#26 国内VCは全てマイクロVC?
副題:世代を超えるVCエコシステム構築の第一歩
米国は世界最大のベンチャーキャピタル投資金額を誇っています。OECDのデータによると、2019年には15兆円($136B)が米国のベンチャー企業に投資されました。金額が膨大になったのは、Flexportの1,100億円($1B)やDoordashの780億円($700M)のラウンドなど、メガディールが多かったためだと主張する人もいるかもしれません。この主張は部分的には正しいです。なぜなら、全体投資金額の半分以上に相当する9兆円($83B)がレイターステージの案件に使われたからです。しかし、残りの6兆円($53B)は、純粋にアーリーステージのディールに使われているのです。一方、同期間の日本でのベンチャーキャピタルの投資総額は、2,800億円くらいで、米国のアーリーステージのVC投資の5%程度に過ぎません。
このような規模は、少数の有名なVCファンドが実現しているわけではありません。米国では、数千のVCファンドがあり、毎年数百のファンドが設立されています。今日は、それらVCファンドをファンドサイズをベースに簡単に分類をしてみたいと思います。
大型ファンド
Sequoia、NEA(New Enterprise Associate)、Bessemer Ventures、Greylock、Kleiner PerkinsなどのVCファンドをご存知の方は多いと思います。これらのファンドは、30年以上の歴史を持つ第一世代のVCです。魅力的で安定した実績、膨大なAUM(Asset under management、運用資産残高)とファンド規模、そして確固たるレピュテーションを誇っています。
また、Andreessen Horowitz、Founders Fund、Khosla Ventures、Lightspeed、General Catalystなどの大手もあります。これらの企業は、第一世代のVCに比べると比較的歴史が浅いですが、膨大なAUMや10億ドル以上のファンドを保有し、強い影響力を持っています。
中型ファンド
上のチャートの左端を拡大すると、上記のような図になります。ここからが面白いところです。ここに掲載されているGreycroft、Felicis Venture、Drive Capital、Floodgate Fund、Initialized、IA VenturesなどのVCは、VC業界以外の人たちの間では、それほど知られていないかも知れません。しかし、彼らは上記のメジャーな大型ファンドと同等の競争力を持ち、ベンチャー・エコシステムで重要な役割を果たしています。ここでは中型としていますが、彼らのファンドサイズは100億〜1,000億円(1億~10億ドル)、AUMも数百億円規模であり、殆どの日本のVCファンドよりも大きいサイズです。
マイクロVC
上の図の左端をさらに拡大すると、次の図のようになります。これは、規模が1億ドル、すなわち約100億円以下のファンドで、いわゆるマイクロVCと呼ばれるものです。その多くは、シードやアーリーステージの案件にフォーカスしています。これらのファンドはあまり知られていませんが、シードやアーリーステージの案件では大きな影響力を持っています。例えば、大型ファンドに所属するベンチャーキャピタリストが、シード案件へのエクスポージャーを増やすために、これらのマイクロVCに投資することも多くあります。また、マイクロVCの中には、急速に規模を拡大するものもあります。例えば、2018年に設立されたBling Capitalは、すでに2つ目のファンド及びいくつかのオポチュニティ・ファンドをクローズしていて、すでに200億円以上のAUMを構築しています。さらに重要なことは、VCファンドの立ち上げやファンドそのものへの投資がより身近になっていることから、マイクロVCの数が急速に増加していることです。
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米国のベンチャーキャピタル市場が他国に比べて非常に大きい理由の一つは、ベンチャーキャピタルファンドの強固なエコシステムがあることです。大型ファンドだけでなく、中型ファンドやマイクロVCもエコシステムをしっかりと支えています。シードステージのスタートアップが少しずつ成功を重ねていくことでユニコーンに成長するように、マイクロVCも少しずつ実績を積んでいきながら中型・大型ファンドに成長していきます。数々のサクセスストーリーは、新しいファンドマネージャーが自分の小さなファンドを立ち上げることを常に促しています。
現在、規模や歴史からすると、日本のVCファンドの多くはマイクロVCに分類されてます。彼らが日本で最初の大型VCファンドとして成長できるように、健全な社会的風土の定着、適切な規制の整備、より魅力的なスタートアップがたくさん出てくることが重要です。同時に、誰もが新しいファンドを簡単に立ち上げることができるように、エコシステムを成長させていくべきです。今のVCファンドが大型ファンドに成長していく中、さらに新しいVCたちが次世代の中型ファンドになっていくでしょう。実際に最近日本でも多くの人たちが新しいファンドを立ち上げています。これは世代を超えるVCのエコシステムを構築するために重要なステップだと思います。
References:
・Data source: Pitchbook
・OECD Stats Venture capital investments - https://stats.oecd.org/Index.aspx?DataSetCode=VC_INVEST
・Largest Bay Area VC deals in 2019 - https://www.bizjournals.com/sanjose/subscriber-only/2020/01/17/largest-bay-area-vc-deals-in-2019.html
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