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銀座で「イマジネーション・ゲーム」

三島由紀夫の「潮騒」をご存じでしょうか。

伊勢湾の小島を舞台にした、貧しい漁師の新治と、裕福な家の娘である初江の恋の物語です。

小説は、このように始まります。

『歌島は人口千四百、周囲一里に充たない小島である。 歌島に眺めのもっとも美しい場所が二つある。一つは島の頂きちかく、北西にむかって建てられた八代神社である』

文章を読んで、どのようなイメージが浮かびましたか。

伊豆の島々かもしれませんし、沖縄の離島かもしれません。
高いところからの眺めなのか、海を目の前に望むのか、人それぞれだと思います。

文学とイメージがリンクするという点で、おもしろい展覧会が銀座のギャラリーで開催されています。

「装幀画展 2022」と題して、選ばれた21人の画家が文学作品を解釈し、文庫の表紙として制作した作品が競演しているのです。

川端康成、江戸川乱歩、小川未明、柳田国男、スティーブン・キング…
いやいや、これはまさに文豪に対する挑戦状と受け取れる、大胆な試みです。

例えば、画家の石井祐宇馬さんが選んだのが、三島由紀夫の「潮騒」でした。描かれたのは、コバルトブルーの鳥です。

漁村のストーリーに青い鳥? ちょっと驚きますよね。

三島由紀夫は、初めての世界旅行でギリシャを訪れたときに「潮騒」のインスピレーションが湧いたそうです。
コバルトブルーは、その海の色を思わせます。

また、青い鳥は、幸福の鳥と呼ばれます。
「潮騒」は、ハッピーエンドで終わりますから、その部分を表現しているのかなと次から次へと想像が広がります。

画家のイマジネーションが、このようなかたちで自分の脳内に入り込むと、文学作品に対して、新しい発見があります。

「このストーリーに対して、なぜ、この絵なの? どこがつながったの?」と不思議に思う絵画もいくつかありました。

それが、この展示のおもしろさです。

自分が読み飛ばしていた部分を画家がキャッチしたのか、それとも全く違う受け取り方をしたのか。その本をまたじっくり読んでみたくなりました。

こんな刺激を、21作品から受けられます。

一人一人の脳の違いを発見する、ダイバーシティの展覧会でもありますし、想像力をフル活用するという意味で、「イマジネーション・ゲーム」の場でもあると感じました。

どうぞ、現地でお楽しみください。

作品はこちらから見ることができます。
https://echo-ann.jp/exhibition.html?id=f135

銀座枝香庵にて11/4(金)まで



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