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認知言語学のテキスト

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認知言語学を研究する大学院生が、認知言語学の最近の研究をまとめたマガジンです。1ヶ月に20回くらい更新します。言語学に興味がある人なら、誰でも楽しめる内容になっています。認知言語…
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2024年4月の記事一覧

英語教育に認知言語学の知見を活かすことは、どうして大事なのか?ー文法と語彙から考えるー

1. はじめに外国語教育において、言語学の研究成果は非常に重要な基盤となります。しかし、最近の言語学、特に認知言語学の発展を知らない人の中には、「言語学は語学教育には役立たない」という誤った固定観念を持つ人がいます。そのような誤解が広まると、外国語教育の基本的な土台が揺らぐことになりかねません。本論では、認知言語学的アプローチが外国語教育のさまざまな側面において重要であることを示していきます。 2. 外国語習得の困難さと言語学の重要性言語を習得するためには、綿密な計画と多大

博論日記(3):多義語って結局は何なのだろうか?

はじめにー多義性ってなんだろう?ー多義性というのを説明するには、ある語が多義かどうかを説明しても不毛であるということに気づいた。今日も、ツイートをベースにして自分の研究を考えていきたい。今日も、結局多義って何?と考えて日が暮れてしまった。 コミュニケーションは文字という名の「コード」を伝えるのではないことはもう認知言語学なら明らかだろう。特に、フィルモアのフレーム意味論の台頭、また、コーパスの出現によって、それが明らかになっている。 でも、多義を実験する以上、考察する以上

課題山積みな博士論文の研究に関して、あれやこれやと言って良いですか?(その2『意味のスタンスについて』)

はじめに意味の意味とは?という哲学的な問題について答えることはほぼ不可能である。意味の意味について答えても、それは意味の「意味」であり、意味について答えを出すことはできない。今回は博士論文で課題になっている「意味のスタンス」問題について考えてみたい。 2種類の多義語研究これまでに多義語の研究では、多義性をどう捉えるかという研究が幅広く行われてきた。多義語の研究には、ある特定の単語の用例を集めて、それが多義性があると証明したもの、そして、多義性について包括した理論的なものを求