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映画#7『アメリ』/主人公の幸せがわたしの幸せになる

「幸せになる。」

11月17日から始まったデジタルリマスター版上映のポスターには、真っ赤な、いかにもパリ・モンマルトルという雰囲気のある部屋と、アルバムを眺めるアメリと、このシンプルなキャッチコピーが収められていた。

こんなにも幸せが詰まった映画はない。

ザ・ハリウッド的な、キラキラした、誰もが憧れるような完璧なカップルが成立する結末とは違うけれど、むしろ、もっと普遍的なハッピーエンドがここにある。

自分と同じニオイをもつ人間と出会い、お互いに同類であることを直感し、想いが通じるということ。本作の主人公アメリも、彼女が恋に落ちる青年ニノも、シャイでかなりの変わり者なのだけれど、そんな2人がお互いを見つけ出し幸せになる様子には希望があって、観ていて幸せになる。

胸キュンを押し付けられるのが苦手なわたしですら、愛してやまないハッピーエンドです。

< voodoo girl’s 偏愛ポイント >
・”シック”じゃないフランスっぽさ
・映画史上もっともロマンチックなキスシーン

①”シック”じゃないフランスっぽさ

本作は、フランスらしさで溢れている。
ただそれは、シャンゼリゼ通りの麗しい雰囲気やシックなファッションに身を包んだパリジェンヌの姿からではなく、パリの下町モンマルトルで暮らす地元民たちの暮らしぶりやナレーターの語りの皮肉っぽさなどから来るものである。

特に、この早口でだいぶ毒のあるナレーションは、映画の第二の主役というくらい絶大なインパクトがある。例えば、飼っていた金魚(名前はクジラ)が水槽から跳ね飛び出した事件を「冷たい家庭に絶望したクジラの自殺未遂」と表現してみせて、淡々と語るところなんてお気に入り。ウェス・アンダーソン監督作品を彷彿とさせたり、昔大好きだったドラマ『プッシング・デイジー 恋するパイメーカー』にも大きな影響を与えたに違いないと勝手に妄想している。

②映画史上もっともロマンチックなキスシーン

理想と言っていいかどうかはさておき、1番好きな映画のキスシーンを選ぶなら、わたしの中では間違いなく『アメリ』一択。

アメリは、話し始めようとするニノの口に
すかさず手を当て黙らせる。
言葉は一切使わない。
まずはアメリから、
そしてニノがそれに続いて、
ゆっくりと、唇の端やまぶたにキスをする。

文字で表現するには限界があるのでここら辺にしておくが、こんなにも静かで愛おしいキスシーンは他にないので、絶対に観てほしい。

ハミダシモノ

映画の中で、あなたが自分と似たところがあると感じたり、強い共感を覚えるキャラクターはいますか?

その人物が一時的に置かれた状況や環境に親近感を感じるというより、もっとコアにある部分や価値観、感情に共鳴をするというか。“Someone you can relate to”というニュアンス。

わたしにとってはそんな存在が3人いる。
本作のアメリ、『エターナル・サンシャイン』のクレメンタイン、『シェイプ・オブ・ウォーター』のイライザ。いずれもちょっとずつはみ出し者で、人とは違うけれど自分なりの人生の楽しみ方や美しいものの見つけ方を知っている。

きっと自分も少しだけ世の中の普通とずれているんだろうけど、彼女たちを見ているとそれでいいような気がして、前向きになれるのだ。

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