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インデックス投資バブル崩壊がやって来る~宗教対立の歴史に学べ!アクティブ・ファンド投資家からの警鐘⑩

私の過去の記事を読まれた方や資産形成セミナーに参加したことがある方はご存知かもしれませんが、私はアクティブ・ファンドをこよなく愛する「アクティブ投資家」です。

アクティブ運用を愛好する人たちの中にも様々な派閥(?)がありますが、私の場合、正確には「インデックス投資信奉者懐疑派」です。

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私はよく誤解されるのですが、私はパッシブ運用という考え方そのものを否定しているわけではありません。

何故そういう現象が起きているかの背景を知っているくせに、それを推奨している投資家たちが大勢いて「インデックス運用*がいいよ」と煽っている事情さえも自分の頭で考えずに「みんながインデックス運用がいいらしいから私もインデックス運用*をしている」投資家が多すぎてヤベェという考え方ですね。(語彙力…)

*正式名称はパッシブ運用(Passive ⇔ Active) アクティブ運用**(積極的な運用)に対して消極的な運用をすることをPassive。

ベンチマーク(BM)としたインデックスに対して受動的であることからインデックス投資、インデックスファンドなどと呼ばれる。

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え?まさかインデックス運用誕生の背景、どんな人が「アクティブ・ファンドは長期運用においてインデックスに及ばない」を煽っているかを知らない…なんて人はインデックスファンドで投資をしている人の中にいませんよね?いませんよね?

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世によく出回っている「アクティブ・ファンドは長期運用においてインデックスに及ばない」前提とする条件が間違っていることを過去何度も記事にしたり、セミナーで語ってきました。


最近は誰かが出した結論だけをかじって自分の意見にしようとする初心者投資家が増えた影響もあって、その状況に益々の危機感を感じています。

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私には2002年から凡そ18年に及ぶ投資信託での運用経験がありますが、特にリーマン・ショックを境に、株式市場は大きな変化の時代に突入したと感じていました。

その中でも特に大きな変化の一つは「市場のインデックス投資への傾倒」です。

そしてこの傾倒が過熱気味、バブルの様相を呈していると感じるようになったのはトランプ大統領の登場やGAFAMの圧倒的な存在感を市場が認識した時期と重なります。

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証券外務員の同業者(IFA)の中には「インデックスに投資をしておけば顧客から文句を言われなくて済む」とインデックス運用を顧客に勧めるようになるIFAの風上にも置けない日和見者まで一人ならず何人も露呈したのもこの時期の出来事だったと思います。

IFAが顧客から購入時手数料や信託報酬(成果報酬)、相談料を支払っていただく価値(Value)というものを彼らは全くもって理解していません。

もし証券外務員が単に顧客と証券会社を結びつける単なる媒介者であるならば、インターネット環境が普及してネット証券が登場した段階でその役割は終わっているのです。

しかしインターネットの普及、ネット証券が誕生しても職業としての付加価値を顧客に提供ができるIFAが日本のみならず欧米を始め世界中に存在するということの意義を考えるならば、「インデックスファンドに投資をしておくだけで良い」とは言いません。

IFAには投資をするべきではない段階の人を投資させないこと、また無知や無理解の投資家たちに本当の資産形成を指導する先駆者としての使命があります。それはコーチングであり、ティーチングであり、総括して言えば「消費者教育」(投資家教育)ということになるでしょう。

そこに価値を見出せない投資家はそもそも我々の顧客ですらなく、ただの情報クレクレ魔人、結論だけ教えろ怪人(乞食)でしかありません。

そしてそんなIFAであるならば淘汰されていく金融機関所属の証券外務員と所属が異なるだけの滅びゆく存在です。黙ってAIやロボアドバイザーにでも相談をした方がマシというものです。


この数年、私はアクティブ運用とインデックス運用(パッシブ運用)は投資哲学(フィロソフィー)や価値観(デザイン)の違いであって、極論を言ってしまえば「宗教の信仰」に近いものだと考えるように至りました。

他人の価値観(宗教)を無理やり変えようなどと野蛮なことは考えていませんが、妄信的いや狂信的にそれを信じている人には「本当にそれ、自分の頭で考えた結論?」と指摘するのも私の役割かなと天邪鬼(こじらせ)っぷりを発揮することを是としています。

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歴史を学ぶ意義~宗教対立と似ているアクティブvsインデックス

最近は歴史や宗教に関する記事などもメルマガで度々書いているのですが、日に増して思うのはこの「アクティブ運用かインデックス運用か」の議論は、「カトリックとプロテスタントの対立構造」によく似ているということです。

同じ投資(キリスト教)という市場(世界)を観ているのに、アクティブ運用は資産運用会社・ファンドマネージャー(教会・司教)が市場(聖書)を解釈して、それをポートフォリオ(教義)に落とし込んで運用してもらう代わりにコストを支払う(寄付を募る)という考え方は、教会・司教(資産運用会社・ファンドマネージャー)が聖書(市場)を解釈して教義(ポートフォリオ)を広めて寄付(コスト)を募る昔ながらの信仰(カトリック)の要素を感じます。

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他方、資産運用会社・ファンドマネージャー(教会・司教)ではなく投資家一人一人が市場(聖書)を読み解き、それを中心に自分でアセットアロケーションを組み、質素倹約(低コスト志向)に勤めるプロテスタントの在り方はインデックス運用に通じるところがあるように思えます。

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歴史的に振り返ると、グーテンベルグの活版印刷が登場したことによって聖書の量産が可能となったことを一つの契機と捉えることが出来ます。

かつては教会や司教しか手にすることが出来なかった超高級品の聖書を、自国語に翻訳されて多くの人々が手にできるようになったことから、「免罪符を買えば罪が贖えるなど聖書の何処にも書かれていない!」など教会への営利主義への批判が過熱して誕生したプロテスタント。


インターネットが登場したことによって情報へのアクセス、ネット証券登場による低コスト化と、個人投資家による市場への参入の増加。

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

歴史は同じことを繰り返すかどうかは分かりませんが、過去に起きた出来事を模倣することは時々あります。

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人間がやることですからね?

人の本質というのはそんなに簡単には変わらないものです。


日本では2021年になっても未だ「インデックス運用」を支持する人たちの声が圧倒的に大きいように思えます。

私にように「インデックス投資バブル」などと警告をしている側の方が遥かに少数派で、異端者のように思われるかもしれません。

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しかし、実はこうした指摘は投資市場においては数年前から徐々に増え始めています。

(有料記事部分に参考資料添付)


インデックス運用誕生とインデックス投資バブルへの警戒感が出てきたとされる根拠

そして2021年に入ってから日経新聞の電子版などでも最近の市場の情報を元に分析して指摘する、警告がようやく登場するようになってきました。

#日経COMEMO #NIKKEI


ここで多くの方に知ってほしいことは、この世の中に絶対など存在しないということです。


そして人類の歴史は過去何度もバブルを生みだし、反省をせずに新しい市場参加者(プレイヤー)の参入という新陳代謝によって何度も同じような失敗の結末を辿って来たという事です。


1970年代に米国でインデックスファンドが発明されて以来、何度かのインデックス投資ブームが起きました。

1971年には米国ウェルス・ファーゴ銀行が年金運用向けの株式インデックスファンドを立ち上げ、1976年にはバンガード社(故ジョン・ボーグル氏)が個人向けのインデックスファンドを販売開始します。

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資産運用会社として発売当初、「ボーグルの愚行」と多くの投資家から揶揄されたこの決断は後に

”ボーグルの発明は、自動車・アルファベット、グーテンベルグの活版印刷、そしてワインとチーズの発明に匹敵する”※

とまでアメリカのMITで教鞭を執っていた経済学者ポール・サミュエルソン(1915-2009)に言わしめるまでになります。

※インターネット登場前の発言。

サミュエルソンは1970年にノーベル経済学賞を受賞。いわゆるノーベル賞に追加して1968年に設立された経済学賞は、シカゴ学派の彼にノーベル賞を提供するために設立されたとまで一説には言われている人物です。


米国では1970年代の米ソ冷戦における宇宙開発競争の課程の中で求められた消費者教育の普及(金融経済教育)と、1978年に確定拠出年金においてインデックスファンドが導入をされたことを契機に、1990年代まで株式市場の好調を受けて購入をする人が増えていきます。

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また米国では日本に先駆けて始まった金融自由化によって証券の手数料自由化の波に乗ったチャールズ・シュワブ証券などがIFAなどの新しいチャネルの開拓を積極的に行ったことで購入時手数料や信託報酬の低廉なインデックスファンドが好まれるようになりました。

また1990年にはカナダのトロント証券取引所で世界初のETFが発売され、インデックスファンドよりも低コスト・株式のように日中売買ができる、指値などができるとして急速に普及をしていきます。


日本における最初のインデックスファンドは1985年に国際投信委託(現:三菱UFJ国際投信)で発売されたインデックスファンドで日経500種平均株価と連動するタイプでした。

その後、住友信託銀行(現:三井住友信託銀行)から年金運用先のファンドとして日経平均やTOPIXに連動するインデックスファンドが登場。現在も同社は業界トップクラスの低コストを誇るeMAXIS Slimシリーズなどが有名ですね。

1995年には日経株価指数300と連動する上場投資信託(ETF)が発売開始されました。

しかし日本でインデックスファンドが発売された当時、日本人の投資の窓口は対面証券会社が圧倒的に主流の時代でした。

そして手数料が安いのインデックスファンドを顧客に提案する証券外務員は皆無に等しいという状況が続き、一部の人が知るだけの存在という状況でした。

日本と米国においてインデックスファンドの普及に大きな差を与えたとされているのがバートン・マルキール著『ウォール街のランダム・ウォーカー』です。

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米国では1973年に出版されたこの書籍が日本で翻訳されて発売開始されたのは第五版(1999年)になってからでした。

日本では1990年代後期の金融自由化とインターネットの普及。そして2000年代に入ってネット証券が登場したことによって、証券外務員を介さずに株式の売買を低コストで個人投資家が急速に増えていきます。

そして日本でのインデックス投資ブームが到来。

しかし世界中の多くの個人投資家はドットコムバブル崩壊、エンロンショック、BNPパリバショック、サブプライムローンショック、リーマン・ショック、AIGショック(2007~2008)と連鎖的に発生した世界同時金融危機が投資家たちを襲いました。

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アメリカでは自己判断で「米国株式やインデックスファンドに投資をしておけば資産は増える」とタカをくくっていた個人投資家たちが軒並み淘汰され、IFAによるアドバイスで損失を免れた多くの投資家たちの口コミと評判から個人投資家がアドバイザーにコストを支払って運用を行うスタイルが定着を始めます。

一方で金融危機により下がった株価から始めた新たな個人投資家たちは回復局面の右肩上がりの相場だけを享受し、資産を増やす一方で大きな下落とそこからの回避の術、資産形成とは何かを学ぶ機会を得ることがないまま凡そ12年の歳月をこの世の春のごとく謳歌しました。


世界の株式市場が米国FRBの量的緩和によってリーマンショックから元の水準に回復しつつある頃になって日本でも2010年12月に日銀(白川方明総裁2008-2013)が金融緩和の一環でETF買いを開始します。

※当時の対象はTOPIXと日経平均。予算は4500億円。

この当初のETF買いは2011年12月末で終わりを迎えましたが、それを引き継いだのが2012年10月に与党に返り咲いた自民党と第二次安倍政権でした。

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2013年3月には黒田東彦氏が日銀総裁となり、2013年9月にニューヨーク証券取引所で記者会見を行い「Buy my Abenomics」と宣言し、アベノミクスが始まりました。

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安倍政権と日銀はインフレ目標2%まで引き上げるとし、量的・質的緩和(異次元緩和、黒田バズーカ)の拡大を掲げます。

ETF保有残高を年間1兆円増加させ、2014年10月*にはJ-REITを追加し、年間買い入れ額を3兆円へ拡充、2016年7月には年間買い入れ額が6兆円に増額を続けました。

*2014年11月からJPX日経400を購入対象に追加。


またこれを下支えするように年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が公的年金の預かり資産約160兆円を用いて投資を行っています。

リーマンショックからの回復局面と重なり、インデックス投資への資金流入は世界的に加速しました。

しかしこの株価の回復や上昇は既に冒頭で触れたとおり、リーマンショック以前の新陳代謝を繰り返しながら市場が成長してきたものと様相が異なります。


2014年10月にGPIFが見直しをした基本ポートフォリオでは国内外の株式比率を合計50%とし、2013年3月末には国内債券62%から大転換をしました。

現在ではパッシブ運用の比率は過半数を超えている点にも注視をする必要があります。

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そしてこの時期に重ねてNISA(2014)やiDeCo(2017)、つみたてNISA(2018)などの税制優遇制度の登場によって近年の日本では個人投資家の個人マネーが株式市場に流入するようになりました。

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ご存知の通り金融庁が主導したこれらの政策のうちiDeCoやつみたてNISAにおいては多くのセミナーやブロガー、YouTuberなどはインデックスファンドを推奨しました。

インデックスファンドというものが本当はどういう仕組みか、正しい理解をしないままに。

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こうした背景の中で、猫も杓子もと言わんばかりに日本ではインデックス投資が盛んに行われてきました。

結果、日本は世界の中でも突出してインデックス運用(パッシブ運用)に傾倒(約73%)してしまいました。

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政府・日銀・GPIF三位一体で行っている所に個人マネーがNISA・つみたてNISA・iDeCoと税制優遇制度と共にパッシブ運用に偏って投じられているわけですからはっきり言って異常です。

こんなに偏った投資を嬉々としている国は日本の他にありません(笑)


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何故、投資大国であるアメリカや欧州はインデックス(パッシブ)運用の割合が日本と比べて20%以上も低いのか考えたことがあるでしょうか?

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日本人の投資家の大部分はインデックス投資とは何かの根源的な理解をしていないのですから、まさに思考停止。

大本営発表と揶揄されても仕方ないでしょう。

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世界はアクティブとインデックスのバランスを取りながら成長している

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また世界の投資マネー全体におけるアクティブ運用とパッシブ運用の比率をみても、この数年みるみる傾倒してきたことによって資金の流動性が低下し、本来の健全な投資市場が損なわれつつあること。

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