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vol.556「叱るのが苦手な人に覚えて欲しい叱り方」(2024年8月29日配信)


パラリンピック開幕と宮田選手の代表辞退

パリのパラリンピックが開幕しましたね。オリンピック同様、アスリートの皆さんには人生の夢舞台で良い思い出を刻んで欲しいものです。

さて、7月のオリンピックの直前、ある衝撃的な事件が起きました。ご記憶の方も多いと思います。女子体操のエース宮田笙子選手が代表を辞退しました。原因は、19歳の彼女が喫煙と飲酒をおこなったこと。それが日本体操協会の以下の『選手・役員の行動規範』に違反したからです。

「日本代表チームとしての活動の場所においては、20歳以上であっても原則的に喫煙は禁止する。20歳以上であっても飲酒は禁止とする」

この辞退に対し「厳しすぎる」「もっと寛大になれないのか」の意見もあれば「それは当然だ」という意見もありました。まさに賛否両論。あなたはどうお考えでしょうか?

アスリートを取り巻く厳しい環境

特にアスリートは、ドーピング検査で陽性反応が出れば、本人が意図して服用した場合はもちろん偶然摂取してしまった場合でもメダル剥奪、出場停止処分が課される世界です。

また、陸上や水泳競技では、わずかなフライングで失格になります。体重別競技では1gオーバーでもアウトです。そうした厳しさの中に身を置いているのです。

したがって、処分の一番のポイントは宮田選手が日本体操協会の『選手・役員の行動規範』を認識していたかどうかだと私は思います。もし認識していたとしたら、今回の判断(処分)は当前と言えるでしょう。逆にそれを知らなかったとすれば、彼女は被害者です。そのことを代表選手に伝えていなかった協会や監督、コーチらこそ処分されてしかるべきでしょう。

※19歳の場合、法律でNGなので、やはり本人には責任があるのではないでしょうか

管理職の「叱れない」問題

そんな事件の報に触れながら、私は経営トップ層からよく頂く質問を思い出していました。それは「叱れない管理職をどうしたらいいか?」です。

管理職の中には「叱るのが苦手」という方が大勢います。背景には「パワハラとして訴えられたら困る」や「叱られたことを根に持って辞められたら困る」という怖れがあります。

そのため部下が手を抜いて仕事をしていたり、不安全なことをしていたとしても何も言えず見過ごすことが発生しています。

効果的な叱り方:「ま・じ・か・い」メソッド

そこで、叱るのが苦手な人はどのように叱ればいいのか。弊社のパートナーコンサルタントで、私のコーチングの師匠でもある上野恭子先生から教わった、非常に効果的な「誰でもできる叱り方」をお伝えします。

上野先生は「叱ることで自発的に行動を改めて欲しい時には、以下の『ま・じ・か・い』の順で叱ると良い」といいます。ひとつずつ解説していきます。

「『ま・じ・か・い』の「ま」は『前置き』です。人を叱るとき、いきなり本論に入って「ミスがあったよ」「これはダメ」などと叱ると、相手はショックを受け何が何だかわけがわからずパニクってしまいます。これでは、あなたの話をちゃんと受け止めてもらえません。

そこで、まずは相手に心の窓を開いてもらいます。方法は簡単。「いつもご苦労様」「今日も暑い中、ありがとう」などと声を掛け、相手の努力を労います。その後で「ちょっと話があるのだけどいいかな」と、他の人に聞かれないところに行きます。

次は「じ」です。「じ」は『事実』です。どのような事実があったかを相手と一緒に確認します。「こんな報告が届いているのだけど、事実かな?一緒に確認してくれないか」「いつ」「どこで」「誰に」「何が起き」「どうなったのか」を警察の調書ように時系列に並べ、確認します。また、証拠の写真や資料などがある場合も、「これ見てごらん」と一緒に確認します。同時に、お互いに共有しているはずのルールを確認します。そして、「ルールを認識はしていたが、破ってしまった」という現実を共有します。

この時に『なぜこんなことをしたんだ?!』とか『何回言えばわかるのか?!』いうように感情的に責めたりしません。叱る側が感情的になれば、相手は逃げたい一心で表面的に「ごめんなさい」を繰り返すだけ。肝心な反省→改善には至りません。

その次は「か」です。『か』は改善です。事実を共有した後で『これについて、何か意図がやったの?(何があったの?)』とその意図や背景尋ねます。多くの人は、ここで言い訳を聴いてもらえることで、落ち着き素直に反省に向かえます。そして『では、二度と繰り返さないようにするにはどうしたらいいかな?』と、相手に改善策を考えてもらうように促します。このとき、叱る側が『ああしろ、こうしろこうすべき』と指示命令するのではなく、本人に考えてもらうよう注意質問します。この問いにより相手は自分の行いにしっかりと向き合うことができます。

相手が改善策に気づくまで時間がかるかもしれません。その時は待ちます。相手の言葉を待つのも上司に必要なスキルだと思ってじっと待つのです。こうして出てきた改善策が望ましいものであれば『そうだね。いいところに気がついたね』とその改善策を承認し、今後取り組んでもらう約束をします。

最後は「い」です。「い」は『いい影響』です。『その改善策を実施すると、周囲やあなた自身にどんないい影響が出るかな?』と尋ねます。最後に『いい影響』に気づかせるのは、『そんなにいい影響があるのだから、ここは頑張ろう』の励ましの言葉になるからです。

叱る側は、その気づきをちゃんと受け止めて『そんないい影響があるんだね』と、相手が言った『いい影響』を繰り返して後押しします。これにより、相手は自発的に行動を改めることができるのです。

叱ることの意義と部下の成長

私はこの『ま・じ・か・い』を学ぶまで、部下に対しカッとなることが多く、感情的に叱ることがしばしばありました。が、『ま・じ・か・い』を覚えてからそれがなくなりました。しかも部下は皆、すぐに行動を改めてくれました。無駄なエネルギーを使うことなく、ストレスも溜まりません。効果満点です。是非皆さんも使ってみてください。

かつて金メダル最有力と言われたバドミントンの桃田選手が自らの賭博行為が元で五輪出場を辞退したことがあります。が、彼はそれを契機に立ち直り、多くの人に愛されました。

それと同様に、宮田選手の今回の選択は長い目で見た時に、彼女にはきっとプラスになると信じています。

是非あなたも、部下の約束やルール違反を見かけたら『ま・じ・か・い』を実践してみてください。そして、過ちを冒した部下たちを正しい方向に導いていってくださいね。

*上野先生が経営するWinWin育成協会。コーチングの認定コースを開講しています。

実践に役立つ動画の解説

このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。

質問項目

  1. 「ま・じ・か・い」を心がけたほうがいい人の特徴は?

  2. 「ま・じ・か・い」が機能する前提条件などはありますか?

  3. なかなか自分の責任を認めてもらえない場合はどうする?


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