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ゲイが筋トレ始めた時のこと。

僕は大学に進学しても実家から通っていて、相変わらず気難しい母の機嫌を損ねないように気を遣っていたし、自分がゲイであることは直視できていないというか、極力考えないようにしてたんです。いつかは結婚して子供を作り、生命保険会社が持ってくる人生プランの資料みたいな人生を送るんだろうとぼんやり想像してました。

なのに、一向に女の子にときめくという現象が起きないし、むしろ男の子に目がいく。それもどうも特に筋肉質な男の子に心奪われるらしい。

それで僕もジムに通い始めて。

その行動はいかにもゲイっぽいんだけど、「筋肉に憧れてジムに行ってるわけじゃない。運動してなくて不健康だし、体細くて体力ないし、筋トレするのが合理的なんだ。」と自分で自分に言い訳してました。

そのくせプロテイン飲んでて、でもそれを親に説明するのが億劫なので隠れて飲んでて、なんならジムに通ってることもできるだけ親には伏せてました。あの頃は今ほどみんな誰でもジムに行くような時代じゃなかったんです。

大学は理系だったので学内にいる時間が長く、その上バイトだなんだと忙しい学生生活だったし、おまけにジムは自宅と大学の経路上から少し離れていたけど、僕は元来真面目で几帳面なところがあって、割とまめに通ったのは覚えてます。で、1年も経つと服を着てても「この人は鍛えている」と分かる体になってた。

2年で体重が筋肉ばかりで15kgも増えて、でもまだ自分がゲイであるとは認めることができないまま、曖昧なままにしてました。

思えば奥手で、ひねくれたセクシャリティです。といって、じゃあ何か他のやりようがあったんじゃないかと今改めて考えても、思いつかないんですよね。

そして今、ジムに通い始めたあの頃よりも25kgも重い体で暮らしてます。



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