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メディアプランニング(提案書)の雛形


I. メディアプランの雛形

  • メディアプランナーは切磋琢磨する環境が限られている?
    「他の(他社の)メディアプランナーが作る提案資料ってどんな感じなのだろう。参考にしたい!」 これは、メディアプランナーの誰しもが一度は思う事だと思います。ただメディアの提案資料には広告主の営業秘密が多く含まれますので、たとえ同僚が作成した資料であっても原則見る事が出来ない環境にある事がほとんどだと思います。 このように実は案外「切磋琢磨する機会が少ない」のがメディアプランナーの現実です。VOSTOK NINEは学び続ける事を大切にしていて、毎月社内勉強会を開催しておりそこでは営業秘密を排除した状態で「こういったプランニングの考え方は面白そうだ」「こういったケースにこのロジックは適用出来そうだ」といった事を総論から各論まで幅広く共有・議論しています。その議論は隠し立てするものでは無いので皆さんにも都度ご紹介させて頂きたいと思っていますが、とはいえいきなりマニアックな事を書いても「え、(VOSTOK NINEってちょっと)キモい」を量産してしまうだけだと思いますので、まず最初は一番気になるであろう「実物の提案書の構成」をご紹介させて頂く事にしました。

  • 実はメディアプラン(提案書)の雛形なんてものは無い
    「メディアプランの雛形」というタイトルにいきなり反してしまうのですが、そもそもメディアの提案書に雛形はありません。提案資料以外にも「レポート資料のフォーマットが欲しい」という言葉もよく聞きますがレポート資料にも雛形はありません。広告主の扱う商材や課題は千差万別で一つとして同じものはありませんので、当然の事ながら提案内容(それに付随するレポート内容も)は全て異なったものになります。 ただ、何十、何百と提案資料を作成していると比較的汎用性のある” 構成 “は見つかってきます。勿論それは所詮 “ 私達が汎用性があると思ってる ” というものでしかありませんが、少なからず参考になるパーツもあると信じて、思い切ってご紹介させて頂きたいと思います。

II. 提案資料概要

今回ご紹介する案件は「美容」カテゴリーの新規広告主への提案書となります。TVやOOHが入った提案書だとページ数が膨大になりますので、最もコンパクトな「使用チャネルがデジタルのみ」の提案書を今回は選びました。 公表が許可されていないクローズドデータ箇所や、広告主の営業秘密、その他秘密を類推出来る箇所は全て黒塗りとさせて頂いておりますが大きな構成や言いたい事は十分に伝わると思います。 又、クリエイティブを踏まえたメディアアイデアも提案には入っておりますが、協業した広告代理店の知財が含まれる内容となりますので、そういったページも削除しています。 ターゲットやKPI等についても念のためダミーデータに差し替えておりますので、ご了承下さい。

III. 提案資料


与件の整理
①ターゲット及びKPI
今回はターゲットクラスターが2つ(ここではA,Bで記載)ありましたので、与件の整理も兼ねて1ページ用意しました。

メディア戦略

②(商材に対する)意識の変化
ややニッチな商材であった事もあり、” (商材に対しての)現在の消費者のモチベーション ”を確認したかったので、ターゲット利用意向の経年変化をグラフ化しました。利用意向は小幅ながらも年々と高まってきており広告主にとって追い風の風潮である事は間違い無さそうです。

③(商材を使おうと思う)意識が高まる時は?
先のページと同様の理由で、” 消費者はこの商材に対してどういったタイミングで(必要性を)意識するんだろう… ”という事が今ひとつイメージ出来なかったので自主調査をかけました。その結果「何かしらのキッカケが無いと利用意識が高まらない = 年がら年中自然にモチベーションが湧くものでは無い」という事が分かりました。

④メディア戦略への仮説1「意識が高まる瞬間を捉える必要性」
以上の事から、マーケットとしては追い風であり更に「意識するモーメントで広告展開する事で」効果的に態度変容を促す事が出来るのでは?という仮説を立てました。これは今回のメディア戦略の大きな鍵になりそうです。

⑤メディア戦略への仮説2「ターゲットが信頼する媒体からメッセージを発信する必要性」
メディアプランなので最終的に投資チャネルを絞り込んでいく必要性がありますが、今回は商材が美容系という事もあり「しっかりと広告メッセージを信頼してもらえる事」が大切なのでは?と考えました。となるとターゲットが信頼している広告面はどこか?という話になります。新聞通信調査会の「メディアに関する世論調査」結果を見ていると主要チャネルへの信頼度は軒並み年々下がっている事が分かります。これは…まずいね…という事で「(数多ある広告面の中から)可能な限りメッセージを信頼してもらえる広告面」を選んでいく必要があると考えました。

Source : 2022年8月 新聞通信調査会「メディアに関する世論調査」

⑥メディア戦略
以上のような結果から、「(商材を)意識するタイミングを捉える事」「(メッセージを信じてもらえる)信頼性のある広告面に露出する事」の2つを今回のメディア戦略の柱に設定しました。

メディア戦術

⑦タッチポイント検証
続いて実際の打ち手(戦術)を検討していきます。当然ですが大前提として「ターゲットが見ている媒体に広告を出す」必要がありますので各デジタル媒体のターゲット接触率・含有率を検証します。

⑧中扉ページ
今回は戦略に柱が2つありますので、一つ一つ考えていきたいと思います。まず「(商材を)意識するタイミングを捉える事」をメディア戦術に落とし込んでいきます。

⑨自主調査結果「【商材】を意識するキッカケ」
これはパブリックデータで参考になる調査結果があればそれを利用すれば良いと思いますが、それで見つからない場合、時間と精度を優先して自主調査をかける事が多いです。今回は③でも使用している自主調査結果からキッカケを探ります。

⑩メッセージが浸透しやすい時間帯
今回のキャンペーンの目的の一つに「しっかりと商材の事を理解してもらいたい」がある為、「ゆっくり広告に接触してもらえる = しっかりと理解してもらうだけのゆとりがある時間に広告配信を寄せたいな」と思いました。ターゲットの既婚率が高い事もありテレビ視聴傾向が高い時間帯(=リビングで家族と過ごす)、スマホ利用時間が高い時間帯(プライベートな時間になる)と仮説し、時間帯別のそれら接触傾向から夜の時間帯が最もゆっくり広告に接触してもらえる時間帯なのでは、という仮説を立てました。

⑪まとめ「(商材を)意識するタイミングを捉える事」
以上のような結果から、意識するキッカケを捉え、タイミング(一日の中でのモーメント)を捉える事を戦術の一つとしました。

⑫中扉ページ
続いて2つ目の戦略の柱を戦術に落とし込みます。

⑬自主調査結果「信頼するメディア」
タッチポイントを組み立てる際は当然「媒体別」に落とし込む必要があります。信頼に足るパブリックデータがあればそれを使いたいのですが、これといったデータが見つからなかったので再び別の自主調査データを利用しています。こちらで公開しているデータとなります。ここで「信頼度が低い」となった媒体については今回の商材には沿わないので除外するようにします。

⑭タッチポイントの整理(動画)
以上の結果を踏まえ「リーチ面で理想的な媒体郡」から「信頼度が低い媒体」を除外します。次に⑪で検証した「意識するタイミングを捉える」施策を重ねる事でメディアプランの骨子とします。

⑮タッチポイントの整理(静止画)
静止画広告はそれ単体で「理解を深める」事は困難だと考えていて、クリックされてサイト上のコンテキストを閲読してもらって初めて「理解に繋がる」ものと捉えています。今までの戦略に加え、静止画ならではのそういった特性も踏まえ最適な媒体を選定していきます。 ※過去の実績データを頂ける広告主ならそういったものも参考にして媒体を選定します。

⑯ポテンシャルリーチを検証
最終的どれだけターゲットにリーチ出来るかは広告予算次第ではありますが、そもそもターゲットの多くが” 接触していない広告面 ” を選んでしまっては意味がないので、今回選定した媒体でターゲットをしっかりカバー出来ているか念のため検証をします。ここは各種調査結果からコンバインドリーチ(統合リーチ)を計算しても良いですし、広告代理店であれば一瞬で計算可能なツールが何かしらあるかと思いますのでそういったものから算出します。

⑰認知獲得に必要な動画FQとは?
今回の目的は大雑把に言うと「【商材】認知形成」及び「【商材】理解促進」でした。当然ですが理解される前に知ってもらう(認知してもらう)必要がありますので、認知形成は必須条件となります。簡易的な方法ではありますが認知形成%は「リーチ及び接触回数(FQ)」でシミュレート出来ますので、ここでデジタル動画広告での認知形成に必要なFQ(これを有効FQと呼んでみます)を仮定しました。有効FQは商材、クリエイティブ、広告面、既存認知…様々な要因によって異なりますので一概には言えないのですが、今回の商材に近しい事例データ群が手元にありましたのでそれを元にノーム値を算出し今回の有効FQを規定しました。 ※記載事項全てがクローズドデータになる為、全部黒塗りになってしまい申し訳ありません…。

⑱KPI達成シミュレーション
各メディアの広告在庫、推定パフォーマンス等をデジタルエージェンシーに算出してもらい、今回の予算に合わせて展開メディア別の予算アロケーションを確定します。同時に推定認知者数、推定理解者の想定値を算出します。今回の認知者、理解者の定義は記載の通りですが、広告主や商材、過去の経験から定義は変わってくると思います。

⑲投資バランス整理
ファネル別の投資額を整理してみました。これはあっても無くても良いと思いますが、こういった一枚絵は何かとプレゼン時の質疑応答の際に便利(この1ページを表示して議論する事が多い)なので用意する事が多いです。

⑳メディア展開スケジュール
展開スケジュールを記載します。これは言うまでも無く皆様作られていると思いますので、説明は割愛します。

㉑効果測定
今回の広告効果測定手法を記載します。簡易な場合だと媒体BLSとかでも良いと思いますし、予算が許す場合は専門の調査会社に設計をお願いしても良いと思います。

㉒PDCA手法
広告展開期間中にどういったレポートをどのタイミングでご提出させて頂き、どういった観点で最適化を行うか、そういった事を記載します。このページも既に何度もプロジェクトを共にし信頼関係が築けている広告主の場合は必要無いと思います。

㉓メディアコスト一覧
最後に今回の全展開メディア一覧(エクセル)を貼り付けたページを作成します。別途エクセル等で提出しても良いと思います。

IV. 最後に

今回はVOSTOK NINEがメディアプランを行う際の基本的な構成をご紹介させて頂きました。広告主の課題、商材、コンディション、それらの違いにより「深掘りすべき視点」は全く異なると思いますし、過去何度も一緒に広告展開をした経験があればその経験に基づくラーニングをプランにしっかりと活かす必要があります。ですので改めてになりますが「メディアの提案書に雛形なんてものはない」と考えています。とはいえ参考例はいくらあっても困らないと思いますし、今回ご紹介した構成要素の中で1つでも皆さんがメディアプランを作成される際の参考になれば良いなと思っています。メディアプランナー同士がそうやって”参考にし合う”経験が増えれば増える程、より多くの広告主に対して良質な広告プランを届ける事に繋がり、結果として私達が目指す「広告をもっと社会に役立つ存在」にしていく事に繋がっていくと信じて日々活動しています。

株式会社VOSTOK NINE お問合わせ先
mail:hello@vostoknine.jp

株式会社VOSTOK NINE
VOSTOK NINEは2023年現在、国内で唯一(※)の「広告(6媒体)メディアプランニング」に特化した会社です。所属する全員が一定(目安10年以上)の経験を持ったメディアプランナーのみ、という一風変わった組織です。広告が社会にとってより役に立つ存在になる未来を目指し2022年1月にメディアプランナーである三宅と江口の2名で立ち上げました。詳細はこちら
※VOSTOK NINE調べ

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