やっぱり注意すればよかったという話
Sさんは朝から椅子の背もたれに寄りかかって、椅子の前2本の脚をあげ、後ろ2本の脚のみでゆらゆら揺れながら座っていた。
(危ないな・・・)
(小学生や中学生じゃあるまいし・・・)
(注意すべき?)
(いや、どうなんだろ・・・)
(様子みるか・・・)
1コマ目、2コマ目、無事に終了。
3コマ目、残りあと10分。
私は板書していた。
バタンっ
突然の大きな音にびっくりする。
直後にSさんの「うーっ」という呻く声。
床を見ると、Sさんが仰向けに倒れていた。
私「ちょっ、大丈夫?」
S「うー」
私「腰?」
S「腰、腰、ここも(脇腹を指す)」
私「頭は?」
S「頭? 頭は大丈夫」
私「骨は大丈夫?」
S「たぶん・・・」
実は、3コマ目の残りの時間でどうしてもクラスで決めなければならないことがあって、その話を4コマ目に持ち越すこともできない状況でのこのハプニング。私はすごく困っていた。
(Sさんも心配、でもチャイムが鳴る前に決めなくちゃー、
どうすりゃいいの)
私「救急車呼びますか?」
S「うー」
呼んでくださいとは言わない。
私「救急車を呼ぶほど痛くはない?大丈夫?」
頷くSさん。
私はとてもオロオロしているのに、クラスの学生たちはなぜか皆くすくす笑っている。
(あー、そういえば、Sさんは何かと大袈裟なアクションで有名・・・)
(いや、でも本当にすごいことになっているのかもしれないし・・・)
冷やしたほうが、いいかなと思い教務室に湿布がないかダッシュする私。
湿布はなかったけれども、発熱したときのおでこに貼るシートがあったのでそれを貼ることに。
その後、彼は教務室で休憩をとり、しばらくして教室に戻ってきた。教務室のキャスター付きの座り心地のいい椅子とともに。
教務室から付き添ってくださった先生があきれ顔で言う
「Sさんは、この椅子があれば教室にもどれるそうです!」
教室がどっと沸く。
やれやれ。
どっと疲れる私。
遅刻常習者のSさんはもう一日も休んだり、遅刻したりできない。
留学生にとって出席率はとても大切なのだ。
ビザの更新にかかわる。
明日は来られるだろうか。
いや、来なければならないのだが。
やっぱり注意すればよかった。
つくづく思った。
見出し画像はごんさんの作品をお借りしました。
ありがとうございます!
最後までお読みいただきありがとうございます。
また次のnoteでお会いしましょう。
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