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シャビアロンソのレヴァークーゼンについて

※このnoteを書いている最中にシャビアロンソのレヴァークーゼン残留が報道されました。
シャビアロンソさんとレヴァークーゼンさんの今後のご活躍を心から応援しています。
(元のタイトルは「クロップの後任候補のシャビアロンソについて part3」です)

part1ではブライトンのロベルトデゼルビの戦術について紹介しました。

そして前回のpart2ではスポルティングのルベンアモリムの戦術について紹介しました。

まだ読んでいない方は是非読んでみて下さい!!!!!

今現在サッカー界の台風の目となっているレヴァークーゼンで指揮を取るシャビアロンソ
現在は公式戦無敗記録を「39」にまでのばしています。

(本当はクロップの後任候補に挙がっていたのでシャビアロンソの戦術について紹介する予定でした。就任が決まればその監督+リバプールについてまとめようかなと思っています。)

今回はシャビアロンソについて紹介します。

※この3人の監督のチームを線で追えてるわけでは無いため怪我人やマネジメントなどの影響などを考慮できてない場合があるのでご了承ください。
その為該当クラブのファンの方には変な思いをさせるかもしれません。

シャビアロンソ

非保持  保持
523→325

※レヴァークーゼン赤、相手が黒

守備

前からの守備

シャビアロンソの前からのプレスはまず523の1トップが少し下がり目の位置を取り相手の中盤を背中で消し残りの2シャドーがSBへのパスコースを切りながらCBへプレスをかけ中へ誘導します。
そうすると相手のCBはGKに戻す以外、大きく蹴り出すか、中盤へパスを入れるしかなくなってしまいます。
もし中盤へパスがくればボランチの選手やCBの選手が出ていき潰す、大きく蹴られれば身体能力の高いCBが弾き返すというような感じです。
そして中央でボールを奪えるとサイドで奪うよりもゴールまで距離が短く最短距離でカウンターを仕掛けることができフィニッシュまでにかかる時間も手数の少なくて済みます。(図1)

もし外切りをしたシャドーの選手の裏(SBの選手)を使われた場合はWBがバックが出てきて後ろの選手が連動してスライドします。

図1

バイエルン戦の1分15秒のシーンも得点には繋がりませんでしたが相手に中に出させたところを刈り取ってカウンターに繋げました。


相手のSBに外切りのプレスをかけもし後ろへバックパスをすれば、それに合わせて全体で出ていきます。

クロップリヴァプールがしていたマネとサラーがSBへのパスコースを切って中央へ誘導してそこでヘンダーソンとワイナルドゥム、ファビーニョが刈り取るという形の守備の仕方に似ています。

他には同じく523のところから1トップの選手と2ボランチが中へのパスコースを切りシャドーの選手がどちらかのサイドに誘導して、そのボールサイドサイドのWB選手が出ていき同サイド圧縮(ボールサイドにフリーな選手をつくらない)をします。(図2)
WBが出ていけば後ろのDFラインがしっかりスライドしています。

図2
図2

試合の流れや相手によってもプレスの形を変えることもあります。
例えば相手が424(4231)の様な形でビルドアップを始めると532のような形でプレスをかけます。
2トップが相手のCBをみて相手の2ボランチを3のうちの2枚で後ろからマークをします。
そしてサイドにいけばボールサイドのWBが出ていき後ろは連動してスライドし同サイド圧縮するという流れです。(図3)

図3
図3

仮にWBが出ていけなければボランチの選手がSBにプレスにいっていました。(図4)

図4

他には相手が3バックだと、中央を閉めてステイしたところから相手WBに出させた所でWBがそこへ出ていき後ろが連動して、バックパスのコースとボールサイドの選手を埋めて嵌めに行ったり(図5)

図5
図5

引いてブロックを組んだところから相手のCB、WBのバックパスに合わせて出ていくなどがありました(図6)。

図6

そしてWBはサイドに出された時を意識して両サイドが最終ラインよりも高めの位置にいることもあります。(図7)
そうすることによって奪った時にすぐにWBがカウンターや攻撃に参加する事ができます。
ボールがサイドに行けば逆のWBが3バックのところまで戻っていました。

図7

この様に相手によって守備のやり方を変えれたり、アモリムやデゼルビ同様に嵌めに行く時はボールサイドにフリーな選手ををつくらないようにしっかり連動しスライドする意識が高い事がわかります。
そしてちゃんとWBが出ていけばしっかり後ろが連動しているところも良かったですね。
プレス回避された時もサボっている選手が少なく全員がしっかり戻っていました。

撤退守備

引いた時は541のような形でコンパクトな守備をします。
ボールに合わせてスライドするやり方です。(図1)
コンパクトな陣形を保つ為1人ぬかれてもすぐにカバーに入る事ができます。

図1

そして相手は近くの選択肢を持ちにくく、もしコンパクトな陣形の中へパスが通れば囲い込んで奪おうとするという流れです。(図2)

図2

デフェンシブサードでは541の様な形で守備をするのですが、ミドルゾーンでは523の様な形で引いてブロックを作ります。(図3)
(スポルティングのアモリム監督の守備もこの様な感じでしたね)
その為2の脇にもしパスが通ればCBが出ていき潰します。

図3

そして相手がバックパスをすれば全体を押し上げるという感じです。
その時も全体が間延びしない様に後ろも連動してラインを上げています。(図4)

図4

相手FWの影響でCBがWBの後ろへスライド出来ずにWBのスペースを使われそうになれば中盤の選手がそのスペースを埋めにいっていました。(図5)

図5


逆に振られた時もしっかり全体でスライドしていた印象です。

フライブルク戦の堂安の得点の場面(ハイライト0分55秒)です。
レヴァークーゼンの選手も堂安について行っていたのですが(堂安に遅れをとった)上手くCBが出ていった時に出来たスペースを使われ失点はしてしまいました。

しかし、その前の場面で逆に振られても素早くスライドして対応をしていることがわかります。


引いたときの守備でも横、縦へのスライドをしっかり全体が連動していた為コンパクトな陣形を保つことが出来ていたと思います。

気になった点

WBのスライド

そんな高頻度で起こることではありませんがWBの選手のスライドや戻りが遅かったような気がします。
WBには攻撃的なタスクを追わせたいのか守備が苦手な選手なのでクロス対応やボールが逆サイドにある時のスライドの遅さが気になりました。

WBが前から守備の時に元々高い位置を取っているのですが、ボールとは逆サイドのWBは素早く戻った方が良いと思います。

フランクフルト戦のハイライトの5分2秒
ボールとは逆サイドのWBの選手の絞りがゆるいです。


シュツットガルト戦のハイライト2分30秒
カウンターの時のボールとは逆サイドのWBの戻り、3分6秒のシュツットガルトの1点目の時のボールとは逆サイドのWBの戻りが遅いです。


これはバイエルン戦のハイライト2分32秒のシーン
逆サイドのWBの戻りがゆるく、そこにはクロスが出ませんでしたがもし通っていたら失点していたかもしれません。

この様にWBに攻撃的な選手を起用する為、それによっておこる守備面での問題が出てきそうです。
ですがレヴァークーゼンにはWBの戻りが遅くても残りの3バックで守れる質があります。

攻撃

シャビアロンソレヴァークーゼンはボール保持者の周りを整えてパスコースが多くなるようにしていた印象です。
ボール保持の時は325のような形でビルドアップをします。

シャビアロンソ本人もリージョ同様「フォーメーションなんか電話番号みたいなものだ」って言っていましたね。

「大切なのは利点を生み出せるポジションを取ることであり、それによって相手コートでより多くのパスを達成すればボールを失った直後にすぐにプレスをかけれるベストなポジショニングを確保する事が出来る。もし味方同士が遠い距離感で相手コートに速すぎる攻撃をしてしまうと、選手間の距離が遠くなりライン間も離れてしまいます。つまり、ボールを失った後の適切なプレスが実行できなくなります。」
最後のほうはスペイン人が口を揃えて言う「同じ車両で進む」ってやつですね。

嵌めどころが見つけにくいビルドアップ

3バックでビルドアップを行う際距離感が良く左右に揺さぶりやすく、サイドの低い位置でポジションを取る事も少なく、2ボランチも相手の背後にポジションを取り、WBの選手もあまり高い位置を取りすぎないのでレヴァークーゼンは相手と後出しジャンケン出来るような構造でサッカーをしています。
その為相手からすると嵌めどころが見つけずらいです。

そして3バックの両脇の選手は逆サイドにボールがある時には自分の前にスペースがあれば積極的に高い位置をとりにいっていました。
これによって逆からボールがきた時にプレースピードを落とさずに済みます。

パスコースを多くつくる

常にボールホルダーの近くの相手の背中にポジションを味方の選手が取ってくれる為パスコースが多くプレーの選択肢を多く持つことが出来ます。(図1)

図1

そしてもし手前のパスコースを埋められれば裏のスペースを使うという感じです。(図2)

図2

その為裏を狙うことで相手のラインも下がりライン間のスペースも空きやすくなるという感じです。
レヴァークーゼンは足元足元になりすぎずしっかり裏抜けもしている印象です。
ボールホルダーの近くに選手が多くいる分そこに相手が寄ってくれば逆サイドには広大なスペースが出来るのでそのスペースを使ったりしていましたし、ボールを失えば素早くプレスをかけることが出来ていました。

もちろん相手がボールサイドを埋めに多く選手がくればそれにあわせてポジションをとりますし(そのボールサイドのスペースを消してくるため多くの相手選手が集まるので、その選択達の背中のポジションをとるため多くの味方がボールサイドに寄ってくる)、相手がブロックを組みボールサイドのスペースを埋めてこないのであればそれに合わせたポジションをとります(相手の背中をとる選手が少なくて済むのでそれ以外は迂回の為のポジションをとったり逆サイドのライン間や裏のスペースを狙う)

これはビルドアップの時も同様にCBの選手がボールを持った時にボランチの選手が相手の背後にポジションをとります。(図3)
ボランチ2枚が相手の背中にいるので、片方のボランチがパスを受けるともう片方のボランチにレイオフの様な形でパスをして前を向かせる事もできます

図3

もし相手がボランチの選手に受けられるのを嫌がり中を閉じてくれば外のパスコースやライン間にスペースが出来ます。(図4)

図4

このハイライトの2分4秒のシーン
2ボランチが相手のFWの背中でパスを受けバイエルンの中盤の選手を釣りだしたことによってボールを前進することが出来ました。

ずっと背後にいるって感じでもなくボランチの選手は3バックの距離が空いた時等には降りてきたりしていました。(図5)
ですが、アモリムのスポルティングの様に2ボランチの一角の選手がライン間で受けるという事はあまりなかったです。
あくまで2ボランチは相手FWの背中か、バックラインに加わるって感じですね。

偶にボランチが自由にポジションを取りすぎてそこ別に降りなくて良いよ(CBの距離が遠くなって無いから降りる必要無いよ)、立たなくて良いよ(クロースロールするんだけどサイドに寄りすぎているし、別にCB→WBに距離があるわけでは無いよ)ってことはありましたね。

図5

ボランチ以外もシャドーの選手も相手のボランチの背後に立つので、CBも出ていきずらくパスがもらえる際にフリーになりやすいです。(図6)
もしCBが出てくれば先程(図2)の様に裏のスペースが空きます。

図6

特にヴィルツ選手はこの瞬間的にパスコースを作る動きがとても巧かったですね。その上ほぼボールロストしないっていうね。(フットサルみたいに縦にフェイク入れてマーク外したりとかあもありましたね)

この様にレヴァークーゼンは相手の背後を追うような形でポジションをとることによってボールホルダーに多くの選択肢をもたせることが出来、相手に選択肢を絞らせません。

スペースがどこにあるのかを意識している

レヴァークーゼンの選手達はどこにスペースが出来ているのかを意識しているような感じがします。
その為味方が作ったスペースをしっかり利用しようとしている印象です。

例えば、WBの選手が中に絞り相手のSHを引き付けて出来たスペースをシャドーの選手がサイドに流れて使います。(図1)

図1

そしてその流れたシャドーの選手に相手のSBが釣り出されればその裏のスペースを中に絞ったWBやCFの選手が抜けるという感じです。(図2)

図2

この様にどこにスペースがあるのかを全員が意識してポジションを取っていると思います。

2,3人目の動きの意識

個人的にレヴァークーゼンは2,3人目の動きの意識が高いと思っています。
例えばこんな感じ

その為ボールをもらう前の動きや、パスをした後のポジションの取り直しの意識が高く狭いスペースでもコンビネーションで崩したりワンタッチで逆サイドまで持っていくプレー等がとてもうまいです。

このハイライト2分17秒の様に1人1人の技術の高さは勿論のこと、ポジションの取り直しや囮になる動きの意識も高いです。

このハイライトの5分10秒のシーンもCBが中盤の選手とワンツーをしようとパスを出した時にはWBの選手が裏へボールを呼び込んでいます。

この様にレヴァークーゼンの選手は2,3人目の動きの意識が高く相手はマークに付きづらいです。

「ボックス占拠」

※ここからはほぼ著書「ナーゲルスマン流52の原則」を参考にしています。

相手をファイナルサードまで押し込むとCBが距離を詰めて相手を囲うように縦横にコンパクトな陣形を取っていました。(図1)
そうすることによってボールを失った時に間延びしていないためすぐにプレスをかけることが出来ます。

この様にレヴァークーゼンはネガトラの時の強度がすごく高いのは選手間の距離が近く陣形が整っているのが要因だとおもっています。

図1

この戦術を採用している現ドイツ代表監督のナーゲルスマンはこれを「ボックス占拠(Boxbesetzung)」と呼んでいるらしいです。著書「ナーゲルスマン流52の原則」よりナーゲルスマンはこの「ボックス占拠」についてこの様に語っています。

「たくさんの選手がペナルティエリア内にいたら、もし最初のシュートが止められてもリバウンドやセカンドボールが自分達のところにくる可能性高い。また、ペナルティエリア内で相手はマンマークで守ろうとするので、こちらの人数が多ければ誰かがフリーになる確率も高まる。すなわち得点のチャンスが上がる」

「もしたくさんの自分たちの選手が相手のペナルティエリア内に入ったら、多くの敵をそこにピン留めできる。危険なカウンターを受ける可能性を大幅に減らすことができる」

著書「ナーゲルスマン流52の原則」

ナーゲルスマンのこの発言からもわかるようにボックス内に相手を閉じ込めることは攻撃面だけでなく守備面(ネガトラ)のところでもメリットがあることがわかります。

ナーゲルスマンはこのバルセロナ戦の得点はそれによってうまれたと言っています(ハイライトの0分20秒)

この「ボックス占拠」に必要不可欠なのが「最小限の幅」と「ジョーカー」になってきます。

「最小限の幅」

最小限の幅ですがナーゲルスマンはこの戦術についてこの様にかたっています。

”オランダスクール”の考えに従ってワイドにアタッカーを配置すると、しばしば次のような問題に直面する。そもそも遠くてパスが出せない。もし出せたとしてもボールが到達するまでに一定の時間がかかり、相手に陣形を整えるチャンスを与える。ボールを失った時に、ゲーゲンプレッシングに参加出来ない。
だから私はピッチを縮め、ゴール近くにオーバーロード状態を作りたいんだ。サッカーのルールでゴールはピッチの中央にあると決められているのだから、そこで強い存在感を発揮したいんだ。」

著書「ナーゲルスマン流52の原則」より

要するにファイナルサードではサイドの選手がただ幅を取らず(サイドラインも踏む)に相手のSBの立ち位置に合わせて幅を取り、相手SBに届きそうな位置に立ちます。(中央へ絞っていればそれに合わせて絞るし、外にいるのならそれに合わせて外に幅を取る)
(図2)

図2

そうすることによって、SBは警戒を強いられ、DFラインにズレが生じる上に味方のシュートのこぼれや、ボールを失った時にすぐにプレスに行くことができるという感じです。

ナーゲルスマンのライプツィヒの試合でハイライト3分15秒の得点シーンを見てみるとサイドラインに幅いっぱいに広がっている選手がいませんよね。(相手SBに合わせたポジションを取っている)

ですがそれはファイナルサードでの話であって、ビルドアップの局面ではしっかり幅を取っています。

「WBがジョーカーになる」

「ジョーカー(Joker)」とはナーゲルスマンが決めたアタッキンギフェーズにおいて、ウイングバックがゴール前に侵入する原則です。
ナーゲルスマンはWBの選手の事を「ジョーカー」と呼んでいるらしいです。

ジョーカーとはどういうものなのかというと

WBはライン際で縦方向の突破を試みたり、サイドからのクロスを上げたりするのが通常だが「ジョーカー」の役割は違う。
ペナルティボックスの角付近を主戦場とし、場合によってはWGの選手よりも内側へ入って行く。神出鬼没で、相手としては非常にマークにつきづらい。ゴール前で何でもなれるという点ですまさに「ジョーカー」だ

著書「ナーゲルスマン流52の原則」より

これはWB以外にもSBにも適応されることがあります。

これらの戦術を活用した「狭いポジショナルプレー」のメリットは

①味方が近くにいるのでパススピードを上げられる
②意図的にサイドを空けてそこを利用できる
③味方が中央に集まっているのでゲーゲンプレッシングをかけやすい
④ボックス占拠でこぼれ球を拾いやすい
⑤カウンターを防ぎやすい

著書「ナーゲルスマン流52の原則」より

ナーゲルスマンはこれらから生まれる状況を「コントロールされたカオス(相手を意図的に混乱させること)」と呼んでいます。

これら「ボックス占拠」「最小限の幅」「WBがジョーカーになる」といったような3つのナーゲルスマンの戦術をシャビアロンソのレヴァークーゼンも採用しています。

その為似たような状況がレヴァークーゼンでも見られます。

ハイライトの0分50秒のシーン

ボックス占拠によってこぼれ球を拾いシュートに繋げています。
そしてWBのフリンポンは最小限の幅を意識したポジションを取っています。

ハイライト0分45秒のシーン

WBのスタニッチがジョーカーとなりゴール前に飛び出したとこによって先制点がうまれました

ハイライト5分35秒のシーン

ボックス占拠によって引き起こされたカオスによってレヴァークーゼンはPKを獲得します
この時も逆のWBのグリマルドはペナルティアーク付近まで絞ってきています

ハイライト2分45秒のシーン

グリマルドがジョーカーとしてゴールに飛び出し、最小限の幅によってゴール前付近に選手が多くこぼれ球を拾えました。
そして「スペースがどこにあるかを意識している」というところで説明したように、グリマルドが絞って出来たスペースにヴィルツが流れてきて、そのヴィルツが相手を引き付けたことによって出来たスペースにグリマルドが飛び出しています。

ハイライト1分25秒のシーン

最小限の幅で受けたアドリ(21)が運んでいき、ジョーカーとなったフリンポンがゴール前に飛び出して得点しています。

そして同じハイライトの2分35秒

最小限の幅でうけたWBのフリンポンが仕掛けてシュートまで持ち込みます。

こんな感じでシャビアロンソでも似たような状況が見られます。
これがレヴァークーゼンのWBの選手(グリマルドとフリンポン)がG/Aの数値が凄い要因だと思っています。
※グリマルド:9ゴール11アシスト
 フリンポン:8ゴール7アシスト

ナーゲルスマンとシャビアロンソの違いと言えば、その戦術にこだわりすぎないといったところでしょうか。
上手く行かなければ単純に張ってクロスを大外からバンバン上げるみたいな感じな事もシャビアロンソのレヴァークーゼンはします。

GKビルドアップ

GKビルドアップは基本的にこの様な形でします。

そこからいじって、左のWBがボランチに入り、右のWBは高い位置をとり、ボランチがサイドの位置まで移動するみたいなことはありました。

アモリムのスポルティングの様に3バックの中央の選手がボランチになるという事はしていませんでした。

2ボランチの選手は相手の背中を追うようにポジションを取っていました。
そしてその2ボランチが相手の中盤を釣り出して作ったスペースをシャドーが利用するということもありました。
前線はコンパクトになったり、片方のサイドに寄ったりしてロングボールの回収率を高めていました。

無理にショートパスを繋がずに裏のスペースができればそこを使っていました。

ハイライト1分55秒のシーンは相手の最終ラインと釣りだした中盤の間にぽっかり空いたスペースを利用して得点に繋げています。
そして、ロングボールを使った後の周りの選手達の上がりもはやいです。


気になった点

3CBのポジショニングンとWB

たまにですが3バックのポジショニングが悪いときがあります。
ボールがサイドにある時に3バックが絞り過ぎていてサイドまでが遠かったりします。

でも、そういう時はシャドーかボランチの選手がWBまでのパスを繋いでいることもありました。

そしてWBの選手が(特にグリマルド)ビルドアップの時に中に入りすぎていて片方のサイドの幅を取っている選手がいないなんていう状況があります。

WBが絞って出来たスペースに同サイドのCBが上がって幅を取るみたいなことはありましたね。

ハイライト1分41秒のシーン
WBのグリマルドも絞ってきてCBも距離感が近すぎてボールサイドによりすぎてしまっています。

もしかしたらWBが絞ってきた時はCBもそれに合わせて絞ってチーム全体をコンパクトにしているのかもしれません。

無理にコンビネーションしようとするときがある

相手にしっかり引かれると揺さぶるべきところを揺さぶらずに無理に縦にパスをつけてコンビネーションで崩そうとする時があります。
揺さぶれている時の方が多い感じがしますが、先程の3バックやWBの立ち位置がおかしい時に多かった気がします。
でも選手間の距離感も近くパスコースも多くありますしレヴァークーゼンの選手達は巧いのでワンタッチで逆サイドまで切り抜けれたり、ゴール前まで行けたりする時もあります。
仮にロストしてもすぐにプレスをかけボール奪取するか相手にカウンターをさせていませんでした。

変なポジションチェンジをする

たまにですが、変なポジションチェンジをすることがあります。
例えば、シャドーの選手が最終ラインまで降りてきて、WBの選手が中に絞り、CBが幅を取る。

これはまだわかります。特に左サイドで見られたのですがその時の左CBはインカピエ選手でSBでのプレー経験もありますし、WBで起用されるときもあります(ハマっていませんが)。

個人的にとても気になったのは次です
シャドーの選手が降りてきて、CBがライン間をとる

いやいやいや、それする必要ある?って思いましたね。
自分が確認した試合の中でもほんの数回しか(2,3回くらいかな)行われていなかったのですがそのポジションチェンジのスムーズさや周りの選手の挙動(インカピエ選手がした時はボランチのアンドリッヒ選手が「お前そこ行けや」みたいな感じの事をしていたので)を見た感じ戦術なんやろなって思いましたね。

多分「シャドーが降りていきたから誰がライン間とる?せや、CBや!!」みたいな感じなのでしょうけどちょっとここからはペップの弟子って感じがしますね。(シャビアロンソのサッカーからはアルテタ味も感じる)

ビッククラブにいけばもっとすごそうな戦術が見れるかもしれませんね。
ロマンがありますね。

狭いポジショナルプレーによるデメリット

狭いポジショナルプレーによるメリットもありますが勿論デメリットもあります。
それは選手の多くが中央に集まるため敵も中央を固めてきます。
その為スペースが狭い中でボールをコントロールする技術やパス精度などが要求されてしまいますし、オーバーラップはやりやすいですがアンダーラップ(インナーラップ)が相手SBとCBの間にスペースが出来づらいためやりずらいです。
そして何より割を喰らうのはストライカータイプの選手です。

ナーゲルスマンがバイエルンで指揮を取っていた時に当時のレヴァンドフスキがこの様な発言をしています。

「最近バイエルンでは、危険なエリアでのシュートチャンスを得るのが簡単ではない。なぜならそこに6人もの攻撃の選手がいて相手も守備を固めてくるからだ。ここ数試合、ボールを受ける場所を見つけるのにも苦労している。最初の20分間、ほぼボールに触れなかったこともあった」

著書「ナーゲルスマン流52の原則」より

レヴァンドフスキはそれでも得点を量産しましたが(リーグ戦35ゴール)狭いポジショナルプレーによって自分の得意なゾーンが消されていったという感覚があったのでしょう。

そしてナーゲルスマンもバイエルンを指揮していた時にチームの内部にこの様な発言をしていたようです。

「バイエルンはブンデスリーガで10連覇中だ。しかし、チャンピオンズ・リーグで競争力を発揮するためにはただゴールを決めるだけではなく、ファイナルサードにおいて集団戦術に幅広く貢献できる“9番”が必要だ」

ナーゲルスマンはさらに踏み込んだ論調を展開した。曰く、得点機会が10回あれば、レバンドフスキは7回ゴールネットを揺らす。しかし仮にレバンドフスキが退団することになっても、彼抜きの攻撃を構築し、同じプレー時間で20回の得点機会を作り、3人のFWと2人のMFでフィニッシュ役を分け合うことは可能だと。この時、ナーゲルスマンの頭の中にあったFWは、サディオ・マネやロベルト・フィルミーノだった。

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この様な発言からの1人のフィジカルやアスリート能力に優れたスパーな点取り屋(ex.ヌニェス、ハーランド)よりも狭いポジショナルプレーをするにあたって万能型FW(足元のある選手)を好んでいることがわかります。
その為、足元が堅いストライカーでレヴァンドフスキほどオフザボールやシュートが上手くないとゲームから消えたり点が取れなくなる可能性があります。
実際レヴァークーゼンのボニフェイス選手は(現在は怪我)体は大きいですが足元が柔かいタイプの選手です。

しかし、前述しましたがシャビアロンソの良さはナーゲルスマン程このやり方にこだわりすぎる事が少ないってところですがね。

これは個人的な考えですが、3バックを採用した際ジョーカーになれる(守備にも参加してフィニッシュワークにも絡む)選手が市場にそう簡単には出回っていないと思うんですよね。
カンセロやアルフォンソデイビス、レヴァークーゼンではグリマルドやフリンポン等ですが、ジョーカーはフィニッシュワーク面ではとても合理的な戦術なのかもしれませんが、WBにそれをやらせるとなると難しいのかなって思いましたね。

雑感

シャビアロンソのレヴァークーゼンは攻撃に目が行きがちですが、守備もよかったです。
ボールを奪われた時のネガトラの早さは素晴らしかったです。

そしてカウンターやセットプレイも強い印象でした。

この試合の得点はカウンターやセットプレイから生まれています。
分かりやすいかなって思って

これでまだトップチームでの監督の経験は2年目なのでまだまだ期待できますね。

シャビアロンソについて興味深い話をしているので是非

アロンソはバイエルンへ行った際にグラウディオラには戦術ではなく”メンタル面”の学ぶために移籍したらしいです。

選手たちもアロンソの練習は面白い上にインテンシティが高いと好評。

そしてクラブは30歳以上をとらないという方針で2013年から昨シーズンまで獲得した30歳以上の選手は1人だったが、シャビアロンソ2年目は勝者のメンタリティや規律を植え付けるために、ジャカやホフマンといった30歳以上のベテランを獲得。

試合でキーになりそうなメンバー(左サイドなら左サイドが主戦場の選手達)を呼んでユニットで練習させる

そしてなにより凄いと思ったのが、1993年のポカール以降タイトルを獲得していないチームが
「今シーズンは絶対に1つはタイトルを獲得する」
と選手たちが言うようになったことからわかるように勝者のメンタリティが植え付けられています。

シャビアロンソのマネジメント面は全然問題なさそうですね。

後、ヴィルツが凄かったですね。
オフザボールも良いし、気が利く上にオンザボールは基本失わない。
そして守備もサボらない
来シーズンもシャビアロンソがレヴァークーゼンに残留するのでヴィルツも一緒に残ると思いますが、ヴィルツの移籍先はシャビアロンソの新天地になってきそうな感じがします。

グリマルドは攻撃面はすごく良いですね!!
「ジョーカー」にピッタリの選手です。足元も柔らかくキックの精度も高い。
でも守備面が微妙ですね。相手のアンダーラップに先に埋めていたのに振り切られたり等…
ですが自分が戻りきれない時は周りに指示を出せていて良かったですね。
まあ守備が出来たらレヴァークーゼンには来ていないんでしょうけどね。

フリンポンは「キックの精度」→「アスリート能力」に変化したアーノルドみたいな選手でしたね。
あの選手の縦突破を初見で止めるのは結構難しいと思いますね。ドクみたいに反発ステップ無しでも相手をちぎれるくらい馬力がものすごいです。

アロンソのサッカーは相手に球際を作らせないので怪我人も出にくいサッカーになっていると思いますね



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