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vol.554「あと一歩」を確実にゲットする魔法のポーズとは?」


パリオリンピック、感動と悔しさの狭間で

パリオリンピックで連日熱戦が繰り広げられていますね。アスリートたちの活躍で、毎日ハラハラドキドキ。歳のせいか観ているだけで泣けてくる試合も多く、うだるような暑さの中でパワーをもらっています。

そんな中、「あと一歩で勝てない」あ〜悔しい!と感じる試合が続いてちょっとストレスフルになっています。柔道団体、バレーボール男子、卓球の男子団体、柔道の阿部詩さん、レスリングの須崎さんなど…

これを日本人気質などと決めつけると誰かに叱られてしまいそうですが、こうした土壇場の弱さをなんとかできないものか?

『強いチームはなぜ明るいのか』

そう思って7月30日に発売されたばかりの本を読んでみました。『強いチームはなぜ明るいのか』(幻冬舎新書)著者は人材教育家の吉岡真司さん。慶応大学体育会野球部、慶応高校野球部、箕面自由学園高校チアリーダー部のなどのメンタルコーチです。その圧倒的な実績から「あと一歩」を確実にゲットするヒントがあるのではないか、と思いました。

この本の第4章に、『苦しい時に絶大な効果を発揮する魔法のポーズ』が書かれています。以下に、その要約を記します。

高い目標に向かって人が挑む時、必ず壁にぶつかります。「だめだ…」「どうしよう…」「なんで自分ばっかり…」そんなネガティブな言葉を呟いてしまいます。そんな言葉が自分の耳からそのまま脳に届けられると、これらの言葉に紐付いて記憶されている「過去の失敗」や「つらく苦しい出来事」などが呼び起こされてしまいます。そして心の状態がネガティブになり、力を発揮できない状況を自ら作り出してしまいます。

ポジティブな心理状態を引き出す技

それを乗り越えるための、メソッドが2つ紹介されています。1つが「魔法のポーズ」です。魔法のポーズとは、苦しい時に自分がとるポーズで、このポーズをすれば「大丈夫だ」と、自分で自分に合図を送るポーズです。ポーズは自分で決めます。

昨夏、甲子園で優勝した慶応高校の選手の場合は、親指と人差し指と中指を立てる3本の指を立てる「3本ポーズ」が彼らの魔法のポーズでした。この「3本ポーズ」を慶応の選手は何度も出しています。

例えばタイブレークの大接戦となった対広陵高校戦。3点リードで迎えたの延長10回の裏、2アウト満塁のピンチを招きます。そこでベンチからの伝令がマウンドに行きます。内野手がマウンドに集まります。このとき伝令が伝えたことは、「みんなで青空見上げてみようぜ」。これは「一点凝視法」という、緊張を和らげる方法です。緊張や不安は、意識が自分に向いているので生まれます。そこで1点を見つめて視線を固定することで、意識を自分の外に向け、リラックスした状態を作るのです。

内野手は伝令のこの言葉に皆で空を見上げました。そしてその後3本ポーズをして守備位置に散っていきました。結果、見事に後続の打者を打ち取り、勝利を収めたのです。

慶應の選手はこの「3本ポーズ」を日頃から使っていました。彼らの目標は「KEIO日本一」、目的は「恩返し&常識を覆す」です。彼らは練習前に、必ずこの「3本ポーズ」を示しながら目標と目的、スローガンを唱和していました。学校でチームメートに会った時には「おはよう」の挨拶とともに、このポーズを出していたと言います。

嬉しい時、楽しい時、感動した時、何かいいことがあった時、必ずそのポーズをとるようにします。すると、気持ちが乗らない時や落ち込んでいる時などでもこのポーズを行うことで、心の状態をポジティブに変えることができます。

私はこの本を読んでから、会社のマークであるV字のサインを左手で創るポーズを考えました。(いわゆるVサインとは違います)まだ数日しか経過していませんが、思うようにならないときでも、V字ポーズで自分をポジティブにすることができそうです。

ゴールを先に設定する心理テクニック

もう一つ、自分をポジティブにするメソッドが紹介されています。それは言葉です。特に「あと一歩」の勝負ポイントで有効です。ピンチを乗り越えて「あと一人」「あと1点」と考えると、脳は満足感を覚え、どうしても気持ちが緩みます。一方相手はピンチなので、凄い集中力で挑んでくると吉岡さんは言います。

そんな時、以下の言葉を呟くと良いと述べています。
「試合はまだ終わっていない」
「俺たちが目指しているゴールはもっと先だ」
「今こんなところで立ち止まっているわけにはいかない」
「次の〇〇戦も多いにチャレンジするぞ」

つまり、一歩先をゴールにせず、ゴールを先もっと先に設定します。それを自分に呟くことで、脳の満足感、安心感を取り除くのです。

高校生でもメンタルコーチの指導を受ける時代です。わが国のメダルを争うほどのオリンピック選手がメンタルコーチの指導を受けていないとは考えられません。それでも起きてしまうのが、五輪という舞台なのでしょう。

上記のような吉岡さんのアドバイスは私たち社会人には大変参考になるものです。SNS上では試合に負けた選手への誹謗中傷が多いようですが、それを書き込む暇があれば、自分の魔法のポーズを考えてみたらと思います。

社会的成功と人間的成功

最後に吉岡さんは、本書の中で人には社会的成功と人間的成功の2つがあると述べています。社会的成功は、地位や名誉、財産を得ること。対して人間的成功は「自分は人としてどうありたいか」です。

もし、あと一歩が及ばず悔し涙を流した選手たちが「見る人に勇気を与えるような選手になりたい」「子供たちに夢を与える選手になりたい」などと考えているとしたら、彼らはもう、立派に人間的成功を果たしたことになります。

五輪選手になるだけで社会的成功です。勇気を希望を与える存在という、人間的成功も手にしています。吉岡さんは人間的成功にこそ価値があると言います。

「申し訳ありません」などと言わずに、胸を張って、笑顔で、胸を張って帰国して欲しいと思います。

実践に役立つ動画の解説

このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。

質問項目

  1. 魔法のポーズのようなある種の「型」を取り入れて成功している企業はありますか?

  2. 「あと一歩で勝てない会社」が「重要な局面で勝てる会社」になった事例はありますか?

  3. 「人間的成功」と「社会的成功」の考え方は、企業にも応用できると思いますか?


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