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オレオレ詐欺と声質変換

以前のブログで反響が大きかったので、こちらでも書いておきます。


声質変換の話をすると、一番よく聞かれるのは、
「オレオレ詐欺に使われそうですね」
ということです。

たしかに、誰かの声になりきることができる声質変換技術は、オレオレ詐欺にピッタリなようにも考えられます。

しかし、僕の考えでは、声質変換の技術がどんなに向上しようと、オレオレ詐欺で騙される人は増えないと思います。(使われるかどうかはさて置き)


そもそも、オレオレ詐欺ってどんなイメージでしょうか?

見ず知らずの老人に電話して、

「オレだよ。オレ!お金に困っているから振り込んでよ。」

みたいな事を言って、息子や孫のように装うことで金品を騙し取る詐欺を想像する方が多いと思います。

しかし、実際は詐欺も巧妙化しており、単純に「オレオレ」と言って身内になりすますケースは、現在はあまり無いそうです。

近年の、オレオレ詐欺はチームを組んでいることがほとんどです。

例えば、
まず、息子さんが交通事故を起こしたと、警官のフリをした人から電話が掛かってきます。
その次に、交通事故の相手から電話が掛かってきます。
さらに、弁護士や裁判所の人から電話が掛かってきて、示談を持ちかけます。

こうして、権威の名を借りてあたかも本当のことのように煽ってくるので、身内役がいなかったり、喋ったとしてもほんの数秒だったりします。

「オレオレ詐欺」という名称がついてしまったことで、身内以外へのなりすましについては、警戒心が低くなってしまっているのかもしれませんね。


さらに、オレオレ詐欺を含む「振り込め詐欺」の手口は、特定のターゲットを狙い撃ちするというよりは、不特定多数に仕掛ける数打ちゃ当たる戦法が基本です。

声質変換をするためには、その都度ターゲットの音声データを入手する必要があり、効率的ではありません。


このような理由から、声質変換がオレオレ詐欺に利用されるケースは少ないと思います。


僕が考える声質変換の悪用ケースは、フェイクニュースに利用されることです。

政治家や芸能人の声を利用して、ありもしない事実が捏造されるかもしれません。

最悪の場合、戦争や政権の崩壊に繋がる可能性もあります。

そのような悪用を防ぐためにも、変換された音声は検知できるような仕組みも合わせて研究しています。

どんな素晴らしいテクノロジーも扱う人によっては、悪いものになってしまいます。車ですら乗る人によっては殺人マシーンになってしまうように。

誰もが楽しく安全にテクノロジーの恩恵を受けられるようにするのも、我々テック企業の責任ですね!


株式会社voiceware
代表取締役CEO 田村一起
http://voiceware.co.jp/

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