持った学生のためにワークショップを開催するなど、学内での活動に使わせて頂きたいです。
また、せっかくできたEMARFアンバサダーのコミュニティなので、今後もこのメンバーで活動できるようなことがあれば嬉しいです。
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次は、名古屋を拠点に活動するND3Mをご紹介します。コンペからクライアントワークまで多岐に渡って活動する彼らが、「メンバー内でものづくりに対する意識が変わった」と感じた瞬間とは?
研究・思考・議論を重ねていく中で苦手と得意を共有することがチームとしての強さになる ND3M
ー 「ND3M」とこれまでの活動について教えてください。
近藤 ND3Mは、「建築と異分野の融合」を軸とし、研究・思考・議論をするチームとしてデジタルデザインに関して様々なワークショップを行っています。現在は、愛知県を中心とする東海地方の大学生が所属しています。
池本 メンバーの具体的な内訳としては、名古屋大学、名古屋工業大学、三重大学、中部大学、豊橋技術科学大学に在籍している学生7名です。昨年11月24日に、3Dプリンターでパスタを繋ぐジョイントを出力し、パスタタワーを作るというワークショップを開催したことを皮切りに、当時の参加者やTwitterを含む個人的な繋がりで集まった学生が今のメンバーになっています。
最初のワークショップに加え、ND3Mとしての2回目の活動は今年3月に開催された「学生照明展」に出品した照明作品の制作です。3つ目はnoizの豊田啓介さんをお招きしたUnravel Futureというダイアグラム分析で、EMARFアンバサダープログラムへの参加はND3Mとして4つ目の活動ということになります。
ー アンバサダーに応募したきっかけを教えてください。
田住 近藤さんが「EMARF2.0」を使っていたのをきっかけに、ND3MのメンバーもEMARFのことを知ったんですよね。
近藤 以前講習会を受けた時に、EMARFのことを知りました。CAMまで持ってけるという点がすごく便利だと思っていたので、それ以来個人的にEMARFのことは推していました。ND3MのメンバーもRhinocerosやGrasshopperが使えて、アンバサダーの募集要項とマッチしたので今回応募することになりました。
ー アンバサダーとして、これまでに行った活動を教えてください。
池本 3ヶ月間に渡るアンバサダープログラムにおける主な活動として、「地獄組取り付けプロジェクト」を進めてきました。このプロジェクトは、建築設計事務所 株式会社ディックスのオフィス3 階天井部分に地獄組を取り付けるというもので、愛知県立芸術大学の卒業設計作品として社内に保管されていた地獄組を、天井意匠として再利用します。
今回はアンバサダーとして、地獄組を天井に固定するために使う部材をEMARFで切り出し、吊るされているブレースや照明に接触しないように取り付けていきます。7月は配置スタディ、VR検討、モデル制作を行い、8月はモックアップ作成・施工計画・プレ設置に取り組みました。竣工は、9月中旬を予定しています。
ー 今回EMARFを使ってみてどうでしたか?
田住 これまでつくりたいものがあるにも関わらず場所や環境などの要因で諦めていたり、理想に対して妥協して簡単な手段をとっていたなかで、オンラインで完結するEMARFというサービスが出てきたことで、いろいろなことがもっと気軽にできるようになるのではと思いました。もちろん機械の制約などもありますが、そのなかで、環境に関係なくものづくりできるようになるということは、すごくいいことだと思っています。
池本 クライアントの方と値段の話になったときに、「だいたいこのくらいですよ」という見積もりが言えるというのも大きいメリットだと感じました。
ー EMARFアンバサダープログラムの前半を終えた感想を教えてください。
池本 メンバー内で、ものづくりに対する意識が変わったと思うことがありました。ソフト上でモデリングしていたものが実物になって届くと、今までデザインに対して苦手意識を持っていた子も、実物を見た途端に「やってよかった」と言ってくれたんです。その後もデザイン打ち合わせに積極的に参加してくれたりとモチベーションも上がり、実際にモノに落とし込むことがデザインに対して前向きになるきっかけになったと感じました。
ー 9月の予定を教えてください。
田住 9月中旬に竣工予定の「地獄組取り付けプロジェクト」と同時進行で、FabCafe Nagoya で行うワークショップの展示用什器の制作を進めていきます。こちらは、9月18日にオープンする予定です。
什器設置のARイメージ写真
ー 今後やりたいことはありますか?
池本 地元の建築家やデザイナーの方々を巻き込み、サブロク板1枚という制約で家具を即日設計するEMARFワークショップを企画できないかと考えています。今は、EMARFに少しだけ興味を持っているけど手を出せていない、という方が増えてきている段階だと思っているので、その興味をモノとして出力されるというアクションにまで繋げてあげたいと考えています。
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