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快楽のサービスデザインがデザイナーの自信を養うのでは――ViViViTのグッドデザイン賞受賞に寄せて

ViViViTというサービスを営んでおります、しゅうせいと申します。ViViViTは立ち上げからいまして、肩書としては取締役CCOでデザイナーです。デザイナーという肩書ではありますが、サービスの立ち上げからビジネスモデルの設計まで、必要なことはぱくもぐしています。

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ViViViTはポートフォリオを介してデザイナーとしごとをつなぐプラットフォームです。デザイナーと、デザインを必要とする人のマッチングにより生じる爆発力が閉塞する日本社会を良くしていく、と本気で信じてサービスを運営しています。ひっくるめて、すべてのクリエイティブのハブになると会社のミッションとして掲げています。

と、いうのは会社としての視点でして……

もちろん個人としても本気で思っていますが、グッドデザイン賞を受賞したこの機会に、僕個人がどのようなことを考えてViViViTというサービスをデザインしているのかをお話させてください。※完全にチラシの裏です。

この記事を読んで持ち帰れるものがあるとするならば、こんなところでしょうか。

🤞自信を持つためのモデル
🤞ViViViTがデザイナーさんに浸透した(と思っている)理由
🤞コミュニティの設計でViViViTが大切にしていること

自信がなかった自分を救いたかった

ViViViTを設計するときに僕が掲げる裏テーマは、使うことで自信が持てるサービスです。

僕はもともと自己評価がとても低い人間でして、そうすると生きていて不便なタイミングが結構あるんですね。交渉事で強く出れなかったり、新しいことを始めるときのエネルギーが不足したり。

「自信がある人はいいなあ……エネルギーもあって、やりたいことをやれて……」

ということを、ここに書いてあるよりもだいぶ卑屈に考えていたような気がします。

幸運だったのは、このときにふてくされて世の中を恨まず、自分を変えなきゃな、と思えたことです。で、自分を変えるためにすごく必要だと考えたのが"自信"だったんですね。でも、どうやって自信を持てばいいんだろう…?

僕「……!自信ある人はみんな誰かに認められていたり、実績を残していたり、配られたカードが良かったりしてるぞ!」
僕「配られたカードはどうしようもない、変えられないし」
僕「実績と承認を集めよう」

短絡的な僕はこんなことを考えました。笑

自信を持つことが自分の人生を前に進めるんだと認識し、そのために必要な実績と承認を拾い集めるためのアクションを取ろうとして動き始めました。

そこから挫折と達成を繰り返して、ある程度は自分に自信が持てるようになりました。モデル化すると、以下のような図で自信を持つに至れたんじゃないかと。

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自信を持つまでにたどった道のりは間違いなく自分の原体験であり、サービスを設計する際の価値観のひとつとなっているように感じます。再現性があるかは分からない。でも、このモデルは、自分のように自信を持てずに困っている人のちからになるのではないか、と思うようになりました。

もちろん、「そんなのはサービス設計において生存者バイアスでしかない」と断じることもできます。笑

バイアスかもしれませんが、僕にとってはスタンスでもあるんですね。

愛されるサービスには快楽のやり取りが大切なんじゃないか

とにかく、ViViViTスタート以前よりそんなことを考えていたのですが、なんとなくのモデルはイメージがあっても、具体的に自信を育てる方法については暗中模索の状態でした。ところがあるとき、『ソーシャル・ネットワーク』という2010年公開の映画を見たときに、僕が高校時代に流行りかけていたmixi(さん、ViViViTのお客様でもあります)や公開当時すでに勢いのあったTwitterのことを思い出しました。そうだ、自分の投稿に対してリアクションがあったときめちゃめちゃ嬉しかったぞ、と。

ここで点と点がつながったように思います。つまり、ポジティブなリアクションは承認につながり、承認が自信につながるんじゃないか、と。自分が自信を持てたモデルとも相性が良い。

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例えば、SNSでなにかを投稿したとき、リアクションがつかないか気になってつい何度もアプリを立ち上げた経験のある人も多いのではないでしょうか……?何度か立ち上げて、リアクションが返ってくれば、得も言えぬ満足感で満たされる。これは多くの人が経験したことのある感覚だと思います。

繰り返し求めてしまうポジティブなリアクションは、すなわち快楽です。そしてリアクションというのは、自分に対する興味の証――すなわち承認です。そんな分析はいろんなところで腐るほどされていると思うので割愛しますが、つまるところ、快楽のやりとりをサービスデザインに当てはめてみると、うまく自信を育めるのではないかと考えるようになりました。TwitterやFacebookのようなSNSも、ユーザー同士の快楽のやり取りによって愛されていると思いました。

でも、ちょっと待って。快楽のやり取りはすべてのサービスデザインに当てはまるわけじゃないよね?

もちろんそうです。

ここでひとつの整理が必要です。
ViViViTがリリースされた2013年、求職者と企業の就職/採用マッチングでは圧倒的な企業優位でした。個人が求職しようと思ったら、基本的には応募です。能動的に動いて、応募をかいくぐった先にようやくマッチングがあったわけですね。すごく面倒な手続きです。

もちろんスカウトサービスも勃興し始めていましたが、ヘッドハンターと称したユーザーが候補者の情報もろくに見ず、とにかくたくさんスカウトして面談動員していくといったいびつな構造でした。求職者からしたらたまったもんじゃありません。スカウトされたはいいものの、深く情報を見られているわけではないので結果的にミスマッチになってしまうわけですね。

少なくとも僕の観測範囲では、かような応募システムやスカウトにより生まれるミスマッチに不満をいだいている人が多いイメージを抱いていました。

SNSのリアクションは嬉しいのに、おかしな話です。いったい、SNSと就職/採用マッチング、ふたつのプラットフォームにおけるリアクションに横たわる違いはなんなのでしょうか。

2013年当時の就職/採用マッチングは、求職者を承認する仕組みが整っていなかった

先の段落で、このように述べました。

リアクションというのは、自分に対する興味の証――すなわち承認なわけです。

SNSのリアクションと就職/採用マッチングサービスのリアクションに横たわる大きな違いは、1on1の視点です。SNSは、どのユーザーもリアクションを強制されていません。したがって、ポジティブなリアクションがあれば、それは純粋な興味と承認なわけです。

しかし、就職/採用マッチングのリアクションには採用というゴールが根底にあります。採用までのステップは細かく切り分けられ、ステップごとに数字が課される場合もあります。ここで、採用の対象となる人を増やしたいと思うのは自然です、が――求職者から見てみれば、自分を深く見るよりも1/nとしての扱われ方をされている、と映るんですね。

こんなの、自分なら耐えられない……と考えました。

じゃあ自分はなにがほしいのか、と考えたときに、自信の源、承認に至る "快楽" だったわけです。ViViViTでは、デザイナーと企業がお互いの作品について気軽にリアクションしつつ、コミュニケーションをとるには相互承認が必要な仕組みを導入することで "快楽" を実現しました。

と、それっぽく言ってみましたが、結局は自分たちがほしいサービスをつくったということです。

快楽は、自己効力感を養い自信につながる

自己効力感という考え方があって、ざっくり言うと自分はやれるんだ!って思える認知、すなわち自信のことです。Wikipediaによると、自己効力感を感得するのに必要な要素は下記のようです。

1. 達成経験(最も重要な要因で、自分自身が何かを達成したり、成功したりした経験)
2. 代理経験(自分以外の他人が何かを達成したり成功したりすることを観察すること)
3. 言語的説得(自分に能力があることを言語的に説明されること、言語的な励まし)
4. 生理的情緒的高揚(酒などの薬物やその他の要因について気分が高揚すること)
5. 想像的体験(自己や他者の成功経験を想像すること)
6. 承認(他人から認められること)

承認によって快楽を得ることは、上記リストの1,6を満たすことができ、自己効力感を養うことにつながるんじゃないか、と僕は考えています。

これをViViViTに当てはめてみると、デザイナーは自らのポートフォリオに対して承認が得られれば、もっと言うとViViViTを活用すればするほど、どんどん自己効力感を育てていけることになります。

この考え方はおおむね的を射たようで、ViViViTを利用してくれるデザイナーさんは日を追うごとに増えていきました。目論見に即した "快楽" を得られる仕組みのために、ViViViTでは以下の取り組みを行っています。

・デザイナーも企業も等しくサービス上にポートフォリオを持ち、マッチングする仕組みにする
・一括スカウトや一括メッセージは厳禁
・フォローしたユーザーの作品更新が通知されることで、成長を見える化

冒頭のモデルは、ViViViTにも当てはめることができます。

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このようなモデルが功を奏して、ViViViTを利用してくれているデザイナーさんからは「自分に自信が持てるサービスだ」という声を数多くいただいています。また、「学生の自信形成に有効なサービスだ」と評していただける学校さんもおり、期待に答えるサービスづくりをしていかなければいけないと褌を締め直しているところです。

サービスとして未熟な点はまだまだ多く、すべてのユーザーさんがこのモデルにハマるわけではありません。そこが歯痒いところですね……とにかく、ユーザーさんから仕組みが一定評価され、ViViViTの利用者が口コミでどんどん増えていくことになります。

成功体験はオフラインで広がる

ViViViTは、公式にデザイナーと企業のフラットな1on1マッチングというテーマを掲げていまして、ここに共感してくれたユーザーさんが使ってくれることで成り立っているプラットフォームです。

フラットなマッチングというテーマを掲げてコミュニケーションを設計していたからこそ、マッチングの成功体験は拡散されやすい性格を持っていました。

少し企業さん目線で話すと、通常の採用活動では、説明会やスカウトサービスを活用してとにかく見込み候補者を増やすことにコミットします。ですが、ViViViTではそのようなアプローチは取りませんでした。作品をしっかり確認した上で、どこがどう良かったのか、どうしてに自分たちの会社に合うと思ったのかをデザイナーさんに企業さんが説明しなければ、マッチングの確率を上げられないようにしました。そのほうが、ミスマッチに起因する企業さんの時間のロスを減らし、本当に重要なこと――企業さんの採用ブランディングを図ったり、入社後の定着や活躍を促進したり、デザイナーさんの満足度を上げられたり、できると考えたからです。

つまり、企業さんがめっちゃ丁寧に作品を見てから声をかけてくれるサービス!ということでして、マッチングした段階でデザイナーさんの自信や自己効力感を底上げすることに一役買えていたのではないかと思っています。だからこそ、マッチングしたことは人に言いたくなるものだと考えました。

ただし、成功体験はクローズドに共有されるのが主流なようです。

例えば、デート向けマッチングアプリを「すごい効果がある!最近使ってるんだ!」とネットで声高に言っている人は少数派のように思えます。声をひそめながら、オフラインまたはクローズドなオンラインのコミュニケーションで「最近、マッチングアプリ使ってるんだ」と打ち明ける場面に出くわしたことのある人も少なくないのではないでしょうか。ViViViTも同様で、効果があったことを信頼できるコミュニティにて共有し合うデザイナーさんが多かったのです。

自信があれば、デザイナーはいいものをつくれる(と、信じている)

さて、デザイナーとしごとのマッチングというとてもニッチな領域ではありますが、ViViViTを通じてデザイナーさんが自信をもつお手伝いに、微力ながら手応えを感じ始めています。

自信のあるデザイナーが増えれば、それだけいいものをつくるデザイナーが増える。いいものをつくるデザイナーと企業が手を組めば、さらにいいものが生み出せる。

自信に満ちているとき、からだの内側からふつふつとエネルギーが湧いてきて自然と何でもできる気がするなんてことはありませんか?僕もこれまでの人生を振り返ると、自信に満ちているときに取り組んだことが人生に大きな役割を持っていると感じます。その中でも大きなことのひとつはViViViTの立ち上げであることは間違いないです。

ViViViTは、利用することでデザイナーさんが自信を持ってものづくりに邁進できるようなプラットフォームにしたいなと考えています。自信が人生を切り拓き、社会を前にすすめる原動力だと信じて。

というわけでPR🙇‍♂️

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そんなViViViTが、サービスデザインと市場への浸透を評価され2020年度グッドデザイン賞を受賞いたしました。本当に嬉しいことです。もっともっと良いサービスにしていきますので、デザイナーさんも企業さんもぜひ、ViViViTでポートフォリオをつくってみてください。

※企業さんの利用には、こちらからお問い合わせが必要になります。


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