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#14 リモートワーク? オフィスで働く時代の再来

ここ最近リモートワークは非常にホットなトピックですよね。でも私はこれから全員がワクチンを打って、普通の生活に戻れば戻るほど、私たちが思っている以上にオフィスで仕事をするようになると予想しています。当然、これはリモートワークを支援するプロダクトやサービスを提供するスタートアップにとっては良いニュースではありません。今日はなぜ私がそう思っているのかについて話してみたいと思います!

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2020年、多くの人々が自宅で仕事を始めました。そしてたくさんの人々がこれからもリモートワークを続けたいと望んでいて、これに対応すべく、実際に多くのテクノロジー企業が動いています。たとえば、Googleは、従業員が週2日はリモートで仕事ができる「Flexible Workweek」と言うアイデアをテストしているようです。また、イギリスで最もバリュエーションが高いフィンテック会社であるRevolutは、従業員が1年に最大2ヶ月間は海外で働くことができるようにすると発表しました。このような動きはあるものの、冒頭でも話した通り、私は人々が望むほどはリモートで仕事ができなくなるのではないかと思います。そして、これはコラボレーションツールなどのリモートワークに特化したプロダクトやサービスを提供するスタートアップに大きなインパクトを与えかねないと思います。

最初の理由としては、GitLab社のように創業時からリモートワークで運営していて、リモートワークのカルチャーがきっちりと定着している会社でない限り、普通の会社としては従業員がオフィスにくることを望んでいるからです。Google、Revolut、Facebookなどの会社は、リモートワークを積極的に採用しようとしていますが、微妙なニュアンスを読み取る必要があります。たとえば、Facebookの発表を読むと、「次の10年に渡ってリモートワークにシフトする」と述べています。2021年でもなく、2022年でもなく、これから10年と言う長い時間を経て徐々に移行するのです。Revolutの従業員も2ヶ月間は海外で自由に働くことはできるかも知れませんが、逆にいえば残りの10ヶ月はオフィスで働く必要があるかも知れません。これは非常にスマートなマーケティングだなと個人的には思っています。

Googleは「Flexible Workweek」というアイデアをテストしつつも、データセンターやアメリカ国内のオフィスに70億ドルを投資することも計画しています。これからオフィスの役割は個人個人の作業スペースではなく、より対面ミーティングやコラボレーションのために変更されていくとは思いますが、いずれにせよ結局Googleも従業員がオフィスにきて欲しいと考えていることが読み取れるのではないかと思います。

NetflixのCEOであるリード・ヘイスティング氏は、リモートワークを堂々と反対している人の一人です。彼は昨年のウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、リモートワークのことを「純粋なネガティブ」と呼んだことがあります。彼は人々がリモートで仕事をする場合、アイディアの議論などが難しいと話していました。

2番目の理由は従業員の観点からです。今は全員がリモートで仕事をしているため、リモートワークが機能しています。ちょっとだけチームの他のメンバー全員がオフィスで仕事している時に、一人だけがリモートで働いている状況を想像してみましょう。オフィスで働いているメンバーたちがたまたまランチに一緒に出かけて、あるプロジェクトの重要な論点について議論しました。1、2回くらいは大丈夫でしょう。しかし、その回数が段々と増えて行けば、リモートで働く人は取り残されたと感じ始める可能性があります。そう、全員ではなく一部の人々だけがオフィスで働く場合、オフィスにいない人々はますます、FOMO(「fear of missing out」の略語で、直訳すると「取り残されることへの恐れ」となる)が大きくなってしまい、こうなると結局全員がオフィスにいくようになると考えられます。

2020年リモートワークがブームになるにつれて、関連テクノロジーを提供するスタートアップも急成長してきました。Pitchbookによると、2019年から2020年にかけて、バーチャルイベントカテゴリーのスタートアップの資金調達件数が11件から44件(400%増)に増えたり、全体の調達額は$43.68Mから$523.57M(1,199%増)まで膨らみました。これは一つのカテゴリーのデータにすぎず、周辺カテゴリーを含めるとその数字はさらに膨らみます。

もし私が予想している通りリモートワークの需要が鈍化する場合、これらのスタートアップは2020年に予想していたほどは成長しなくなったマーケットをめぐって厳しく競争することになります。さらに、これらのツールは急速にコモディティ化されています。Zoomの例をみてみましょう。Google、Microsoft、SlackからFacebookまで、ほぼ全てのテック企業がビデオ会議ソリューションを提供している中、Zoomのプロダクトは段々とコモディティ化されてきています。Zoomがビデオ会議ソリューションを作ろうとしている会社にAPIを提供するモデルにも注力してきたのは賢明な動きだと思います。

これらのスタートアップの多くは、想定よりも早期に買収され統廃合されるか、プロダクトをピボットするか、単に失敗するだろうと、私は予測しています。シカゴ大学の2020年の調査によると、米国の仕事のうち自宅で実行できるのは34%だけだそうです。また、私は主にテクノロジー業界について話してきましたが、米国の労働統計局の情報カテゴリーに属する​​労働者の数は、米国の総雇用人口1億6,300万人のたったの1.7%にすぎません。いつかは一般化の誤謬を避ける必要がありますね。

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References:
• Google Delays Return to Office and Eyes ‘Flexible Work Week’ - Link
• Revolut, the $5.5 billion fintech startup, says it will let its 2,000 staff work abroad for 60 days a year - Link
• Facebook to Shift Permanently Toward More Remote Work After Coronavirus - Link
• Google to spend $7 billion on data centers and office space in 2021 - Link
• Netflix’s Reed Hastings Deems Remote Work ‘a Pure Negative’ - Link
• With much of U.S. staying at home, how many jobs can be done remotely? - Link
• Employment by major industry sector by Bureau of Labor Statistics - Link

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