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表現とは「自分の弱さと強さを知り、生かし合うこと」

ボイストレーナーの浜渦です。

本当の表現者は自分の弱さと強さを知り、片方では表現が成立しないことを知っています。だからこそ互いを生かし合うことを知っています。これは精神的な意味でもありますが、むしろ体の、具体的に言えば筋力や持久力、特色の話でもあります。

どんなひとでも「筋力は強いが持久力はない」とか、歌においては「声帯は立派だけど、それに見合った体がない」「背筋は強いが腹筋は弱い」など長所短所を抱えいるものです。最初から全てが優れたレベルでバランスが取れている人などまずいないでしょう。むしろ全体が低いレベルでまとまっているためになんでもさらっと歌えてしまう人もいますがそれはそれで、表現のスケールの点で苦労をされます。どれが良いということではないのです。

自分の体の弱い部分に合わせても、成長は望めませんし表現は弱くなります。しかし強い部分が暴走してしまっては、表現は破綻します。自分の弱い部分と強い部分を知り、手を取り合ってバランスを取り合うことでそ新しい表現や感動が生まれ、お客様に伝わるのではないでしょうか。

素晴らしい発声法や呼吸法を知ったところで、自分を知らなければどうにもならない部分です。自分を知らないと、そんな理論も机上の空論となってしまいます。

自分の中の強いところと弱いところを知るからこそ、人の痛みを知り、優れたものを認め、共に活かし合うことの大切さを知る。本当の表現者はそれを知っている。私は、そう思うのです。

ただ同情するのでもなく、突き放すのでもない。弱い人にただ合わせることが平等だとも思わない。ましてや弱者切り捨ての生き残ったもの勝ちが平等であるはずがない。

素晴らしい音楽家や美術家、芸術家に平和主義者が多いのは、おセンチなヒューマニズムや理想論ではなく、自分の弱さ・強さを知り、互いに生かし合うことの大切さと素晴らしさを知っているからだと思うのです。

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