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金融知識と保険知識の男女差

仕事の都合でいろいろと保険に関する論文を読む機会が多かったので、論文をもとにちょっとした考察してみました。

一般に、金融知識は女性よりも男性のほうが知識水準が高いとされています。これは欧米、日本国内の様々な調査結果からも読み取れる、そうです。

本稿では、日本の 20 歳から 69 歳までの消費者 1,000 人、20 歳代から 60 歳代の男女 100 人ずつという独自のデータセットを用いて、保険知識の決定要因のメカニズムを分析した。まず、他の金融知識とは異なり、女性に関して、生命保険の知識の水準は必ずしも低くはないことが明らかになった。 また、損害保険など、その他の保険に関する知識の水準については、女性の方が低いこともわかった。 第2に、教育水準が高い消費者ほど、保険に関する知識が高いという分析結果が得られた。この研究の結果は、経済学や金融教育に関する他の研究で得られている結果と一致している。第3に、結婚している人は、結婚していない人よりも保険知識の水準が高いことが明らかになった。また、本稿では、金融知識の水準やリスクへの態度と、金融・保険制度、住宅ローンの金利選択についても簡単な分析 結果を示している。総合的に見ると、本稿の貢献は、生命保険については、女性の生命保険知識の水準が低いわけではないことを発見している点であろう。

明治大学の浅井義浩教授の論文です。

https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/22531/1/shakaikagakukiyo_60_2_75.pdf

男性は女性よりも金融知識がある、女性は男性よりも知識水準が低いという欧米および日本国内での金融知識の調査結果があるのですが、「保険」という分野に限定すると、女性の生命保険に関する知識水準は必ずしも低くはないという分析結果を提示しています。

肌感覚として、私もこの論文に同意です。

やはり、生活に直結するので、生命保険に関しては必要性に迫られて詳しくなる女性が多いと思います。主婦として、家計管理を行い、特に40代以上はそういう方が多い可能性があります。

一方で、女性の大学進学率向上、未婚率増加などを考えると、30前半から下の世代からはこの傾向が必ずしも当てはまらなくなるのではないかと考えています。

ここからはマニアックな話です。(視点が偏っている可能性があります)

論文で2点目に語られている教育水準という視点でみると、いわゆる高等教育等への進学歴について、

例えばですが、1980年生まれ(42歳)が大学進学する年の1999年の大学・学部(過年度含む)進学率は女性29.4%、男性46.5%で、女性の7割、男性の5割は四年制大学に進学していないことがわかります。

統計
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003147040

一例ですが、私は四年制大学の附属高校(都内私立)出身なのですが、その高校の同級生は男女共に100%大学進学(短大は少ない)です。

川崎の地元の小中(公立)の同級生をみると、男女共に四年制大学進学者は少なくて、やはり専門・短大卒が多めです。

ちなみに、小学校は30年前当時で、40人クラス中の4分の1は中学受験する小学校でした。大学進学率は中学受験組+αが大学進学という感じです。

平成12(2000)年生まれの人が現役で大学進学をする年が令和元年(2019年)なのですが、2019年の大学・学部進学率は、女子50.7%,男子56.6%です。

99年と比較すると、圧倒的に大学の進学率が上がっているので、未婚率の増加とともに、結婚などにより保険に関心を寄せる女性よりも、総合的な資産運用に積極的な女性が増え、総じて女性の金融知識水準が男性並みになる可能性があります。

ここに参考になるグラフを載せておきます。

男女共同参画局制作の男女共同参画白書 令和2年版から抜粋。

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このまま、男女共に大学進学率が伸び続けるのであれば、その傾向は強くなる可能性がありますが、先は読めないため、高校での資産運用、小中での金融リテラシー教育は不可欠、不可避という感じでしょうか。

残念なことに、女子に学問は不要とする風潮は未だ残っているため、そこで地域格差も要因として絡み合ってくるのだろうなぁと考えています。

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