デジタルファッションが変える私たちのファッション感覚とは?新しいファッション体験とは?
皆さんこんにちは。VRC note編集長の八重樫です。
近年、デジタルファッションが注目を集めています。このnoteでも何度かデジタルファッションについて記事を書いてきました。メタバースが話題になっていることなどの背景から、昨年から今年にかけてもデジタルファッションを取り巻く環境に変化が起きているようなので、今回はそれをまとめていきたいと思います。
■デジタルファッションの動向
デジタルファッションは特にZ世代にとって、自己表現の一つとして身近なものになっています。Z世代に人気を誇るRobloxが2022年11月に公表した「2022 メタバースファッショントレンド」レポートによると、Z世代の多くが自身のアバターの衣装に課金して着替えを楽しんでいるそうです。回答者の5人に2人は物理的な世界で自分を表現するよりも、デジタルな世界で服やアクセサリーを使って自分を表現する方が大切、と回答しているそう。
そのくらいオンラインで活動する若い世代にとって、デジタルファッションは身近なものになってきているのです。
(Robloxの調査はこちら↓)
また、それに伴いデジタルファッションを作成するクリエイターも増加しています。先ほどのRobloxの調査では、1,150万人を超えるクリエイターが 、Robloxで6,200万を超えるデジタルファッションとアクセサリアイテムをデザインした、と伝えています。これは米国で物理的にファッションデザイナーをしている人数の200倍にもなるとのこと。メタバースのデジタルファッションデザインは新しい職業として普及しつつもあるのでしょう。
このような動きに伴い、多くの有名アパレル企業もメタバースでのファッションショー開催やアイテム販売などをしており、実際の服をメタバースでも販売する例も増えています。例えば、プラットフォームの一つであるディンセントランドで2023年3月に行われたメタバースファッションウィークにはAdidas、Coach、Tommy Hilfigerなど約60のブランドが参加し、ファッションショーを開催したそうです。
デジタルファッションはデジタルだからこそできる表現の自由さが良い部分もありつつ、現実に売っている高価な服を着用体験してみることができるという良さもあると考えます。実際に販売している服をメタバースでも販売する例は徐々に増えており、さらに複数のプラットフォームを横断して同じデジタルファッションが使える、という事例も出てきています。
つい先日もアンリアレイジが2023年春夏パリコレクションで発表したアイテムを複数のメタバースプラットフォームで販売するという発表がありました。パッチワークドレスは数千円で販売されており、複数のアバターに合わせて使えるようにするということで、力の入れ具合を感じました。
市場もデジタルファッションに注目しており、関連企業の資金調達のニュースなども増えてきています。
米ロザンゼルスを拠点とするデジタルファッション・プラットフォーム「DressX(ドレス・エックス)」は2023年3月に1,500万ドルの資金を調達しました。DressXはデジタルファッションのデザインなども手がけながら、販売プラットフォームも展開しています。
また、Robloxを中心に活動している「House of Blueberry(ハウス・オブ・ブルーベリー)」は2023年1月に600万ドル(約7.8億円、2023年2月2日時点)の資金を調達しました。こちらは米ノースカロライナ州に拠点を置く企業で、2012年創業。メタバース向けのファッションブランドを展開しています。
■デジタルファッションを用いた購買や制作工程のDX
一方で、デジタルファッションによる購買体験も少しずつ変化しています。AR試着でスニーカーが試せるなどのサービスもすでにありますが、ここ最近だとパルクローゼットがSnapchatを利用したAR試着体験をオンラインストアで提供し始めました。
ECでの購買の際には、サイズや着用感がわかりにくく、商品が届いてからミスマッチが発生して返品や交換になるケースが多いですが、ARを使って自分の顔と商品が似合うかどうか事前に確認することで、ミスマッチが減ることが期待されます。
まだ実際に服を試着する時のように着用感を確認することができるわけではないですが、ARやバーチャル試着を用いることで画像やモデルの写真からしか判断できない状態よりも着用した時のイメージがつきやすいと感じます。オンラインで買う時の一つの判断材料にはなるのではないかと思いました。
実物の服に比べて、デジタルファッションにはいくつかのメリットがあります。例えば、メタバース内で販売される服は、材料や生産工程が必要ないため、材料などの生産コストがかからず、販売価格を抑えることができます。
さらに、デジタルファッションは環境にも優しいという利点があります。実際の服の生産や配送には、多くのエネルギーや資源が必要ですが、デジタルファッションはそのような問題を減らすことができるでしょう。また、実際の服の廃棄によって発生する環境問題も、デジタルファッションでは起こりません。
そういった点に注目し、デジタル技術を服制作に取り入れたり、デジタルファッションショーの取り組みなど3Dを使って行うことができるようなソフトなども増えつつあります。
ソフトバンクのグループ会社では、ボリュメトリックビデオを使ってデジタルファッションの制作や3Dファッションショーなどを行える「FASHION TECH TOKYO」というサービスを始めたそうです。インフルエンサーにデジタルファッションをまとませてバーチャル世界で3Dファッションショーをすることなどを想定している様です。
また、中国では「Style3D」という3DCGでデジタルファッション制作ができるソフトウェアをアパレル企業などが活用する例が増えており、1000社近くが導入しているそうです。
そのほかの3D服制作ソフトには、「CLO3D」や「z-weave」などがあり、こういった3DCGを使った服制作の需要が増えていることがうかがえます。
現在は服制作の知識がある人、CGの知識がある人などが使うイメージですが、今後は自分がメタバースで着たい服をこういった知識がない人でもソフトを使って簡単に安価に作れるようになっていくのかもしれません。
■デジタルファッションは今後どうなっていく?
今後、服の制作工程がデジタル化することで、服がどんどんデータ化されていくことが普通のことになると予想されます。服の購入前にデジタル空間でバーチャル試着をして購入し、アバター用と実際に着用する用に服を購入することも当たり前になっていくでしょう。実際のクローゼットとデジタルのクローゼットをどちらも管理していくことが普通になっていくのだと思います。自分のボディサイズを管理することも普通になっていけば、より好みにあったサイズの服をオンライン上で買うこともできるようになっていくのではないかと期待しています。
最近は生成形AIも話題になっており、こういった技術を使って例えば服のデザインをしてみたり、購買対象者の好みや流行りのデザインを出してみたりすることもできると思います。
実際、米ニューヨークのアパレルオペレーティングシステムであるCALAはOpenAIのDALL・Eを使用し参照画像から新しいビジュアルデザインのアイデア提案を行うことができる機能を追加しています。
ZOZOもAIの力を借りながら似合うファッションの提案をするラボを始めており、予約が殺到しているらしいです。スタイリストさんの提案と、AIが提案するものから選んで着用することができるそうで、AIの提案内容も好みなどから割り出しているものなので、意外な発見もあるかもしれません。
デジタルファッションは今後ますます発展していくことが予想されます。AR技術や3Dスキャン技術がより精度を増していくことでよりリアルな購買体験を提供することもできますし、AIの技術なども活用することで膨大な情報を処理し、よりパーソナライズされたファッション体験を提供することができるようになっていくでしょう。
制作から購入、着用までの体験がアップデートされていく未来を想像すると、ファッションの楽しみ方も様変わりしていきそうでワクワクします。2023年も新しいデジタルファッション体験が生まれていくことに期待したいです。
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