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スローモーションになるとき

痛みを伴うほうが、記憶に残りやすいという話をどこかで聞いたことがある。

今日、車を運転しながら、痛いことを思い出した。

子どもが地域のソフトソフトボール大会に出るという日、応援にかけつけるため私は急いでいた。家から徒歩でも行ける距離の学校のグランドで行われる大会だ。

でも歩いて向かっていては、試合開始に間に合わない。当時の住まいは、坂の多い地域でほとんど自転車に乗っていなかった。大人用の自転車もあったが、整備していなかったので、私は息子の自転車を借りることにした。

小学校5,6年生が乗る小型のマウンテンバイクっぽいT字型のハンドルの自転車におばさんが乗って、急いでいた。学校のグランドまであと少しというところで、下り坂に差し掛かった。下るスピードと吹く風とが相まって、かぶっていた帽子が飛ばされた。

私は、あわてて両手のハンドルを同時にぎゅっと握って、ブレーキをかけた。

次の瞬間、私は自転車とともにきれいに前転をした。

その間、おそらく何秒かのできごと。

けれども私の中では、なぜかスローモーションになっている。
きれいに一回転して奇跡的に受け身を取れた後の自分の体の上に
自転車が降ってくる。そして、私はコンクリートに頭を打ってはならぬと着地の瞬間必死に頭を曲げる。

「頭がーーー」と思いながら体を強打する。ドスンっ。

強烈に痛いはずなのに、信号待ちをしている車列のドライバーたちに一部始終を目撃されてしまった恥ずかしさのほうが勝り、立ち上がって、背中やお尻を払い、飛ばされた帽子を取りに行った。恥ずかしすぎて、車道には視線を向けられない。

その後、何事もなかったかのように、試合を見に行った。体は痛かったが、ソフトボールの試合は熱戦で、「イタタっ」と思いながらもその日は、応援に夢中になっていた。

大変だったのは翌日からだった。全身が痛い。あまりにも痛い。もしかして、骨折しているか、どこかにひびでも入っているのでは?と思いレントゲンを撮りに行った。

とても恥ずかしかったが、スローモーションの出来事を詳細に説明して、レントゲンを撮った。結果はただの打撲だった。

この経験の教訓は、以下のとおり。
自転車のブレーキは前輪と後輪を同時にかけてはいけない
余裕をもって出かけられるように、早めに行動する
子どもの自転車に大人が乗ってはいけない
自転車に乗るときの帽子は飛ばされないための対策が必要

スローモーションの最後で、頭を守る姿勢をとれたことだけは褒めたい。


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