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渡米した日本人が税などに関して注意すべきことのリスト

はじめに

重要:私は法律と全く関係のない仕事をしている完全な素人です。何かアクションを起こす場合は、必ずライセンスを持ったCPA、弁護士、日本の税理士など専門家の意見を仰ぎましょう。また以下の情報は、2021年7月現在の調査に基づきます。税法や移民関連の法律は頻繁に変わりますので、必ず最新の情報を確認してください。特に多国間にわたる税務を正しく扱える専門家は少ないです。専門家選びも慎重に。

在米邦人が戸惑う税やお金のあれこれに関する記事を、以前から自分用にまとめたメモを公開していましたが、なぜか検索のインデックスから消えてしまったのと、とにかく文が長すぎるので要点だけまとめたリストがあると便利かなと思い、自分自身も忘れないための最小限のメモとして公開します。詳細はリンク先で確認してください。

知っておかないと罰則がある最低限必要な知識

日本から米国に引っ越しをすると、日本と米国の両方の当局からの要請に従う必要があります。「知らなかった」と無視したり踏み倒そうとする人もいますが、違法ですからお薦めはできませんので、面倒だと思っても一つ一つ対応していきましょう。

混乱するポイントとしては、米国は米国への納税義務がない収入や資産も開示請求してくることと、日本の税務署は渡米後10年間、全世界の資産に対して課税権を持っているという点です。以下、列挙します。

米国側から要求される義務

タックスリターン
これすら知らない人も当然いると思うので念のため。米国の居住者は基本的に全員米国で税務申告の必要があります。必ず毎年申告しましょう。

日本での収入
日本でのビジネスや記事執筆などにより発生する収入、アフィリエイトなども含めて、日本での全収入も日本で納税した上でさらに報告義務が米国側で発生します。日本の定期預金などを残してきた方はその利子なども報告義務があります。要するに世界中で発生した収入を、米国政府が課税できないものも含めて全てタックスリターンで報告する必要があります。

Report of Foreign Bank and Financial Accounts (FBAR)
海外に持つ口座を開示する義務です。総額で1万ドル、今現在だと110万円以上の資産を海外(日本人の場合は日本に残してきた銀行口座など)に持っている方が対象です。

これは総額なので、合計して超えてないか確認する必要があります。年度末の預金金額ではなく、一年のうち一回でも総額が1万ドルを超えたら申告義務が発生します。これは在米日本人コミュニティでも広く知られるようになっている印象です。フリーペーパーなどでも度々記事を見かけます。申告が面倒なだけで、米国側にお金を払う必要はありません。ちゃんと毎年提出しましょう。

Form 8938 (Statement of Specified Foreign Financial Assets)
マネーロンダリング関係の制限に関わる法律です。日本などの米国から見ての海外に多めの資金(個人でファイルする場合は$50k相当)を残してきた方が対象です。それらの資金がある銀行口座などをIRSに報告します。

金額は変わる可能性があるので必ず毎年確認しましょう。金融資産のみで海外の不動産は含まれませんので、そこは心配しなくても良いです。

Form 3520(海外での相続や贈与の報告)
日本で多額の贈与を受けた場合、もしくは不幸にも親が亡くなって財産を相続した場合に提出が必要になります。

現在は10万ドルが下限になっているので、もらい受けた額がそれ以下の場合は必要ないです。米国側はあくまで報告義務なので、相続税が発生した場合は、日本で納税します(日本の資産の場合)。

国際相続に関しては、特に資産が二国に分散している場合などは極めて複雑で専門性が高いため、必ず専門家に相談してください。

日本から要求される義務

意外と見落としている人がいますが、渡米後も暫くは日本の税務署とお付き合いすることになります。

10年ルール
渡米後10年間は、日本政府があなたの世界中すべての資産に関する贈与や相続に対して課税を行います。
例外はありません。不動産も預金も全部です。もしあなたが自分の配偶者や子供にお金や不動産を贈与した場合、日本で課税されます。逆に言えば、渡米後10年が経過した後は、基本的に日本にある財産以外は全て米国の法律のみに基づいて処理できます

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日本からの送金
当然ですが、あなたが米国にいるからと言っても渡米後10年間は日本の贈与税からは逃れられません。日本の両親などから送金を受けた場合は、日本で必要に応じて贈与税を納めます。在米邦人も年110万円の非課税枠を利用することはできます。

家の購入
米国の法律ではコミュニティプロパティになる州もあるため名義を分けても離婚調停などでは実質共有とみなされることもありますが、これは日本と非常に異なる仕組みです。したがって、家などの財産も米国側と日本側で扱いが変わります。例えば一方が全額頭金を出してローンを組み、$1Mの家を買い、それを夫婦のジョイントテナンシーとすると、日本の税務署は配偶者への$500kの贈与とみなします(頭金の金額でないところがポイントです)。つまり、贈与の最高税率である55%の税金がかかります。

これを避けるため、移住後10年以内に家を夫婦で買う場合は、夫婦それぞれの口座から拠出した分に基づいてTenancy in Commonを設定しましょう。もし一方のみが拠出した場合は、一方のみの名義にすべきです。ただし、その場合、プロベートには注意しましょう。

ジョイント口座
米国でジョイント口座を夫婦で持つのは普通ですが、引き出し方によっては日本の税務署によって課税されます。テクニカルには入金した時点で二人のものですが、日本の税務署は、そこで入金した以上の金額を引き出して個人名義の投資口座などに入金した時点で贈与とみなすようです。生活費を共有する口座程度に留めておくのが無難でしょう。(つまり投資口座などは個人名義できっちり分けましょう)

トラストとリビングウィル
Tenancy in Commonで所有権を夫婦で拠出した元本に基づいて分割した場合、そのままだと片方の所有者の死後プロベート入りします。リビングトラストを設立して死後どう配分するかなどを設定しておきましょう。かなり細かい指定が可能なのと、死ななくても判断力を失ったとき(事故や認知症など)にも法的効力を発揮できるように、そのときどうしたいか、自分が指示書を作ることができます。

IRAなどの投資口座
配偶者がビザや言葉の関係で働いていない場合は、毎年6000ドル拠出できます。便利な仕組みですが、これは日本の贈与税にカウントされますから、他にも贈与を行っている場合は110万円のリミットには気を付けましょう。それ以上贈与するときは日本での納税が必要になります。

まとめ

以上、極めて限定的な基礎部分のみのリストですが、ひとまずこれを全部こなせば、米国での罰金(もしくは懲役)や、急な日本での課税などは避けることができると思います。これはかなり簡略化したリストですから、不安な点があれば関連の資料を読む、税理士に相談するなどをして、最新の情報にキャッチアップしていきましょう。もし何か抜けている点などあればご指摘いただけるとありがたいです。各種トピックの詳細などは、後々追加していければと思います。

参考資料

以前私が書いた米国在住者向けのメモ

米国でのお金に関するリソース (1)
- 米国でのお金に関するリソース (2)
米国でのお金に関するリソース (3)
- 米国でのお金に関するリソース (4)

米国永住権保有者の国籍におけるオプションと日米に渡る税のメモ #1

参考書籍



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