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[modeling] "恐竜少女カプア" モデリング工程の紹介


概要

みんなさんこにちは!VolcaでモデリングTAを担当している"Haku"です。
この記事では前回紹介した、恐竜少女"Kapua"モデリングの工程紹介となります。
これから、Kapuaモデリングの制作過程を紹介させて頂きます。
(モデリングはmaya、レンダリングはUE5を利用しています)
皆さんの参考になれば幸いですし、ぜひフィードバックもいただければと思います。
お互いに切磋琢磨しながら、優れたモデラーを目指しましょう!


1. モデリングを始める前に - 観察と分析 -

ーー デザイン図の解析
今回いただいたデザイン図は小さな恐竜です。デザイン図から、いくつかの重要な情報をすぐに把握することができます。

ーー  構造の確認
羽毛、色彩が鮮やかで豊富、頭部が大きく、眼球が大きい、頭頂部に装飾がある
ーー  材質の確認
毛髪以外、頭部の装飾に一部金属の材質が含まれている
ーー 制作の流れの確認
今回はCGプロジェクトなので、ローポリを作成してベイクする必要はない

このように分析を行うことで、制作の方向性が明確になり、将来的に予想される問題に対する準備も整います。たとえば、毛髪と金属のマテリアルを区別する必要がある、毛髪はテクスチャを作成してから配置する必要があるなどです。

2. モデリング工程の履歴とポイント

今回、細かなCGソフトのオペレーションは割愛させて頂き
作業中にどういった事を注意し解決したかを時系列でまとめさせて頂きました。

ーー 初期モデリングの段階でよくある問題
三面図を参考にしてモデルを制作する際に、正面図と側面図が一致しないことがよくあります。最初はこの問題に悩まされました。正面と側面でデザイン図に合うように見えても、別の角度から見ると不自然になることがあります。かといって、自分の感覚で調整すると、クライアントの満足を得られないことが多いです。

ーー この問題への対処方法

  1. 実物あるいは類似したキャラクターや動物を参考にして、最も自然な構造になるよう調整します。その際、クライアントへのデータ提出と合わせ、参照した画像を添付します。

  2. バリエーションを作成して、クライアントに複数の選択肢を提供します。また、ここで三面図が抱える問題についても説明を行います。

モデルを制作する際にはUV展開を考慮する必要があります。
特に、テクスチャに細かい毛の質感が含まれる場合、モデルの極端な伸縮によって毛の模様が大きく変形したり歪んだりするのは避けたいところです。そのため、モデル制作の初期段階では、キャラクターの静止ポーズを、
できるだけ自然な状態に合わせて作成するのが望ましいです。

モデル制作の過程で、試験的に動きを作成し、トポロジが適切か、UVの切り方、テクスチャの描き方に問題がないか等を確認します。
これらの情報は、後のアニメーターにとって重要な参考資料になる可能性があります。

トポロジー

ご存じの通り、キャラクターのモデリングでは、関節部分にエッジループを追加して、関節が動いた際に自然に見えるようにする必要があります。そのため、モデルを制作している段階から、テクスチャ、UV展開、リギング、そしてキャラクターの動きがスムーズかどうかを考慮する必要があります。

私の場合、特にキャラクターの柔軟で複雑な動きをする部分、例えばまぶた、口輪筋、腕、指などには、エッジループの数を通常の倍に増やすことを習慣にしています。

羽毛について

以前にも話したように、毛が自然に成長する特徴を参考にして、小さい毛から大きい毛へと成長し、毛の向きが自然に変化するように意識しました。また、羽毛同士がモデル内で貫通したり、衝突しないように細かく調整を行ったため、多くの時間を費やしました。

羽毛の生物モデルを作るのは初めてでしたので、多くの工程を動画や記事を参考にしながら学んでいきました。この過程が全く苦痛に感じられず、むしろ平静で集中できていたのが意外でした。


3. UV・テクスチャリング工程のポイント


続いてテクスチャリング工程に私がポイントだと考える事を書いていきます。

UV展開

UV展開時には、切れ目を目立たない場所に配置することに注意しましょう。例えば、頭皮や脇の下、大腿の内側などです。できるだけ目立つ場所でUVを切断しないようにして、明らかなテクスチャの境界線が出ないようにします。
また、全体の解像度を均一に保つために、複数のマテリアルを割り当てる必要があるかもしれません。同様に、目立たない部分の解像度は、少し低く設定することも可能です。

AOベイク

AOベイクは、モデルの立体感を表現する上で非常に重要なプロセスです。
よくある問題としては、UVの歪みや重なり、縫い目が目立つことが挙げられます。ここでは長年の制作経験が必要で、UV展開の過程で発生する可能性のある問題を予測できるようになります。
AOベイク時には、羽根や眼球、口腔内の布などを複数の部分に分割して個別にベイクすることを試みると良いでしょう。これにより、後で不要な影が発生するのを防ぐことができます。
全体のベイク結果を随時確認したい場合は、MAYAで別のモデルをコピーし、そのモデルのUVを隣に1ユニット移動させることで、そのモデルはAOベイクに参加しなくなります。
AOベイク後、一部のノイズや小さな陰影の誤りなどの瑕疵については、ぼかしフィルターを追加したり、手動で修正することで、効率よく問題を解決できる場合があります。

テクスチャ制作

今回のキャラクターには衣服がなく、体のマテリアル属性が比較的少ないため、テクスチャのレイヤー制作にはあまり時間がかかりませんでした。マテリアルが統一されているため、マテリアルをコピーして色を変更するだけで済みましたが、細部には多くの調整を加えました。
例えば、羽根の根元と先端にグラデーションをつけたり、顔の色も一律ではなく、顔の構造に合わせて微妙な色差をつけました。これにより、全体の色相を変えることなく、ディテールが豊かになりました。
羽根をより正確に制作するため、今回はまず羽根のテクスチャを作成し、その後MAYAで原画を参考にして全ての羽根を制作しました。
今回のテクスチャ制作にはSubstance 3D Painter 2023を使用しました。

監督チェックとフィードバック対応

どのプロジェクトでもそうですが、制作物が監督のイメージと合っているか
何度もコミュニケーションする事がとても重要です。
キャッチボールを繰り返す事で、監督の頭の中にあるゴールに近づいていく事が出来ます。
カプアも下記のようなやり取りを何度も繰り返し完成に近づいて行きました。

フィードバックによってはデータを遡る事も多いので、細かなデータセーブもポイントだと思います


3. 造形の完成

上記の流れを経まして、ついに最終造形が完成しました!


次回予告

今回、デザイン画が届いてからCG造形が完成するまでのプロセスを紹介させて頂きました。
如何でしたでしょうか?(もし、ここをもっと知りたいなどありましたら言って貰えると嬉しいです)
次回の記事では、キャラクターの表情制作のプロセスと重要ポイントについて執筆したいと思います。

読んでくださってありがとうございました!

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