短編小説(1/3)「ナイト・プール・ブギ」
黒板に描かれた「細胞の模式図」を、俺は必死でノートに写している。
指先に神経を集中して、細かい線を描く。
まず、中央に細胞核があって、そのまわりには粗面小胞体。さらに、ここにリボゾームがあって……
なんじゃ、このグジャグジャなカタチは!
あーあ、なんだかシャーペンを持つ手が、痺れて来やがったな……
俺は顔をあげて、校舎の2階の教室の窓から見える景色に眼を移した。
俺たちの高校は、ほぼ市内の真ん中にある。雑居ビルやマンションに取り囲まれてはいるが、教室は静寂そのものだ。