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民間で経験を積んだからこそ、国際担当になることができた。農林水産省の職員が転職後にはまった霞ヶ関の魅力

【告知】国家公務員への転職を考える方向けのキャリアフォーラムを開催します

(官⇆民の越境キャリアを支援するVOLVEのnoteです)

新卒で農林中央金庫に入社し、コンサルティング会社やシンクタンクを経て農林水産省に転職。現在は、在インド日本大使館で一等書記官として働く渡辺一行さんに話を聞いた。
新卒では国家公務員試験(Ⅰ種)に合格することができなかったという渡辺さんだが、「民間で専門性を身につけたからこそ、入省後、国際分野で仕事をしたいという希望をかなえることができた」と語る。
渡辺さんのキャリアストーリーを通じて、民間企業で得たスキルの活かし方、国家公務員として働く魅力に迫った。

<プロフィール>
渡辺 一行さん
在インド日本大使館一等書記官(農林水産省からの出向)。1982年福島県生まれ。2006年に京都大学法学部卒業後、農林中央金庫に就職し、仙台支店で宮城県の食品企業担当の法人営業として勤務。その後、エネルギー専門のコンサルティング会社IDIを経て、シンクタンクの日本総研に転職。2011年に農林水産省に転職し、農業経営の多角化を支援する官民ファンド「農林漁業成長産業化ファンド(A-Five)」を立ち上げるなど、官民パートナーシップによる取組に従事する等して現在に至る。
※内容や肩書は2022年11月の記事公開当時のものです。




新卒では国家公務員採用試験に合格できず。しかし、民間で専門性を身につけたからこそ今、農林水産省で夢を叶えられている。

ーまずは、農林水産省(以下、農水省)に転職するまでの経緯を教えてください。
新卒で農水省に入省したいと思っていました。
私は福島県出身です。祖父母が専業農家を営んでいたこともあり、もともと農業に対する関心がありました。加えて、大学時代は国際政治を勉強しており、国際系の仕事をしたいと思っていました。農水省という役所は、他の省庁と比べて国際ポストが多いのです。農業と国際への関心の掛け算で農水省を志望していました。

しかし、国家公務員試験Ⅰ種に不合格となってしまいました。Ⅰ種試験に不合格となると、Ⅱ種試験や都道府県庁の試験を受ける人も多いのですが、私は、その選択肢はとりませんでした。国際系に興味があったので、民間で勉強して、機会があれば再度チャレンジしようと思いました。

ー新卒では苦労もあったのですね。その後、民間ではどのような経験を積まれたのでしょうか。
新卒では農林中央金庫にお世話になりました。その後、IDIというエネルギー専門のコンサルティング会社に勤めました。ここでは、国際系の仕事をしたいという希望が叶い、電力市場や電力自由化に関する海外動向の調査など、国際案件も担当することができました。ただやはり「より公共に近いところで仕事をしたい」と思うようになり、シンクタンクの日本総研に転職をしました。そこでも資源エネルギーのプロジェクトで海外動向調査を行うなど、引き続き国際系の仕事と縁がありました。

霞ヶ関から受注する仕事をするうちに、「やはり霞ヶ関の中で仕事をしたい」という確信が生まれました。民間でできることと公共でできることの間には、規模感や視座の高さで、大きな違いがあることに気づいたのです。コンサルティング業界は、規模が大きく視座の高い仕事をすることが多いものの、それでも、儲からない農業にはなかなか本腰が入りません。民間では投資回収期間を数年スパンで考えますが、公共では補助金も投資であり、より長い時間をかけて投資効果を評価できます。その時間軸の差を痛感しました。

人事院の行う経験者採用試験は、社会人経験5年が一つの要件になっています。ちょうどそのタイミングに差し掛かるところで、農水省で働く機会にもう一度チャレンジしたいと思い、受験しました。

ー新卒から5年越しで念願がかない農水省に転職したのですね。実際に入ってみてどうでしたか?
入省したのは2011年4月です。東日本大震災を受けて、地元福島の役に立ちたいと思いながら入省しました。
入省後は、民間で培った金融や経営知識、国際業務の経験が必要とされる部局に配属されています。具体的には、官民ファンド「農林漁業成長産業化ファンド(A-Five)」の立ち上げを行いました。その他にも、農業の法人化の支援や、輸出促進、インバウンド対策などに取り組んできました。
新卒では入省できなかったわけですが、民間で専門性を身につけたからこそ、入省後に希望が叶ったように感じます。

文化の違いに戸惑いもあった。でも、ゲームの組み立て方が分かると、政策を動かすことができる

ー民間から農水省に行って戸惑いもあったのでしょうか。
最初の2~3年はずっと戸惑いがありました。自分の裁量の範囲が曖昧もしくは狭いと感じるところがありました。フラットに議論をするというよりは、上の指示で資料をつくるような感覚があり、やりづらさを感じていました。

しかし、組織のルールやゲームの組み立て方が分かってくると、どう動けば、自分が思い描く方向で政策を動かせるか分かってきました。具体的には、他の部局を巻き込む際には、普段の小さな仕事での信頼関係づくりと、応援団となってくれるパトロンを見つけるというやり方をすることが必要です。また、政策の方向性を決める際にも、大きな方向性を決める立場にある次官、局長に直接アプローチすることで、新しい政策の決定がスムーズになりました。そういうことに気づいたころに課長補佐となり、できることがぐっと増えました。

ちょうどその頃、経済産業省の次官・若手プロジェクトが盛り上がっていて、メディアでも数多く報道されていました。それに触発されて、農水省でも、次官を巻き込んで「ワクワクする未来を創りたい」と思いました。興味・関心を持ちそうな後輩に声をかけて、2017年10月に若手プロジェクトを立ち上げ、2018年4月に、「この国の食と私たちの仕事の未来地図」という報告書を取りまとめました。この提言が、その後の政策オープンラボ(農林水産省版Google20%ルール)やフードテック官民協議会等の政策や仕組みにつながっています。国家公務員として大きなやりがいを感じた瞬間でした。


「私たちの食とこの国の仕事の未来地図」発表会にて
Global Food Saftey Conferenceにて政策オープンラボを紹介

ーこの活躍の背景では、渡辺さんが民間で培ったスキルも生きているのでしょうか。
大きく分けて3つほどあります。まず、数字でモノを考えたり、数字で全体の動きを把握したりする感覚があります。次に、相手に結論を理解してもらうために、把握した事実や検討の過程などを、分かりやすく図解するスキルです。最後に、民間の方々とのコミュニケーションがとりやすいことです。実際に、民間の言葉で話ができるということもありますし、自分が民間出身だとわかると、相手から「話しやすい」と思ってもらえるところも感じます。

5年ほど前に、現場に伝わる資料作りをするように、というお触れが次官からありました。当時の次官は、現場に行って農家と話すことを徹底的にやっていた方で、現場と意思疎通できていないという危機感が強くあったようです。現場に分かりやすく伝えなければ、現場は動かない。省全体でそのような意識があるので、自分のスキルを活かしやすい環境だと感じています。

霞ヶ関から仕掛ける。その面白さはこちら側に来てみないと分からない。

ー今後のキャリアについてどうお考えでしょうか。
常々、転職も考えてはいます。実際に転職をするかどうかは別として、絶えず、様々なオプションを持つことが大事だと思っているからです。民間の立場で霞ヶ関を動かすということも面白いとは思います。しかし、現時点では、自分が転職するというよりも、どう民間にも政策作りを促すか、ということにより興味があります

ー霞ヶ関で働くことに関心を持っている方々も多いと思います。そうした方々へのメッセージはありますか。
霞ヶ関は、処遇や労働環境の面で、ブラックだと思われているかもしれません。私は、収入が低いとも、ブラックだとも思いません。家庭の事情で、私の日本の自宅は都心から少し離れたところにありますが、育児との両立のために10時出勤も認められています。また、同じく農水省に中途入省した先輩は、入省当時、中途採用は係長からのスタートでしたが、6年で管理職になり、今年の7月に、民間企業の役員に相当する指定職に昇格しました。こうした実例は「中途採用の職員も人事で不利な扱いを受けない」ということを示していると思います。

社会貢献や公共性のある仕事をやりたいと思う方々にとっては、霞ヶ関は魅力的な職場だと思います。霞ヶ関が起点となり、業界全体を動かすようなことができます。私たちから企業に声をかけて、予備的な検討を進めてから、正式な検討の場を作るのです。企業側からこのような動きをすることは容易ではありません。その面白さはこちら側に来てみないと分かりません。自分がやりたいことの構想があれば、それを実現するために、ぜひ、こちら側に来てもらえれば嬉しいです。

【編:吉井弘和】


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