菩化鳥1stアルバム「呼吸と巣」リリースについて思うこと
1stアルバムリリースまでの軌跡
はじめに
どうも菩化鳥です。
2023年6月28日(水)0:00
菩化鳥 1st ALBUM 「呼吸と巣」各音楽サブスクにて配信リリースとなります。
菩化鳥として楽曲を制作し、はじめて動画サイトへ投稿したのが2010年8月。
時は流れて2013年6月、約13年の年月を経てファーストアルバムリリースに至ります。
何故こんなにも時間を要したのか、菩化鳥の活動を掻い摘まんでアルバムリリースまでの軌跡を振り返ってみようと思います。
初期(2010-2012)
2010年、ライブに明け暮れた日々が過ぎ去り、音楽よりも私生活に忙殺されていた初夏のある日、友人からの薦めでボーカロイドの存在を知りました。
もともと作詞作曲をひとりで行うことが多かったこともあって、これといった弊害もなくネットに楽曲を公開するという活動へとシフトチェンジをした頃でした。
新しいことへの挑戦ということもあって意気込みも充分。
少し期間が空いてしまうこともありましたが、わりかしコンスタントに楽曲を制作していたこともあって曲を投稿する毎に再生数やフォロワーも増加傾向にあったように思います。
2010/08/08 「ロケットアッパー」
2010/09/20 「赤裸々踊々」
2011/06/18 「マシンガンサヴァイヴ」
2011/09/07 「ぴっぴっぴっ」
2011/10/16 「&LOID」
2011/11/21 「ナノメンタル」
2012/06/23 「ンチロギ」
2012/10/13 「赤裸々踊々 GUMI Ver.」
※補足────────────
「赤裸々踊々 GUMI Ver.」について、制作PCが故障した際に楽曲データが破損し、復元できたのはボーカルデータのみだったため今回アルバムに収録することが出来ませんでした。ごめんなさい。
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改めて聴いてみれば構成や音作りなど反省点は多々ございますが、投稿7曲目の「ンチロギ」がちょっとした追い風となります。
2012年頃からちらほらと自作曲を歌ってくださる方が増えてきて、やがて「ンチロギ」は株式会社インターネット様が主催するLily&GUMI楽曲コンテストにて優秀賞をいただきました。
菩化鳥の活動がなんとなく認められてきたのかもしれないという実感が湧いてきた頃です。
しかしこの時期に私生活における様々な環境の変化が重なってしまい、投稿ペースが著しく低下していきます。
鉄は熱いうちにと言いますが、菩化鳥という存在を押し上げるチャンスを自ら逃してしまったような気はしています。
中期(2013-2015)
楽曲の投稿ペースが低下していた時期は年に1曲投稿するのがやっとの状態で、これでは気にかけてくれていた方々が離れてしまうのも致し方ありませんでした。
2013/02/12 「イヂメカニズム」
2014/03/21 「エランダール」
2015/04/13 「カタメノシカ」
年に1曲とは言え、その内「イヂメカニズム」「カタメノシカ」については、有難いことにお声掛けいただいて制作したものになるため、それがなければこの期間は「エランダール」しか投稿していなかった可能性もあり得ます。
エランダールはMVがアニメーションだったこともあり、曲の世界観をダイレクトに伝えられたこともあってか、今までにないほど多くの方から反響をいただきました。
当時のボーカロイドカテゴリーにおいてはYouTubeよりもニコニコ動画の勢いがあり、リアルタイムで増え続けるコメントや更新されるランキングに興奮したのを覚えています。
ニコニコ動画のコメントが流れてくる仕様は、皆でテレビをあーだこーだ言いながら見てるような疑似体験ができて、古き良きお茶の間感があって良いですよね。
初期に比べて各種SNS等で知り合った方たちと共作をする機会は増えたものの、もともとコミュニケーションの取り方があまり得意ではないもので、関わっていただいた方々には様々な形でご迷惑をお掛けしていたことと思います。
それでもこんな至らぬ人間に付き合い、最後まで作品に携わって下さった方々には深く感謝いたしております。
2014年には立て続けに「ンチロギ」「エランダール」がカラオケ入りを果たし、2023年現在でも歌ってくれている方がいることは大変嬉しく思います。
後期(2016)
2016年「ホロg」の投稿を最後に菩化鳥としての活動は停止。
2016/01/23 「クチウツシ」
2016/11/13 「ホロg」
「クチウツシ(口虚師)」投稿後にはPCが故障し音楽の制作自体が出来なくなっていたため、実質この曲が菩化鳥としての最終曲となるはずでした。
しばらくして、起動しなくなったPCから諸々のデータを救出したところ、その中にMIXさえすれば形になりそうな唯一の楽曲「ホロg」が眠っていました。
私生活や環境の変化、楽曲の制作が出来ない状況も相まって、このまま人知れず菩化鳥は風化するのだろうという心の隅にこびりついては剥がれない想いが、日々の中で切れかけた蛍光灯のように明滅していました。
拭いきれないその想いと決別するためにも、今まで知ってくれた方々にきちんと挨拶をして、音楽に見切りをつける決心をしました。
「ホロg」の制作日時を改めて確認したところ2010年9月にはMIX前のデモが完成していたため、本来であればお蔵入りになっていた楽曲かもしれません。
最後は自分自身が音楽と距離を置くための我儘となってしまいましたが、携わって下さった皆さんご協力のもと、「ホロg」を形にして音楽から遠ざかることとなりました。
活動停止から再開(2017-2022)
この期間は音楽自体をほぼ聴いておらず、日々の作業BGMはもっぱらラジオとなっていました。
余談ですが幼い頃からお笑いが好きだったので芸人さんのラジオばかり聞いてます。
結局制作をした楽曲達を自身の作品としては一度も音源化することなく活動停止をしてしまいましたが、そもそも当時はアルバムを制作するという気さえなかったかもしれません。
これには幾つか理由があり、2016年あたりからサブスクの波が来はじめていたものの、一般の音楽クリエイターがアルバムを制作するとなれば、CD自体を自主制作して何かしらのライブやイベントなどの活動を通して頒布したり、委託販売するのが主流だったのではないかと思います。
そうなると「ンチロギ」「エランダール」が当時そこそこ認知度は高まってきてはいたものの、自分の中では明確なヒットソングと呼べるものではなかったため、今までの制作楽曲をかき集めて作品にしたとしても、『自身の活動の記念としてCDを制作しました!』というただの自己満足になってお仕舞いだろうという部分が強かったように思います。
それに楽曲毎にMIXをした人が異なるため、1つの作品にしようとした場合に音のバランスにバラつきが出てしまうのもCD制作を断念するひとつの要因でした。
CDとしてアートワークにも拘って実際に手に取れる形ある物になるというのは、音楽に携わる身としてはひとつの憧れではあります。
ですがこれは買い手があって成り立つもので、捌ききれない大量のCDを生涯自宅保管するくらいなら作らないほうがマシと考えていました。
しかし今では音楽サブスクが一般化し、リリースしたい楽曲とジャケットのイラスト1枚あれば、CDを制作せずとも誰でも全世界に自分の音を配信できる時代です。
それぞれ何かしらのメリットとデメリットはあるにしても、リリースのハードルは明確に下がり、音楽クリエイターにとっては優しい世の中になってきているのだなと感じています。
復帰前夜(2022年末)
2022年の末、活動再開の復帰曲を投稿する前に、宣伝用にと試しに投稿した「エランダール」のショートがバズりました。
※記事執筆時で154万再生
この時点で「エランダール」の投稿からほぼ9年もの時が経過していましたが、有難いことに沢山のコメントや反響をいただき、その中にはちらほらとサブスク配信を希望する声がございました。
ショートからフルを聴きにきてくれる方も多く、新規リスナーから多くの温かいコメントをいただいたこともあって、これは音源化をしてもいいのかもしれないなという考えにようやく辿りつきました。
であれば、自然と過去曲をまとめてアルバムとしてリリースするべきだという方向へと向かっていくのでした。
アルバム「呼吸と巣」のあれこれ
ファーストなのにリメイクアルバム
ファーストアルバムとは、本来アーティストとしては初々しく新鮮さや勢いの感じられるものだと思います。
しかし菩化鳥の存在を誰しもが忘れ去った今となっては、ファーストアルバムのリリースタイミングとしては完全に見誤っていると言ってもいいでしょう。
新しいリスナーからすれば多少の新鮮さは感じとっていただけるのかもしれませんが、前々から知ってくださっているリスナーからすれば懐かしいという感覚の方が近いのかもしれません。
正直な話、過去の音源をそのまま寄せ集めてリリースするのは簡単です。
ですが前述の通り音源ごとに音のバランスが異なるため、これをひとまとめにしてリリースというのは、聴いていただく方に対してのマナーに反する行為だと思うわけです。
そんなのはいいからエランダールだけでも早くリリースして!という方もいらっしゃるとは思います。
動画サイト上では再生数の振るわない楽曲がほとんどですが、どの曲もその当時の菩化鳥がその時の最高傑作として制作している楽曲達です。
とは言え、過去に囚われていても仕方がありませんし、時代は止まらずに動き続けています。
であれば、リリースする新音源には可能な限りリアレンジを施して、動画サイトに投稿されている旧音源の双方を聴いていただけたら、前々から応援してくださってるリスナーも、ただただ懐かしいというだけではなく、なにか新しい発見をしながら改めて楽しんで聴いていただけるような気がしています。
今作では今まで手をつけてこなかったMIXも自身で行ったため、過去の菩化鳥が作った曲に対して、今の菩化鳥がアレンジを加えながらリマスターをすることができました。
そのためアルバム「呼吸と巣」はファーストアルバムにしてリメイクアルバムという形でリリースすることになりました。
「呼吸と巣」の由来
「呼吸と巣(こきゅうとす)」は、神話に出てくる冥府に流れる嘆きの川「Cocytus(コキュートス)」をもじったものです。
これは個人の感覚なんですが、自分が昔作った楽曲はあくまでも昔の自分が作った曲で、その時の自分がその時向かい合っている作品に対して魂を込めており、今の自分が昔の自作曲を聴くと自分ではなく他人が作ったものという感覚になる時があります。
実際に作ったのは自分で間違いはないんですが、今の自分が昔の自分と同じ曲を作ろうとしても全く同じものを作ることはできないし、その時時の思考やインスピレーションに左右される部分もあると思います。
そんな楽曲だからこそ、昔の自分の感情と共にその時の空気ごと一曲一曲に魂を宿しているような気がして、耳で聴いたり目で見たりする五感とはまた別の感覚で、楽曲自体が呼吸をしている動物のように思える瞬間があります。
そう考えるとインターネットという巣の中で産まれた楽曲達は、菩化鳥という親鳥がいなくなってしまった2016年以降も、ただただじっと親鳥の帰りを待ちながら呼吸をし続けていたのかもしれません。
今こうして、嘆きの川を漂い続けさせてしまった楽曲達の巣立ちを、アルバムリリースという形で見届ける時を迎えることができて、『申し訳なかったな。』という気持ちと、『ありがとうね。』という気持ちで、自分勝手ですが少し安堵しています。
「呼吸と巣」のアートワーク
今までに自作曲のMVを手掛けることはまあまあありましたが、アルバムのMIXが仕上がった段階ではなにも決まっておらず、最初に考えたのがアルバムタイトルの「呼吸と巣」でした。
いくつか候補を出した中で、「呼吸」というワードはどうしても入れたくて、その中で自分が菩化鳥という名前で活動していたこともあり、鳥にちなんだ「巣」というワードが妙にしっくりきて早い段階でタイトルが決定しました。
その後にアルバムジャケットをどうするか考えた時に、誰か他の方に依頼することもよぎったのですが、親鳥としてこれは自分自身でやらなくてはならないという使命感と、短期間で自分の中のイメージを形にするには自分でやるべきだという強い意思のもと、10年以上も前に購入したワコムの小さなペンタブを押し入れから引っ張りだして丸一日かけて描きあげました。
アルバムジャケットのアートワークは、「呼吸」というワードから肺をモチーフに、静と動、死と生のコントラストを描き、活動の休止と再開を表現してみました。
また、肺同士が対話をしているような、昔を懐かしむような、許し合うような、これからのことを語り合うような、そんな雰囲気を出せたらなと思いペンを走らせました。
左肺の傍らにある卵はアルバムの心臓であり、菩化鳥であり、楽曲でもあり、これから楽曲を聴いていただく皆さんに自由に味わっていただきたくて、そっとスプーンを添えています。
おわりに
6年という活動停止期間中にいただいた皆さんのコメントやSNSへの共有は、日の光でもあり、恵みの雨のようでもありました。
「呼吸と巣」のアルバムアートワーク片方の肺のように、一時は枯れ木となってしまいましたが、またこうして新しい芽が吹き、少しづつ花を咲かせはじめられている菩化鳥がいます。
菩化鳥の音楽はひとりでは奏でることができません。
「菩」の草冠を「化」にかぶせれば「花」になり、「鳥」にかぶせれば「蔦」となります。
そして、冠を脱いだ「菩」は、何か一つ足りない「音」になります。
その足りない一つとは、聴いてくださるリスナーの方々一人一人なのかもしれません。
菩化鳥とリスナーの双方がいて、はじめてそこに音としての存在を確立できます。
そういった意味を込めて、2010年に菩化鳥という名前で活動をはじめました。
正直全員は覚えきれずに申し訳ないですが、過去に頻繁にコメントをくれていた、今もくれている方々は認識しており、とても励みになっております。
いつもありがとうございます。
2023年6月28日(Wed)
菩化鳥 1st ALBUM 「呼吸と巣」リリース
初心に立ち返り、またこうして皆さんに楽曲をお届けすることができることを大変嬉しく思います。
1st ALBUM「呼吸と巣」たくさん聴いていただけると、より一層嬉しいです。
長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
今後とも菩化鳥のことをよろしくお願いいたします。
では、ひとまずこれにて。
菩化鳥
「呼吸と巣」アルバムグッズ
※追記
「呼吸と巣」リリースを記念してアルバムのアートワークグッズを作りました。
SUZURI とBOOTHで商品のラインナップや価格、細かいディティールなど多少異なってますので、お気に入りアイテム見つかればGETしてみてください。
SUZURI
BOOTH
YouTubeのストアページにはSUZURIのみリンクができたので、そちらからも閲覧することができます。
よろしくです。
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