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小噺 of the WEEK(2020年2月2日)

ネットフリックスの話が好きです。

なかでも、ネットフリックスがまだオンラインDVD配送サービスだった頃の話が好きです。少しうろ覚えですが、ある投資家が、ネットフリックスの競合に投資をしようとした時、当時のネットフリックスが、顧客にDVDの注文を受けてから発送するまでのオペレーションを極めて高いレベルで実現しているのを見て「あれには決して追いつけない」と投資を諦めるシーンが特に好きです。

ネットフリックスといえば、桁外れの制作費でつくる独自のコンテンツ、データをフル活用したマッチングとマーケティング、そして、従業員を決して子ども扱いしない優しさと厳しさに満ちた独特の人事制度が有名ですが、彼らがDVD配送サービスからオンライン配信会社に鮮やかに生まれ変われたのは、「あれには決して追いつけない」レベルのオペレーションを実現する力があったからだと思います。

DVD配送とDVD配信は全く別のサービスです。ましてや、独自のコンテンツ制作となると更に別の立地であり、違うライバルがいます。しかし、立地やライバルが変わっても、「顧客に最良のコンテンツを届ける」というミッションを実現するために速やかに仕事を組み立て、それを(競合よりも)圧倒的に早いスピードで効率的に精緻化し、結果、抜きん出る。その力。組織能力。

翻って米軍。この記事で取り上げられているのは、予測可能な複合的な状況から、予測不可能な複雑な状況へと変化した中で変わっていく米軍の姿。

自分たちとよく似た階層構造をもつ複合的な組織(言うなれば競合他者)との戦いから無数のピラニア(言うなればスタートアップ)との複雑な戦いに変わり、米軍がイラクでのテロリストとの戦いに負けつづけた時、彼らがアップデートしたのが、組織のあり方であり、コミュニケーションのあり方であり、チームの構成のあり方などなどなどである、ということです。

けれども、思うに、組織やコミュニケーション、チームのあり方を変えたから、米軍がイラクでの逆境を跳ね返す糸口を見つけられた訳ではなく、「戦争に勝つ」というミッションがあり(=顧客に最良のコンテンツを届ける)、戦争という極限状態でも発揮される強固な小集団の絆とプライドと戦闘遂行能力があり(「あれには誰も追いつけない)、それを複雑化した環境に合わせることができたので、難しい状況からの反転を実現できたのだと思います。

別の言い方をすると、ミッションも不明確で遂行能力が抜きん出ている訳でもないまま、毎日90分の電話会議をしたりしてコミュニケーションのお作法を変えたとしても、そこから何かの革新が生まれる訳ではない、ということでもあると思います。

この記事、後編も楽しみです。

(冒頭の話は↓に出てきます)

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