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海外おせち作りのハードルを下げる段取り5ヶ条と作業工程(2022)

一度も作ったことがないとしり込みしてしまう海外おせち作り。プロの料理人でもなく、基本めんどくさがりな私自身が2年間海外でおせちを作った実感から、ハードルを下げる段取り5ヶ条をまとめてみました。SNSで流れてくるおせちにはちょっと惹かれるけれど、作るのはあまりに大変そうで…という方の気が少しでも楽になると嬉しいです。

ちなみに実際のレシピを見たい!という方は過去記事をご覧ください。

先に結論から入ります。

<ハードルを下げる段取り5ヶ条>

1. 一番先に使う器を決める
(お重でも皿盛りでも、手持ちの器で使えるものを先に選ぶ)
2. 盛り付けを想定し必要な品数の検討をおおよそつける
3. 品数から逆算してメニューを考える
4. 材料は全部書き出し総分量を把握。ざっとリストにして計画的に買い物
5. 1日で作ろうと思わず、数日かけて作る作業計画を立てる

順番にみていきます。

1.一番先に使う器を決める(お重でも皿盛りでも、手持ちの器で使えるものを先に選ぶ)


おせちといえばお重が定番ですが、お重にこだわる必要は全くありません。ネットを見ていると大皿盛りも銘々盛り(ワンプレートおせち)もとっても素敵な盛り付けが多く、見ていてとても刺激になります。洋皿でもモダンなおせちやカフェ風など工夫して作られている方々が沢山。夢が広がります。

が、とにかくまずは自分にとって現実的なゴール地点を決めるということで、手持ちの器から使えるもの・使いたいものを決めてしまう方がスムーズです。器が決まると目指す方向性も決まりやすく、壮大に考えすぎたり、あれもこれも素敵だなと迷いすぎて収集が付かなくなることを防止できます。


基本的に好きな器で良いと思いますが、ただ初おせちだったり家族の食の好みがばらばらな場合には、個人的には銘々盛りは避けた方が吉かなと思います。どうしても食べられないもの、口に合わないものは出てくると思いますが、銘々盛りは残したものが目立つので、作り手としてはテンションが非常に下がるからです。

2. 盛り付けを想定し必要な品数の検討をおおよそつける


次に、使う器のサイズ感に併せてトータルの品数を決めます。

器を隙間なく全部埋めようと思うと大変なので、大体の詰め方や盛り付けの法則に沿って位置関係を区切ると必要な品数の見当を付けやすいです。

【出典】「おせちの詰め方を解説!二段重・三段重の食材や盛り付けルールを紹介!

お重でなく大皿盛りや銘々盛りだともっと盛り付けの自由度がありますが、特に初めて挑戦する場合、お皿でもまずはこの法則をベースに割り振ってみるととっかかりとして考えやすいのでおすすめです。(勿論クリエイティビティのある方はどうぞ思う存分発揮しちゃって下さい…!尊敬します…!)

ちなみに必ずしも毎年同じ品数を作る必要はなく、今年は忙しいし気力もわかないから3品とか、今年は15品とか、人生のその時々の状況で最適な品数を決めて良いと私は思います。私は今はお重とのバランスもあり15品前後作っていますが、正直子供がおらずフリーランスで時間の融通が利くのでできる面もあります。おせち作りに疲れたら、もっと隙間をゆったり詰めて各段5品の計10品にする時が来るかもしれませんし、人を招いてもっと色々食べてもらいたいと思ったら、各々の好きなものを入れて、器も増やしてもっと頑張る時が来るかもしれません。

3. 品数から逆算してメニューを考える

定番

大体おせちを作ろうと思い立つ方は多少なりともおせちに対する自分なりの期待があると思うので、その期待するメニュー(紅白なますや黒豆・きんとん等主に縁起物?)から食べたいもの・作りたいものをまずは選びます。

主要国であれば大体どこの国でも偉大な先駆者がいるので、居住国と併せて検索してみます。特にSNSでシェアされている在外邦人の知恵と工夫は本当にすごいです。実際に工夫を見てみると、先人の知恵にありがたくあやかるか、これは大変すぎるのでやめよう、私にはできそうにないので代替を探そう…と心が決まるかと思います。

ちなみにおせちメニューの投稿でも書きましたが、私は縁起物でも栗きんとんやお煮しめはそこまで好きではなく、田作りは夫が苦手な割に作るのが大変なので、メニューに入れていません。せっかく自分で作るのだし、そういうのも全然アリではと思っています。

その他の品目

残りの品目は、全体の品数から逆算します。例えば市松詰めでトータル9品として、定番を4つ(紅白なます、伊達巻、海老、黒豆)入れるのであれば例えば残りは5品、など。これまた定番食材とそれぞれの縁起、お重であれば各段に詰める中身の法則的なものはありますが、海外在住の身としては海のもの、山のもの、野菜主体のもの、という3つのカテゴリーに分け、各カテゴリーから均等に品数を入れることを基本に、あとは好みで微調整するのが考えやすいです。残り5品であれば海のもの1品、山のもの2品、野菜2品、という風に。海のものであればベルリンで手に入りやすいのは海老、鮭、西洋鯛。山のものであれば牛か豚か鴨か鶏。野菜は人参や根セロリ、お芋系など。そもそもご家族がベジであれば野菜多めや、果物を使ったもの主体になるかもしれません。

探し方は色々ありますが、例えば紀文食品やキッコーマン、キリンのサイトは欧州在住でも挑戦しやすそうな美味しそうなアレンジおせちが沢山。やはりプロのレシピは様々な点で工夫が凝らされているのでお勧めです。

味付けは、正統派おせちは保存を考えて甘煮や酸味の強いものが多いですが、現代おせちは大体お正月に食べて終わりなので、特にこだわりがなければ素材と調理法を中心に考えて、後は洋風でもエスニックでも好みで混ぜて良いのではないでしょうか。

メニュー選びは大変ですが夢が広がって個人的に一番好きな時間。私は大体11月下旬頃から気になるレシピをどんどんブックマークしていって、家族の好み、おせちとしての食べ合わせと盛り付け(見た目)をイメージしながら最終的に絞っていきます。

ちなみに夢いっぱいのメニューから実際に作るものを絞り込む際は、原則として同じカテゴリー内で比較すると絞りやすいです。魚と肉を比べ出すと収集がつかなくなります。

加えて作り方までしっかり確認し、とにかく年末の自分を過信しない!ことがポイントです。お料理に自信がある方、品数は少なくても良いから一品一品を丁寧にという方針の方であれば良いのですが、複数品を並行して作る中では塵も積もれば山となり、大変なので…。なるべく工程が少ないけれども食材の組み合わせに意外性があってお洒落なレシピや、漬け込んだりと時間を味方につけて美味しくするレシピを探す方が後悔しません。

このメニュー構成が決まると、ゴールが明確になり、おせち作りの道のりも7割がた終了したようなものです。

4. 材料は全部書き出し総分量を把握。ざっとリストにして計画的に買い物


メニューがあらかた決まったら、材料を全部一覧にして総分量を確認し、買い出しリストにし、いつ頃何を買うかざっくりとスケジュールを立てます。12月上旬ぐらいまでになんとなくメニューが決まっていると、和食材等特別な注文をオンラインでする必要がある場合も問題なく間に合いますし、売っていなければ代替メニューを考えるなど、落ち着いて対応ができます。(それでもどうしてもアクシデントはありますが)

ちなみに実際に作り始めてから例えば鶏肉が50g足りなかったとかお砂糖がなくなってしまったとか実は特別なスパイスが必要だったというのが一番ストレスなので、グラム数や細かい調味料まできっちり確認することを推奨します。正統派おせちだと大量消費するのがお酢と砂糖と出汁と醤油。ストックしている分量に注意。あとは食材の一時保存用にビニール袋があると(エコではないですが)助かります。

5. 1日で作ろうと思わず、数日かけて作る作業計画を立てる

いよいよ材料が揃ったら、いきなり当日を迎えず、あらかじめ作業計画を立てます。複数人で一緒に作る場合を除いて、とにかく1日で全部作ろうと思わないこと、そして1つ1つのレシピを順番に完成させていくのではなく、ガントチャートで考え、全体として複数レシピを走らせ、時間がかかるものから開始し、待ち時間をなるべく短縮し、似たような工程はまとめて作業を効率化すると良いです。

実際に作業を書いた方がイメージしやすいと思うので、2022年の私のおせち制作の大まかなタイムラインを記載します。

29日夜

※ミートローフの焼き時間を入れて2時間ぐらい。晩御飯の準備と並行して作業

・蓮根をカットし、花蓮根用のメインと、切れ端に分ける
 →切れ端はミートローフに入れるので、このタイミングでミートローフも作ってしまう
 →花蓮根は酢水に漬けて31日まで保存
・解凍が必要なものを冷凍庫から冷蔵庫へ移動
 →伊達巻用の冷凍パンガシウス、冷凍海老、冷凍たけのこ、冷凍かまぼこ、冷凍枝豆
・黒豆を煮る方はこの日に煮てしまう
・マチェスのキヌア漬け用のマチェス油抜き

30日 

※作業1時間半ぐらい。これも晩御飯の準備と並行して作業

・必要な野菜をまとめて切り、漬けるものは準備
 →紅白なます(色移り防止で人参と大根はそれぞれ袋に分けて漬ける)、 サーモンのケッパー巻き用の大根を桂剥きし甘酢に漬ける、複数の品目に使うlauchzwiebelnのみじん切り、お雑煮用の人参や大根、年越しそばのかき揚げ用野菜なんかもこのタイミングで全部切ってしまいます。
・漬け込み系のものを仕込んでおく
 →ローストポークの下味、マチェスとキヌアの下漬け、昆布をウォーターボトルに漬けお雑煮用の出汁の準備。
・煮物を作ってしまう
 →解凍されたたけのこで土佐煮、お煮しめを作る方はお煮しめ
・煮ている間に伊達巻を作る。巻きすに巻いたまま冷蔵庫へ
・翌日の調理用下処理
 →解凍された海老と鮭の味噌はさみ焼き用の鮭の臭みや鱗・背ワタ取りなど

31日(大晦日)

※のんびり作業して4時間ぐらい

・オーブンを使うものが複数あるようであれば、設定温度の低いものから順に仕上げる
 →ローストポーク。幽庵焼きや松風を作る方はその後このタイミングで。
・オーブンを使っている間にフライパンで焼き物を順番に仕上げる。
 →鮭の味噌はさみ焼き、スパイシー海老、ご飯もの用の錦糸卵・サーモンのケッパー巻きを巻いて仕上げ(まだ切らない)
・揚げ物は一気に揚げる
 →花蓮根、年越しそば用のかき揚げ
・花蓮根はこのタイミングで仕上げる
・炊飯器にタイマーがあれば翌朝に向けて炊飯をセット。酢飯系は少し冷ます必要があるので翌朝早めに仕上がる方が良いです。ご飯もの用の飾り具もこのタイミングで用意しておく
・食事が終わったら食卓を新年用にセット
・器を全部乾拭きし、準備しておく

1日(元旦)

※作業1時間ぐらい

・ご飯を炊くか、タイマーで炊きあがっていればご飯ものを仕上げ
 →いなりやちらし寿司
・混ぜるだけのものを仕上げ
 →なます、黒豆とアボカドのレモンマリネ、マチェスのキヌア漬け、土佐煮を鰹節と混ぜる等
・切りものを仕上げ
 →かまぼこ、伊達巻、サーモンのケッパー巻き、ローストポーク
・盛り付け
・お雑煮づくり

こんな感じで自分が作る予定のメニューから効率的な工程を作ってみてください。4時間と書くとぎょっとするかもしれませんが、日々の夕食の準備や年末の作業諸々と並行して進められますので、読んだ印象よりも負担感は少ないと思います。どうしても予期せぬ洗い物などは発生するので、必ずバッファの時間を入れておくことが重要です。

この工程の計画を特に事前にしっかり立てずとも流れるように作業されるのがお料理上手な方々、プロの方々で、本当に動きに無駄がないなあと感心しますが、凡人でも事前に工程をイメージし計画に落とし込むことでだいぶ時間短縮になります。

ちなみに工程や各工程で使う材料とその分量は頭で覚えておこうとせず、アナログですが書き出して冷蔵庫にでも貼っておくといちいち考えなくて済み、その分の脳内メモリを作業用に解放できるのでおすすめです。デジタルでも良いのですが、いつもよりスペースも限られるキッチンにあまり電子機器を持ち込みたくないので…。

余談:盛り付けのコツ

盛り付けを工夫すると一気にハレの日の料理の雰囲気が出ますので、盛り付けは非常に重要です。センスのある方はもう感性の赴くままにぜひ…という感じなのですが、そうでない場合でも法則を踏まえるとそれなりに崩壊せずまとまります。

<和食の盛り付けの基本>
・左上に一番ボリュームがありメインとなる華やかなもの(我が家の場合は海老)を持ってきてポイントにする
・同系色の品はできれば離す
・器や小道具、盛り方で高低差を出す
・余白を意識する
・和食の盛り付けは奇数が原則

洋風おせちでも和食の盛り付けで盛るとそれなりにおせちらしくなる気がします。コツを調べると色々と出てくるので、是非参考に。


以上、めんどくさがり屋の海外おせち作りでした。おせちを作った方が良いと押し付ける気は全くありませんが、もし「おせちが食べたいな」と思うのであれば、年に1回のことですし、その気持ちを大事にしても良いのかなと思います。

ムリせず楽しみましょう!


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