2017年の映画評「フェリシーと夢のトウシューズ」
(過去ブログからの記事をお届けします。数字や日付はブログが書かれた2017年9月5日当時のものです。)
ディズニーやユニバーサル等の大手のスタジオの作品を除けば、日米でほぼ同時に公開されるアニメーション映画作品は非常に少ないのですが、そんな中、日本で8月12日、アメリカで8月30日とほぼ同時期に公開されることになった「フェリシーと夢のトウシューズ(原題:Ballerina(バレリーナ) 米題:Leap!(跳躍!))」が今日のお題です。
まずこの映画はアメリカでの公開が元々4月に公開される予定が8月に延期されたということが、偶然にも日本との公開と重なった理由の一つです。そして公開延期の背景はもちろん不明ですが、この作品はカナダとフランスの合作であるため、アメリカではTWC(ワインスタイン・カンパニー)が配給という形で関わっており、あらかじめアメリカでいつ公開するか、契約上厳密には決められてはいなかったのでしょう。カナダでは昨年の冬にすでにリリースされており、カナダ版のDVDがすでに発売されているということです。
本ブログでもよく引用させていただいているアニメーションの総合情報サイト、Cartoon Brewによりますと、アメリカ公開版は吹き換えのキャストがアメリカの俳優(エル・ファニング、デイン・デハーン)に変更されているのはもちろん、TWCにより編集が加わっているそうです。それ自体はまったく珍しいことではないのですが、同サイトでは、映画批評家の記事を元にしたアグリゲーション・サイトであるロットントマトの評価がオリジナル版が73%が好評価をつけているのに対して、アメリカ版では29%と正反対の結果になっていることを指摘しています。
日本で公開されているバージョンは、おそらくオリジナルを元にしているのではないかと予想しますが、未見なので確実なことは分かりません。ワタシはアメリカ版を観に行ってきました。大変絵の綺麗な仕上がりで、パリが舞台ということもあり、ピクサーの名作「レミーのおいしいレストラン」を彷彿とさせるものでした。
物語は、実はフランス制作のアニメーションではかなり定番と思われる設定がチラホラ。元気な女の子が主人公なのはもちろん、彼女を想う男の子、彼女を助ける影のオジサンおよびカッコいい紳士、翻って意地悪なミセスとライベルの同級生とバラエティにとんだキャラクターたちは、アメリカのアニメーション映画と違って、やや年齢層の高い子供を相手に作られているからだと思われます。彼女の夢を叶えるコーチとなるオデットの役に、日本でも人気の高いカナダ人歌手、カイリー・レイ・ジェプセン(主題歌も担当)が演じているのも面白い。極めて質の高い作品であると言えます。(カイリー・レイ・ジェプセンの最新シングル「カット・トゥ・ザ・フィーリング」はこちら。)
肝心のアメリカでの興行成績の方は、最初の週末の3日間で470百万ドル(およそ5億円)と、毎年映画の興行成績が最低になる9月のレイバーデイ前後の週末としてはまずまずでした。ちなみに日本で大ヒットしたアニメーション映画「君の名は」はアメリカでは4月公開でしたが、ブログの執筆時点(2017年9月5日)までで全米311館の公開で合計500百万ドルの成績であり、「フェリシーと夢のトゥシューズ」が2705館で稼いだ金額とあまり変わりません。全米で多数のスクリーンで上映されることがどれだけ成績に違いをもたらすか、よくわかりますね。日本でもこの作品が多くの人にとって夏休み最後を飾る作品となって観られたことを願っています。
追記1: 本映画の情報はこちら。
追記2: 本映画は現在ブルーレイやDVD等でもご覧いただけます。
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