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【離職率を下げるのに有効だが日系企業がベトナムでほぼ実施しない施策】

【離職率を下げるのに有効だが日系企業がベトナムでほぼ実施しない施策】

ベトナム人事労務コンサルティングのアジアゲートベトナム代表の豊田英司です

ベトナムにおいて「離職率が高いんですよー」ということを嘆かれる日系企業は多いと思います。

「どうしたら、いいですか?」

といわれるので、私が聞くのが

「では、逆に、なぜ、日本人がなかなか会社を辞めないと思いますか?」

この時に多くの方が口にするのが「愛社精神」ですが、これはかなりの確率で間違っていると思います。

と、いいますのも、仕事への熱意を図る「エンゲージメント調査」を世界各国で行うと、ほとんどにおいて、日本はダントツの最下位、というのが定番になっています。

世界最低の従業員エンゲージメント ぶら下がり社員、7割 成長スピードに失望


まぁ、1つ、2つの調査なら、偶然、ということもあり得るでしょうが、これだけの調査で揃いも揃って日本が最下位レベル、ということは、少なくとも、「ベトナム人に誇れるほど愛社精神が高い」という仮説は相当に無理があるという結論にはご納得いただけるのではないかと思います。

一方で、日本人の勤続年数については世界でもトップレベルにあるのも各種調査で出ています。

出所:労働政策研究・研修機構(2019)「データブック国際労働比較2019」

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2019/documents/Databook2019.pdf


要するに、日本人全体のイメージは

「仕事に対するヤル気は低いのに、会社は辞めない」

とならざるを得ないと思います。

で、この原因について、偉い学者やコンサルさんが「年功序列文化ガー!」とか「挑戦しない文化ガー!」とか色々いってますが、私は、それは仮にあったとしても副次的な要素だと思ってます。

客観的に見れば、どう考えても一番大きな影響は「勤続20年くらいからグッと上がる日本企業の退職金の仕組み」、これだと思います。

日本の退職金は一般的に言えば10年程度の勤続ではほとんど雀の涙、みたいなもんです。まぁ、最近は多少、前倒しになっていますが。

退職金の相場はどれくらい?大企業・中小企業、業種、勤続年数による違い
(りそなG ウェブサイトよろ)


20年勤続というと、大卒でいうと40代半ばくらいになりますが、こうなると、転職できる旬の時期は過ぎていますし、定年まで、ちょうど残り半分、というところなので、「もったいない」という意識も出るでしょう。

そうなったら、「仕事が面白くない」「会社がつまらない」と思ったって、住宅ローンに車のローン、教育費や老後の資金、さらには転職先で見ず知らずの仲間と1から人間関係を構築する大変さ、などを考えれば、転職が頭をよぎっても、

「まぁ、そんな子供じみたこと考えないで、グッと堪えて宮仕え」

となるのは当然でしょう。

この「離職率を下げる最強の仕組み」である「企業による、20年くらい勤めてからグッと上がる退職金」の制度をベトナムで導入すれば、かなりの確率で目先の離職率は下がると思います。

ただ、それが「優秀で、やる気のある従業員がたくさん残る」かどうかは、この理屈で言えばわかりませんが。

特にベトナムのように

「経済が好調で転職先が豊富にある」
「給与は転職によって増えることが多い」
「転職することにマイナスのイメージが少ない」
「友人同士で給与も含めた情報を頻繁に共有する」

ような社会ですと、正当な評価を受けられていない、と思えば、できる人はどんどん転職していってしまいますので、中途半端な退職金制度を入れてしまうと、「それ狙いのやる気のない」人ばかりが残り、「その程度の額なら、転職して増える給与の方がいい」という人は結局辞めてしまい、成果の低い人ばかりが自社に残るリスクもありますので。

まぁ、結局は、離職率を下げる王道は

一人一人の従業員が

・自分が望む仕事をしていて
・そのプロセスや成果をきちんと会社が見てくれている安心感があり
・成果に応じた報酬額に納得し
・その会社で勤続することが将来の自分の人生にプラスだと信じられる

こういう状態を目指して、報酬設計、コミュニケーション施策、採用施策を常に状況に応じて感んが得ていくしかない、ということなのかな、と思います。

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(アジアゲートベトナム代表  豊田英司 )


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