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[アップルの求人情報からわかる] 自社のMRヘッドセットによって3Dワールドとビデオのサービスを行うアップルの計画。(ブルームバーグ ニュースより)

原題 Apple Plans a 3D World and Video Service for Its Mixed-Reality Headset
執筆 Mark Gurman
November 13, 2022 at 6:45 AM PST
この記事は11月13日に配信されたもので、現在は情報が変わっている可能性があります。翻訳の正確さについては以下の元記事を参照してください。
タイトル画像: AppleのWWDCカンファレンス(2017年)にて、HTC Viveのヴァーチャル・リアリティ(VR)ヘッドセットを被る参加者 (撮影: David Paul Morris/Bloomberg)

https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2022-11-13/apple-reality-pro-headset-plans-3d-mixed-reality-world-games-video-service-lafgxl1e

(アップルの本社である)アップル・パークのキャンパスにおける、iPadを使ったARツアー

スターター製品群


アップルの次の主要製品は、ミックスド・リアリティー(「複合現実」と表現される、以下MR)のヘッドセットであり、コンピューティングの新しい時代への跳躍する。リリースは来年を予定している。しかし求人情報と人事の変更から、アップルがいくつかのデバイスの能力をプレビューすることが出来る。
私達が知っていることは: ヘッドセットは恐らく2000ドルから3000ドルの間の値段になることが確実であろう。Mac同等のM2チップ、ヘッドセットの内部と外部に10以上のカメラ、そして市場に出回っている製品の中では最も解像度の高いディスプレイを搭載した高品質の製品になると予想されているからだ。
さらに分かっていることとしては: デバイスは realityOS と呼ばれるOS(オペレーティング・システム)が搭載され、その中にはコアとなるAppleのアプリケーション、Messages, FaceTime、MapsのMRバージョンが含まれる。OSの最初のバージョンは、コードネールOakと名付けられ、内部では来年発売されるハードウェアに向けて既に開発が終わっているということだ。
訳注: 以下の12月2日の記事では「realityOS」の名称を「xrOS」に変更したという内部情報が伝えられています。

さらに注目すべき点として、製品名がある。ヘッドセットの高品質さを示すものになるだろう。8月の記事(リンク先)で伝えたように、アップルは「Reality Pro」 および「Reality One」の商標登録をおこなっている。そのどちらかのブランドを用いるべきか、議論しているのではないかと推測される。「Reality」というブランド名は、OSの名前とすでにアップルが RealityKit という名前のAR(アーギュメティッド・リアリティ、拡張現実)開発のためのツールキットを提供していることを考えると、納得のいくものである。

iPadで動くLegoアプリにはアップルのARKitが利用されている。(写真提供: アップル)

様々なソースを辿ってさらに詳細を追っていく。アップルの未来のヘッドセットを製作中のテクノロジー・デベロップメント・グループ(Technology Development Group, TDG)に、過去数ヶ月の求人に変化が見られる。

2,3の求人が示しているのは、アップルがコンテンツによってヘッドセット等のデバイスを盛り上げるための作業をしていることである。アップルが探しているのは、ビジュアル・エフェクツ(視覚効果)とゲーム用のアセット・パイプライン(訳注: 流れ作業でゲームで使用されるモデルやアニメーションを制作するための仕組み)の経験者であり、ARおよびVR環境におけるデジタル・コンテントを制作出来るプロデューサーである。

求人リストから分かることは他にもある。アップルはヘッドセットのために、VRの中で上映される3Dコンテンツとしてのビデオ・サービスを構築しようとしている。これは2020年にアップルがNextVRを買収した動きに繋がるものである。NextVRはアーティストやプロのスポーツ・リーグと提携し、VRのコンテンツをヘッドセットに送信する。

アップルは、VRおよびARへ向けた開発ツールを制作するためのエンジニアも探している。驚くべきことではないか、アップルは新しいOSが App Intents を利用するようにしているらしい。それにより、アプリはSiriやShortcutsといった機能を利用できる。

先のTDG部門にある求人の一つによると: 「私達はApp Intents のフレームワークに関して、ディープ・システム人工知能を創出し、新しい開発ツールを可能にし、アプリケーション・データ・モデルから作られたまったく新しいユーザ・インタラクションを容易に行うことが出来るように、ソリューションを設計および実装するソフトウェアエンジニアを探しています。アプリケーション・データ・モデルは、Shortcuts, Siri, Searchといった様々なシステム・サービスを有効活用出来ます。」

最も興味を惹かれる求人には、明確に3DのMRワールドの開発について述べられている。メタバースとよく似ているヴァーチャル環境を構築しようとしていることが伺える。(ただしアップルはこの用語「メタバース」に愛着はないらしく、マーケティングのチーフは最近のイベントで「『メタバース』という言葉を私は決して使用しない」と述べている。)

キャプション: メタ・コネクトのカンファレンスにて演説を行う、マーク・ザッカーバーグ氏のアバター

求人のリストには、開発者の職種として他にも「3DのMRワールドにおける経験にコネクト出来るツールとフレームワークを構築する」という記述がある
「アップルのUIのフレームワークおよび、ヒューマン・インターフェイスのデザイナーと(あなたにクリエイティブな刺激を与えてくれる)システムの能力を向上させるチームと共に働いて、3Dアプリケーションに関する極めてチャレンジングで興味深い問題を解いていきます。」

製品のローンチが近づくにつれて、アップルは2つのキーとなる製品開発を管理する役職を作った。(記事へのリンクは以下。)かつて自動運転の開発をしていたシニア・リーダーと 最も上級な役職にあたるソフトウェア・エンジニアの管理職の一つである。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-06-19/apple-team-working-on-vr-and-ar-headset-and-ar-glasses

製品開発のグループそのものは、アップルのAR/VRの執行役員である Mike Rockwell および すべてのハードウェア部門の元チーフである Dan Riccio が率いている。Riccio氏はおそらくこの製品が彼にとって最後のイニシアティブになると見ているだろう。彼は CEOのTim Cookに直接報告するほどの重要な任務である。

新しく追加された役職だけでなく、アップルのかつての自動運転ユニットのシニア・メンバーを復帰させている。Dave Scott 氏である。Scott氏は2021年初頭にアップルを退社している。この間に何人かの自動運転に関する役員も辞めている。しかし、彼は Hyperfine (モバイルのMRIを制作しているヘルス会社) のCEOとして短い任期を勤めた後でアップルに出戻っている。

Scott氏は、彼の医療とロボット産業に関する複雑な製品を実際に出荷するまでの仕事で知られている。彼が参加していることで、ヘッドセットにはヘルス関連のアプリケーションが含まれる可能性がある。

Meta Quest Pro ヘッドセットにおけるマルチ・タスク(写真提供: メタ・プラットフォームt社)

さらに: アップルは最近ヘッドセットのチームをエンジニアのシニア・ディレクターである Yanic Gur へと移管した。Gur氏はアップルに20年以上前に合併によって参加した。その際に一緒に参加した Roger Rosner 氏はアプリケーションの執行役員であり、仕事に使えるiWorkアプリケーション製品のパイオニアであった。

ヘッドセットのグループに参加する前に、Gur氏は、アップルの各種プラットフォームにおけるBooks, Notes, Newsといったアプリに加え、(Pages, Keynote, Numbersといった)iWorkアプリのエンジニア達を率いていた。ヘッドセットのチームはすでに、OS開発のチーフであるGeoff Stahl氏が加わっており、Gur氏の着任はヘッドセットへ(iWorkのような)仕事に使える製品群が開発されていることを示している。

そのような製品が追加されるかもしれないことは、メタ・プラットフォーム社と、マイクロソフト社のHoloLensの会うローションと一致するので、理解出来る。会社で使用可能な製品は、アップルのライバル達に対して秀でているポイントとは言い難いが、それだけにフォーカスしないという前提で言えば、新しいAR/VRプラットフォームのキーとなる重要なコンポーネントであることは間違いないだろう。

控えの製品群

Jony Ive氏(中央) 撮影: David Paul Morris/Bloomberg


アップルのデザイン・チームはブレインの流出に悩まされている。会社のデザイン・チームは Jony Ive 氏の元に新しいアップル製品を夢想してそのデバイスのルック&フィールに関して方向性が示されている。しかしその同じ頃に Ive自身はアップルと距離を取り始めていた。アップルのコア・グループは分裂し始めた。Apple Watchのローンチ依頼、Iveの小さなチームから少なくとも15人が抜けて、オリジナル・メンバーで残っているのは2,3人である。

Ive氏の代わりを見つける努力は複雑になってきた。彼は部門全体に影を落としているからである。彼の後継者は工業デザインを推進して役であった Evans Hankey だったが、その任期は短いものとなった。彼女はグループの班長となってからわずか3年で、来年退任すると会社に伝えた。アップルは内部からその後継者を未だに見つけておらず、ほんのわずかな選択肢しか残されていないのは明らかである。そのうちの一人が、長い間に渡ってiPhoneとApple Watch の工業デザインを長期に渡ってリードしてきたRichard Howarthである。 (翻訳ここまで)

筆者の考察

いかがでしたでしょうか。常に最新の情報を様々なソースを元に提供するブルームバーグならではの情報が詰まったニュースレターでした。先行しつつもそれぞれ社内に開発の方向性における問題を抱えていると言われるメタ・プラットフォームやマイクロソフトにとっても、アップルのヘッドセットは今後のAR/VR製品の方向性を占う上で重要なデバイスであると言えるでしょう。単なるアップル信奉者のみならず、市場の反応を見るべく世界中が固唾を飲んで見守るような状況にあるのかもしれません。


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