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国プロにおける知財の管理(日本版バイ・ドール)第2回 〜大学発ベンチャーのための国プロ講座〜

こんにちは!

前回の記事で、「日本版バイ・ドール制度」とその手続きについてお話しをさせていただきましたが、今回は、その「日本版バイ・ドール制度」を適用する際に留意するポイントについて、お話ししていきたいと思います。

※なお、本日のお話は、国プロの中でも「委託事業」にフォーカスした内容となっております。「補助金・補助事業」の話題ではありませんので、その点ご注意ください。


1.日本版バイ・ドール制度を適用する際に留意するポイント

早速ですが、日本版バイ・ドール制度を適用する際に留意するポイントについて、お話しをしていきたいと思います。

(1)職務発明規程の整備

まず、委託事業を開始する前に留意しておきたいポイントとして、自社に職務発明規程が整備されているかという点です。

職務発明とは、自社の従業員が、業務中に発明等を生み出した場合、会社に一定の権利を与えるという制度です。
この一定の権利とは、職務発明規程等を整備していない場合、当該発明を実施する権利(通常実施権)になりますが、職務発明規程が整備されている場合、当該発明を出願する権利(特許を受ける権利)になります。

つまり、職務発明規程を整備することによって、会社は、従業員が業務中に生み出した発明の権利を自動的に取得することができます。
(なお、職務発明規程を整備していない場合は、特許を受ける権利は従業員に帰属します。)

ここで、職務発明規程と日本版バイ・ドール制度との関連性はどういったところにあるのでしょうか。

結論的からいうと、職務発明規程が整備されていないと、日本版バイ・ドール制度を適用することができず、委託業務中に発生した発明等は国の帰属になってしまう可能性があります!!

どういうことかと言うと、業務委託契約は国と受託事業者との間で締結されるものであり、日本版バイ・ドール制度も、受託事業者が取得した知的財産について、国に帰属させずに、受託事業者の帰属にするというものです。

つまり、日本版バイ・ドール制度は、あくまで受託事業者が知的財産を取得している場合を想定しており、従業員個人に帰属している知的財産までは想定をしておりません。従って、従業員個人に帰属した知的財産は日本版バイ・ドール制度の適用を受けることができない可能性があるということです。

このように、職務発明規程を整備しないことによって、リスクが生じる場合があるため、委託事業を開始する前に、職務発明規程が整備されいるかを確認することをオススメします。

(2)バックグランドIPの管理

次に、委託事業を開始する際に留意しておきたいポイントとして、委託事業に関連する発明を委託事業開始前に保有しているかという点です。

国(省庁や地方自治体等)は、委託事業を実施できる能力を有している事業者に研究開発等を委託するため、受託事業者は、既に委託事業に関連する研究開発を実施している場合がほとんどです。

この場合に発生してくる問題としては、ある発明が、委託事業開始前に発明したのか、委託事業実施中に発明したのかが曖昧になってしまうという問題です。

委託事業実施中にした発明(これを「フォアグランドIP」といいます。)は、日本版バイ・ドール制度の適用を受けないと、自社の権利とならないため、様々な手続きを必要とします。一方で、委託事業開始前にした発明(これを「バックグランドIP」といいます。)は、当然のことながら、自社の権利となるため、特段手続き等が不要になります。

そのため、自社はバックグランドIPだと思っていた発明が、後々、フォアグランドIPであると判明した場合、諸々の手続きを行わなかったことに伴い、当該発明の権利が国の帰属になってしまう恐れがあります。

このような事態を防ぐために、委託事業開始前に当該委託事業に関連する発明等がある場合は、封印申請手続きを行うことをオススメします。

封印申請手続きとは、委託事業を開始する時点において、受託事業者が保有している知的財産を文書化し、委託元と委託先の両担当者が立ち合いのうえ、当該文書を封筒等に封印する手続きです。この手続きを行うことにより、バックグランドIPが明確になり、フォアグランドIPとバックグランドIPが混同するという事態を防ぐことが可能になります。

(3)特許出願の願書の記載

次に、特許を出願する際に留意しておきたいポイントとして、特許出願の願書に日本版バイドール適用の旨の記載があるかという点です。

日本版バイ・ドール制度の手続きは、前回の記事で記載させていただきましたが、実は、特許を出願する際にも注意しなければならない点があります。

それは、日本版バイ・ドール制度の適用を受ける発明を出願する場合は、日本版バイ・ドール制度を受ける旨を特許出願の願書に記載しなければならないという点です。これは、特許法施行規則第23条第6項で定められている手続きになります。

特許事務所などに特許出願依頼をした際に、当該発明が日本版バイ・ドール制度の適用を受ける発明であることを特許事務所側に伝えないと、願書の記載に漏れが生じる可能性があるため、特許を出願する際は、この点を注意する必要があります。

2.最後に

いかがだったでしょうか。本日は、日本版バイ・ドール制度を適用する際の留意点についてお話ししてきました。日本版バイ・ドール制度は手続きが多いものの、メリットが多い制度でもあります。日本版バイ・ドール制度の手続きをしっかりと理解し、委託事業で取得した知的財産を効率よく、利活用していただければと思います。

また、国プロの知的財産についてどうしたら良いかわからないなどといったお困りごとがあれば、ぜひ弊社までご連絡ください。国プロに関する豊富な知見を持った担当者が皆様のお困りごとをサポートいたします。
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ここまで、読んでいただき、有難うございました。
今後も、〜大学初ベンチャーのための国プロ講座〜として、様々な角度からスタートアップ×国プロの説明をしていければと思いますので、次回もぜひ読んでみてください。




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