📧未だ誤読が続く「老後2000万円問題レポート」と老後資産の準備方法の最適解⑬(2023年05月後半号)

2019(令和元)年6月に日本中で話題となった「老後2000万円問題レポート」(正式名称:金融審議会　市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』)。

↑クリックすると金融審議会のPDFが開きます。

およそ10年ほどの周期で定期的に噴出する日本の年金問題、前回は小泉純一郎首相の「年金は100年安心」の化けの皮が剥がれ、社会保険庁の杜撰な体質と「消えた年金記録」が大問題となりました。

時の麻生内閣(2008)は民主党に敗れて下野する引き金にもなったことを覚えている方はそろそろ老後について真剣に考え始めている世代かもしれません。

年金記録問題のために2009年4月に発送が始まった「ねんきん定期便」

2018年、麻生副総理・財務大臣(金融庁含む)は結局、メディア・SNSの「老後2000万円足りない」というミスリードした批判に対してこの至極まっとうな金融審議会の報告書を受け取らないという行動を取り、何も問題は解決していないのに世間は矛を収めるというよくわからないことになりました。

視聴数を稼げると踏んだテレビ番組だけでなく、アクセス数(広告収入)を稼げると〇〇大学という認可を取っていない自称学習系Youtubeチャンネルまでもがこの事を「老後2000万円問題」と呼び、わざわざ解説してくれたほどです。

しかし情報を受け取る側は読んでもいないのにまるで読んだ気になり、理解したつもりに陥りました。また解説する人たちにとっても都合の良いキャッチ―な内容「老後にいくら足りないのか」という表面の浅くてわかりやすい部分の不安ばかりを煽るだけの彼らの言い分。

それがまるでこの報告書の真意であるかのように伝聞され、自ら読まない人による誤読の伝聞という物事のアウトラインだけ堂々としている一部を切り取った情報を正しい情報と鵜呑みにしています。

(まるでいつかのウイルスやワクチン接種問題とそっくりですね)

バイアスとバリアンス

情報が氾濫している現在、年金や老後のお金、資産形成においてもGoogle検索やchatGPTなどのような自分で考えられる人が参考程度の情報をまとめてもらうことで効率よく知見を得る事は一定の合理性が認められます。

その読み込まれた情報が真実であるかどうかはさておきとしてもです。

「検証！そこまで言って委員会ＶＳＣｈａｔＧＰＴ」

chatGPTはどこまで正確に回答してくれるのか？

他方、ネット上情報には偏りバイアスがあり、発信する側に都合の良い嘘や意図、ポジショントークも十分に含まれている玉石混交で決してそのまま鵜呑みにはできないという側面があります。

自分の頭で考える習慣のない思考停止型人間によく働きかけるというヒトラーの用いた心理学の危険性にも見られる集団心理の暴走(分かりやすい極論に取り憑かれる)という事態を招きます。

たとえば５ちゃんねる(旧2ちゃんねる)やYahoo!コメント(ヤフコメ)やTwitterなどのインターネット情報の一部は便所の落書きとまでは言いませんが、趣味などの造形の深いものもあれば、サイトの利用者の年齢から属性までに一定の偏りがあり、代表的なのは選挙などの投票結果などには大きな隔たりが出やすい傾向にあります。

SNS支持率では自民・れいわ・社民・共産が得票率よりも高く、
立憲・国民は減少する(2021年衆院選)

政治の他にもLGBTQにおけるジェンダーレストイレ問題や資産形成における投資信託の選定やアロケーション比率など誰にとって正しいかどうかの答えが変わる問題にインターネットの情報やchatGPTのようなデータを読み込みそれらしい回答をするものは偏りが生じミスリードを招きやすいというものです。

こうした問題を「バイアスとバリアンス」と呼びます。

学習不足の人は物事を単純化したがります。
自分に理解できないものは低次元(単純化)に置き換えることで、物事を表面的に理解したつもりになります。

※これがダメな訳ではない、理解には必要なプロセスですが学習習慣がない人には落とし込むための型が内在しないので落とし込みづらい。つまり記憶の定着になりづらい。

逆に我々のようなFP・IFAまたは保険募集人たちは一般の人たちと同じレベルでは仕事になりませんので過学習を求められます。
つまり情報の過多が発生します。

そして両者のレベルの交わる点に、双方が落とし込む必要があります。

「自分の頭で考える」とは、この落としどころにお互いが歩み寄る必要性があるという事です。

※片方だけが歩み寄るのでは依存になります。

この時に特に気を付けなければいけないのは、自分が理解できないもの・手に入らないもの・扱えないものを人は否定しがちという点です。

情報のソースである書籍(本)やレポート(報告書)を手にして自分で読むということは、学習をして自身の理解を深めると共に、情報の発信者の誤りを補正しながら「最適解」を自ら探るという行為です。

この大切な部分は、他人に任せては絶対にいけない部分なのです。

もし水先案内人の思想や価値観を絶対に信頼することができるとしても、自分はどう考えるかを放棄してはいけないのです。

老後2000万円問題は総合NISAに通じる

さて2024年1月から始まる総合NISA(仮称:新しいNISA)を考える上で、「老後2000万円問題レポート」がどうして重要かと言えば多くの人が老後2000万円問題を①「老後にお金を足りない問題」と、その②解決策としてiDeCoやつみたてNISAなどの税制優遇制度の推奨と表面的に単純化して捉えてしまっている点です。

少しでも自分の頭で読んでいる人であればこの報告書のタイトルが『高齢社会における資産形成・管理』であることから資産形成を如何にするかだけでないことを察するには十分な情報が既に提示されています。

特に冒頭から触れてきた通り情報を適切に扱い自分で考えることのできる人にとっては自発的に証券業界や保険業界の中でも最も少ないコストで備えることができますが、自立した思考を持たない人は誤った制度・商品の組み合わせとより高いコストを支払う事になります。

そしてそれを避けるために情報を適切に扱い、知識と経験と資格…

保険会社・銀行・代理店を含んで約200万人いるとされる保険募集人は多くの人にとって身近かもしれませんが、投資・資産形成について扱っている資産性保険の範囲の中でしか詳しくありません。

証券外務員(IFA)は証券業界の前提としている中で運用商品を販売するプロではありますが、顧客の資産形成や資産運用のプロではありません。
また◯◯証券に所属していない独立系IFAに至っては全国に6000名前後と非常に少ないのが現状です。

FP試験は総合的ライフプランや税制、各種金融商品について広く浅く扱いますが老後資産形成における諸リスクは科目(ジェントロジー)として現時点で未だ扱っていません。

そしてこの人口に対してはかなり少ない、顧客に痛い話も真摯にできるアドバイザーはこの1/10以下でしょう。

彼らの助言を得るには後手を踏むよりは少ない、けれど程々のコストを支払う必要があります。

また双方にとっての信頼関係の構築も欠かせない。(ホウレンソウや相互の価値観の尊重)

①資産形成におけるリスクの見落とし

これは証券業界の立ち位置そのもののに起因するのですが、証券業界は途中で大きな支出…たとえば失業や転職失敗、大きな病気やケガなどによって長期間にわたって働けない状態などまったく想定をしていません。

何故ならそうしたリスクを考える事は証券業界の仕事ではないからです。

映画も世界中で大ヒット！
童心に帰ってワクワクする名作

スーパーマリオブラザーズで言えばスーパースターを取った無敵の状態を想定しているのが証券業界の前提条件です。