見出し画像

東証の完璧すぎる記者会見を"スポ深"の視点で分析

今日は、ちょっとこれまでとは異色のテーマを取り上げようと思います。
それは、東証のシステム障害における記者会見の内容と過去の当チャンネルの学びを結びつける試みです。

このnoteはVoicyの過去の放送を文字に起こしたものです。

今日のテーマ 東証の完璧すぎる記者会見と過去のTipsからの学びを考えます

10月1日に障害が発生して、当日の証券取引をストップしたということは、リスナーの皆さんも覚えていらっしゃるのではないでしょうか。

障害は起こすことに越したことはないのですが、当日行われた夕方の緊急記者会見の内容が、「近年まれに見るすばらしい会見であった」とツイッターやエンジニア界隈で騒がれました。
更には、IT系のニュースを取り扱うITメディアで「全てのビジネスパーソンが、東証の“完璧すぎる記者会見”を見るべき理由 」という記事も上がるほどでした。

障害は起こすに越したことは無いのですが、逆境やピンチに陥った時にこそビジネスパーソンとしての能力が試されるのではないでしょうか?

今日は、「何故、称賛されているかのポイント」と「過去の当チャンネルの放送でのTips」を参考に、日常生活や仕事に活かせるTipsについて考えていきたいと思います。

東証の記者会見は何故称賛されたのか?

まず、当チャプターでは、東証の障害の内容 及び 記者会見で何が称賛されたのかについて触れていきます。原因をすべて話すとなるとかなりの量になりますし、自分はシステムエンジニアでなく詳細までは語れないので、ここではざっくり概要だけに留めます。

まず、東証のシステムですが1日平均で約3兆円の取引があり、相当の規模感が求められます。また、現在の処理速度は、0.2ミリ秒。
これだけで、膨大なアクセス数をさばく必要があり、同時にスピード感や精度が求められる、大規模なシステムであると想像つくのではないでしょうか?

これを実現するのは、アローヘッドというシステムで、400台のサーバで成り立っています。
また、相当のアクセス数や複雑な処理も求められるので、常に稼働しているアクティブ機の他に、何か障害が起きた時に切り替えられるスタンバイ機を用意しています。

今回のケースは、本来であれば、アクティブ機が障害を起こしたので、フェイルオーバー(すなわち、スタンバイ機に切り替える処理)が起きるように、組み込まれていました。

しかし、このフェイルオーバーが起きるためには障害を検知するのですが、今回の障害ではではハードディスクが、中途半端に生きていて、障害とみなされなかったみたいです。

そのために自動の切り替えができない、情報が配信できない、
「では、下手に再起動を行うと、データが失われる」その事態を鑑みて、やむを得ず、取引停止に踏み切ったようです。

もちろん、ベンダーであるFUJITSUとは、スタンバイ機に切り替えるフェイルオーバーのプログラムの様々なテストは行っております。
今回はそのテストケースではカバーしきれなかったケースです。

詳しい話は、記者会見のURLを貼っておきますので、ご興味ありましたら、アクセスいただけたらと思います。

で、ここからは会見の話に移ります。会見は質疑応答も含めると約、1時間40分に及びました。

記者会見には、
・宮原幸一郎社長
・横山隆介・最高情報責任者(CIO)
・川井洋毅(ひろき)執行役員
・田村康彦(やすひこ)IT開発部トレーディングシステム部長

が臨みました。

では、この会見で何が称賛されているか、解説記事とか諸々見ましたが、大きくわけて3点あるかなと思います。

・1点目:
専門的な知識を持たない人にでも、うまく噛み砕いて、相手の視点に立って説明されています。そして多くの報道記者から似たような質問がいっぱい飛び交います。それについても、誠実に、丁寧に説明されています。

・2点目:
各自の役割をまっとうして、記者からの様々な質問に回答していました。
その際に、結構できないサラリーマンの常套句である「持ち帰ります」「確認中です」という「その場を乗り切ればいいというようなかわすような態度」は取らなかったのが、多くの人に好感を与えたのだと思います。

・3点目
外注先のベンダーであるFUJITSUを守った
ということです。
今回についてはFUJITUSさん側の責任ではなく、我々東証側に原因がある。システム運用をしている側によるもの。発注者側の責任だという旨を伝えています。
宮原社長はこの会見で、FUJITSUへの損害賠償請求も行わないことも記者会見では伝えております。
この判断と発言ってなかなか出来ることではないことかなと思いました。
自分が同じ立場に立たされた時、弁明とかしたいですし、「勘弁してくれ」と思うのではないかなーと。

以上が称賛されるポイントです。

また、記者からは「1日システムを停止する必要なかったのでは」という意見は出ていますが、ここまでチームワークもしっかりしており、各自が説明責任を果たしているということから、ギリギリの決断を迫られての判断だったのかと思います。

また、記者からの「システムは止まらないように完全に作るべきでは?」という問いにも「完全に止まらないというシステムは存在しない」ということも正直に話していました。
ただ、だからといって開き直るのではなく、様々な運用の知見と過去の障害事例などを活用しながら、極限までゼロに近づける、その謙虚で真摯な姿勢に、多くのエンジニアから共感を得たのではないでしょうか。

ここまでは、東証障害の概要と、なにが主に称賛されているかについて取り上げました。次のチャプターでは更に具体的に考えていきたいと思います。

東証の記者会見と過去のTipsとの関連性について考えてみました。

ここからは、「称賛されているポイント」と「過去の当チャンネルの放送回からの学び」の関連性について考えていきたいと思います。

1)まず、専門的な知識を持たない人でも分かりやすいように説明、うまく言語化している、相手の視点に降りているというポイントについてです。
これは、第23回目の放送にある「青学の原晋監督と1分で話せの著者である伊藤羊一さんプレゼン能力についての話」などが参考になるのかなと思います。
例えば
・メディアに向けてはキャッチーで誰の心にも残るような抽象度の高い言葉を発信しながら
・選手に対しては、明確で具体的な数字で計測できる形で目標を管理しています。
・また、「現在、過去、現在、未来」という時間軸を大事にするという視点
も参考になるかなと思いました。

今回のケースに当てはめると、現状起きている事象を理解するために、過去の膨大な事例を参考します。そして、現状を把握したあと、じゃあ自分はこのあとどうするべきかという行動に経ったんだと思います。

そして、「個人投資家、法人で投資運用している人、証券会社、上場を予定している企業、TOBやM&Aの案件を進めてる企業」をはじめとした多くのステークホルダーへの影響や
「日本の金融、経済を担っているというこれまでのこと」そしてこれからもこうありたい。
そういった影響度や自分たちのあるべき姿を考えて、現時点では停止するということがベストであるという結論に至ったんだろうなと思います。
であるので自分の行動に責任が持てます。


業種、業界は異なりますが、「受け手を想像しながら、分かりやすい言葉を使って対話をすること」「時間軸で物事を考えるということ」は参考になるのではないでしょうか。


2)2点目のポイント 記者会見に臨んだ4名が各自の役割をまっとうしていたことについてです。

組織が大きくなるにつれて、現場との距離感は離れてしまいます。
今回の会見に臨んだ4人は、現場の事を詳細に把握している、障害の原因究明も徹底的に行なっているので、適切に説明できるし、各々がそれぞれの職務を全うしています。

これは、圧倒的な当事者意識、プロ意識がそうさせているんだろうなと思いました。
当チャンネルの過去の放送回でいうと、第14回放送の久保建英選手の「いつ最後になってもいいようにプレイしないといけない」という言葉などが参考になるかもしれません。

ユース時代はヨーロッパの強豪バルセロナに在籍、今はスペインリーグの名門ビジャレアルに在籍している久保選手ですが、「いつ最後になってもいいようにプレイしないといけない」という言葉は、FC東京に在籍していた17歳の時点で発信しています。

メッシやイニエスタ等の超一流選手を排出した環境は才能の宝庫だが、一流まで上り詰めるのは一握り。競争はもちろん、けがやチーム事情などで消えていく選手の方が多い。そのような思考を経て、久保選手はこう話します、
「いろいろな不確定要素がある。いつ最後になってもいいようにプレーしないといけない」。
久保選手はバルセロナでの経験から、「才能だけでは足りない。覚悟を持った者だけが生き残れる世界だ」と肌で感じ、日々課題に取り組んでいるという姿勢を感じます。
また、「語尾が、○○です」っていうように「言い切り型」が非常に多い。「思います」とか「かもしれない」とか、あいまいな言い方をあまりしません

こちらは、過去の放送からの抜粋ではありますが、久保選手は17歳の時点で、他の選手と比べて覚悟というか、プロ意識が半端ないなと感じました


3)最後に3点目のポイント「外注先のベンダーである FUJITSUを守る、FUJITSU側に責任は一切ない、損害賠償請求を行わない」という発言についてです。

これは、責任感がそうさせたんだろうなと思います。
止まらないシステムはないという前提があり、だかららといって諦めるのではなく、様々な知見を活用しながら、極限までゼロに近づける、その謙虚で真摯な姿勢」そして「自分たちが、日本の経済、金融の一部を担っているという責任感」があるからこそ、ベンダーのFUJITSUではなく、あくまでもシステム運用を担っている東証側に責任があるという旨の発言につながったんだろうかと。

これは、22回放送の「自責と他責の使い分け」の回で触れた”リスクとデンジャーの話”に通じるかなと思います。
この自責と他責の使い分けはざっくりいうと、
「コントロールできないことまで自責にするのではなく、時には他責にして冷静に距離を取る、そして冷静に考えられるようになったら、自責思考で考える。すなわち、ハイブリッドに自責と他責を使い分けよう」
という回でした。

で、この使い分けをする時に必要な観点がリスクとデンジャーです。
一見すると似たような言葉ではありますが、実は違います。
リスクは回避できるけど、デンジャーは予測できないという事件、事故のケースです。

東証の場合は、苦渋の決断だとは思いますが、無理やりシステムを稼働させて、後で大障害を起こしてしまうのではという未知のデンジャーよりも、止めるという決断をしたのだと思います。

なので予測できない、起こるかもしれないデンジャーというのを極力、排除したんだと思いました。

そして、原因追求に努めつつ、関係各位への経緯説明をして、翌日以降の取引再開に向けての準備を整えていきました。
その際には、「再開時に生じてしまいそうなリスク=すなわち予測できる危険」に対しての対応策もセットで考えていったんだろうなと思います。

そして、記者経験では、「分かりやすい言葉で説明して、各自が自分の役割を全うしての質疑応答、全てを自責で処理をする」ホントに、素晴らしい会見だったなと私は思いました。

次のチャプターでは仕事に活かせるTipsについて考えていきたいと思います。

Tips 自分の仕事に誇りをもつこと、プロ意識をもつことの大事さ

さて、今回のTipsについてです。
いろんなTips導き出せそうなので、結構迷いました。
ですので、リスナーさんに委ねたい部分もありますが、自分はこれに尽きるかなと思います。

それは、「自分の仕事に誇りを持つこと、プロ意識を持つこと」です。

これがあるからこそ、
・圧倒的な当事者意識
・責任の所在は自分にある。
・人のせいにしない

という視点に立てるんだろうなと思いました。

今回はすいません。結構抽象度の高いTipsにさせていただきました。
どのように行動につなげるかは人それぞれですので、フワッとさせてしまいましたが、誇りやプロ意識を持つことは、とても大事だなと思いました。

ホントに、東証の記者会見での会見内容は、色々感じることがありますので、もしお時間のある時は記者会見の動画解説記事とかをご覧いただけたらと思います。

放送を終えて

今回は、「アスリートや指導者とかスポーツ」をテーマにしない異色の回でしたがいかがでしたでしょうか?
ちょっと平日の回とは違った変化球の放送をしてみました。

テーマに上げたはいいが、まとまるんだろうかとかと当初は思ったのですが、世の中の出来事や事象も、当チャンネルの過去のTipsフィルターを通してみると、ちょっといろんな気付きがあるなとまとめてみて感じたことです。

さて、来週以降はまだ決めてはいないのですが、ドラフト会議とか全日本大学駅伝が近づいてきたので、このあたりを取り上げていきたいなと思っています。

このnoteはVoicyの過去の放送を文字に起こしたものです。
是非音声でもお聴きいただき、フォローボタン、Twitterへのシェアもよろしくおねがいします。
フォローをしていただけると、このチャンネルの最新の放送を受け取れたり、あなたに合ったチャンネルがおすすめされます。

また、「Voicyとはなにか?」「フォローの仕方」などはこちらにまとめておりますので、合わせてご確認ください。


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?