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ビデオにアメトイ、洋雑誌まで?シン感覚な自転車屋 高田馬場「Lipit-Ischtar」

自転車屋?

新宿区・高田馬場駅から徒歩10分、西早稲田駅から徒歩2分ほど。
自転車にビデオ、アメトイや洋雑誌が置かれた店内から感じるカルチャーの匂い・・・はたしてここは何のお店なのだろうか?
今回はそんな気になるお店「Lipit-Ischtar」(リピト・イシュタール)のオーナー・田中さんに取材を行った。


オーナーの田中さん

- まずはLipit-Ischtar(リピト・イシュタール)のコンセプトについて教えてください。

自転車屋と自分の趣味を併設したって感じで、明確にコンセプトを設けているわけではないんです。

もともとは、昔からこの地域で営業している町の自転車屋でした。父から受け継いだ自転車屋で、古い業態で営業を続けていたんです。ただ僕自身、アパレル業界で働いていた経験があったので、せっかく店を手伝うのであれば、従来の町の自転車屋とは違った新しいお店作りにチャレンジしてみたかったんです。

コロナ禍に密を避けるための移動手段として自転車が流行りだしたこともあって、在庫を保管するために店内が隙間なく自転車で埋め尽くされていたんですが、徐々に落ち着いてきて店内にスペースができるようになりました。

そのスペースを活用して、他の自転車屋とは違う店作りにチャレンジしようと思い立ち、自分の好きなものを詰め込んだこのお店ができたというわけです。そしたら、この店作りを面白がってくれるお客さんが増えて。今では海外の観光客の方もいらっしゃるようになりましたね。

自転車にビデオ、アメトイが混在。

- 元アパレルとのことですが、田中さんの経歴を教えてもらえますか?

もともとラルフローレンで働いていました。
それ以外にも古着屋やフリマ販売などをしていたこともありましたが、結婚を機に父が経営していた自転車屋を手伝うことになったんです。

当時はmixiやFacebookなど、SNSが盛り上がり始めた時代だったこともあり、せっかくならこれを活用しようとブログで店の情報発信をしたりもしましたね。また老若男女問わず、幅広いお客さんが入店しやすいように店の改装にも踏み切ったり、いろいろチャレンジしました。

それからコロナ含めた店のターニングポイントを経て、50歳を機にこれまでの自転車屋の客層だけでなく、他の客層にもアピールして行こうと決めたんです。本来は趣味と仕事を分けていたのですが、その垣根をなくして今の形をスタートさせました。

- ビデオや古着、アメトイを好きになったきっかけはなんだったんでしょうか?

幼少期に80年代をまるまる過ごしたことが影響していますね。

1981年時点で僕は小学一年生で、当時の男の子がハマって集めていたキン肉マン消しゴムやビックリマンチョコの収集にどっぷり浸かって生きてきました。中学生になっても収集癖はおさまらず、映画のチラシ集めをやっていて、高校では古着と出会ったことで服の収集を、さらにそこからアメコミやフィギュアなどのおもちゃも収集するようになりました。

気になるものがいっぱい!

- そこからどういった経緯でビデオ収集を始められたんですか?

現在の業務形態をスタートさせた当初は、古着・おもちゃ・洋雑誌を置いていたんですが、ひょんなことからテレビデオをが手に入り、昔から映画が好きだったので、どうせならテレビデオで映画を流そうと思い立ちました。国内版のビデオだと、どうしても映像に字幕が入ってしまうので、それが嫌で海外版のビデオを調べてみると、プラスチックケースではなく紙ジャケットで包装されているビデオを発見しました。

中学時代に収集していた映画チラシにも近い雰囲気があるなと感じて、そこからハマって集め始めたのがきっかけです。ビデオ収集をしている自転車屋があることがビデオ好き界隈にも口コミで広がって、新宿でポップアップをさせていただくことになったんです。もともとビデオは販売するつもりもなかったんで、その場で初めて値付けしましたね(笑)

それが案外好評だったこともあって今も続けています。

懐かしのテレビデオを店内に複数発見。

- ビデオの面白さや伝えたい魅力はありますか?

紙ジャケットの素晴らしさや雰囲気ですね。うまく表現しづらいんですが、古着に似たボロ感や褪せ感を感じるんです(笑)

ぜひ映画やインテリア好きな方への贈り物にして欲しいです。自分ではなかなか買わないかもしれないけど、もらったら嬉しいかなと思います。

- 今後の展望を教えてください!

ビデオやアメトイはあくまで自転車を売るためのツールなので、メインはあくまで自転車屋というスタンスです。でもビデオとかの販売が上手くいけば、それはそれでいいなと思っています(笑)

基本的には自転車とビデオでそれぞれ客層が異なるんですが、両方見たいといってくれるお客さまもいる。繋がっていないようで繋がっているのかなと思うので、地道に続けていけたらと思います。

- ここからビデオについてお伺いします。田中さんの私物の中から、お気に入りビデオを教えてください!

これかな。

「その男、凶暴につき」(1989)

ビートたけしが北野武名義で初監督を務めた記念的作品です。
中学一年生の時、この作品を一刻も早く観たいと待ち焦がれていて、ようやくビデオをレンタルして観られたときのことは今でも鮮明に覚えています。この時の北野武作品が一番かっこいいと思いますね。まだ二本しか持ってませんが、10本くらい並べたいと思っています(笑)

輸入版だとこれかな。

「BLADE RUNNER」(1982)
初版は白い背景が際立つジャケット。

「ブレードランナー」の初版。みんながイメージするのは黒い背景のジャケットだと思いますが、これは背景が白で珍しいと思います。そんなにこの映画自体に思い入れはないけど、ジャケットがみんなが知らない「ブレードランナー」の雰囲気を出していて好きですね。

初版以外はこちらのデザインが一般的。

「セックスと嘘とビデオテープ」は、輸入版と日本語版でジャケットが全然違う。これも面白いですよね。

「sex, lies, and videotape」(1989)

- 現在販売されている商品でイチオシはありますか?

「ゴーストワールド」と「ニキータ」です。
「ゴーストワールド」はアーティスティックな雰囲気がいいですね。「ニキータ」は単純にかっこいいなと思います。

「GHOST WORLD」(2001)
「NIKITA」(1990)

あとは、「ビバリーヒルズコップ」。これもジャケットがいいですね。

同じ作品のビデオテープでも、実は細かいところが違ったりします。例えばこの作品だと、ジャケット表面は同じデザインなのですが、ジャケット裏面を見ていただくと、バーコードがついている方とついていない方があると思いますが、ついていない方が初版になります。

「BEVERLY HILLS Cop」(1984)
バーコードの有無で初版か否か判別可能。バーコード無し(写真右)が初版。

それと雑誌ですね。STARLOG※は日本版もあるんですが、店に置いているのは全て輸入版になっています。古本屋さんで日本版はよく見かけますが、輸入版は珍しいかと思います。

※STARLOG:スターログ・グループにより発行されていたアメリカの月刊SF映画雑誌。1976年から2009年まで刊行されていた。

- 今後新たに取り扱っていきたいものはありますか?

まだまだ次の取り扱いを考えるようなレベルじゃないんですが、映画のサントラにはもっと力を入れていこうと考えていますね。

それに古着のリメイクTシャツ。古着Tシャツを裏返して、オリジナルのプリントを入れているんですが、もともとプリントされていた表面のプリントも残っているので両面で着れるTシャツになっています。

- 今後いらっしゃるお客さまに向けてメッセージがあればお願いします!

もうほとんど話しちゃいましたが、やはりインテリアとしてのビデオのあり方を伝えたいですね。大切な方へのプレゼントにもおすすめです。そして、これをきっかけに映画を身近に感じて欲しいです。


あらゆるモノのデジタル化が進む現代。
映画はサブスクでも観られるものが多くなったが、我々が青春時代に見た映画やビデオの記憶は今も鮮明に残っている。きっとこの先も忘れることはないだろう。「Lipit-Ischtar」に行けば、きっとお気に入りの一本が見つかるはず。30代以上には懐かしく、20代以下にはきっと新鮮な世界。猛暑となるこの夏、今年はインテリアとしてのビデオを探してみたり、映画を家で満喫してみるのはどうだろう。きっとまた忘れられない映画に出会える気がする。


Lipit-Ischtar(リピト・イシュタール)
東京都新宿区大久保3-13-1-103
営業時間:11:00 - 19:00(水曜、木曜定休)
Instagram:@lipit_ischtar
Online store:https://lipit-ischtar.jp/

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