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5分で住友化学の企業財務分析評価


挨拶

このページをご覧になってくれている方ありがとうございます。改めましてコブータと申します。私は米国公認会計士や簿記2級の学習を通じて会計のマニアになりました。企業の財務分析を行うことで皆様の投資判断の材料にしたり、就職、転職の企業分析にお役立ちいだだければと思います。今回は住友化学について解説していきます!分析をしてほしい企業があったらコメント等に残してくれると嬉しいです!

企業概要

住友化学の始まりは1913年に住友総本店が現在の愛媛県新居浜市に肥料製造所を開設したのを事業の始めとし、1925年に株式会社住友肥料製造所として独立しました。1934年に住友化学の名前になっています。また住友化学の決算月は3月決算になります。

事業内容

住友化学の事業は下記の6個の事業に分けられています。

  1. エッセンシャルケミカルズ

  2. エネルギー・機能材料

  3. 情報電子化学

  4. 健康・農業関連事業

  5. 医薬品

  6. その他

エッセンシャルケミカルズ:合成樹脂や合成繊維原料の製造販売
エネルギー・機能材料:アルミ製品や合成ゴム、プラスチックを製造販売
情報電子化学:光学製品、半導体材料、タッチセンサーパネル等の製造販売
健康・農業関連事業:農薬、肥料、農業資材、殺虫剤等の製造販売
医薬品:医療用医薬品、放射性診断薬等の製造販売
その他:社内売上がメイン
化学製品と一言で言っても様々な種類、用途があることが分かります。

人員について

住友化学の従業員数内訳は下記の通りです。
従業員数は約3万3千人の超大企業です。一番従業員が多いのは健康・農業関連事業です。その次が情報電子化学事業と続きます。これらの従業員数の多い事業でしっかり利益を出せているか注目です。

住友化学従業員数

働きやすさについて

現在注目されている働きやすさですが、住友化学の女性の管理職は9.5%です。日本を代表する大企業ですのでもう少し頑張ってほしいですね。また、男性の育休取得率は77.4%と高い値を出しています。女性の管理職の割合は今後さらに増やしていって欲しいですね。住友化学も子会社が多いので今回は住友化学のみのデータを持ってきました。

住友化学多様性指標

住友化学の収益構成

住友化学は収益約2.8兆円の大企業です。その内約30%の収益をエッセンシャルケミカルズで稼いでいます。住友化学のメインビジネスは合成樹脂や合成繊維原料の製造です。その次が健康・農業関連事業、医薬品と続きこれらの事業で各20%の収益を稼いでいます。
2021年度と比較すると売上は約4%増えています。過去5年を振り返るとコロナ禍に売上が少々減少しましたが、そこから毎年順調に増加しています。2022年度は直近5年の間では最高の売上額です。
その大きな要因はエッセンシャルケミカルズやエネルギー・機能材料の市況が上昇したこと、健康・農業関連事業で南米への農薬の販売が増加したことが上げられています。
一方で情報電子化学では巣ごもり需要が落ち着いたこともあり、売上は2021年度より微減しています。医薬品も米国での独占販売期間が終了した結果売上が微減しています。

住友化学セグメント別収益

営業利益と当期純利益

収益が増加しているのも重要ですが、営業利益と当期純利益についても無視することはできません。
住友化学の営業利益は赤字となっています。これだけ稼いでいても赤字経営なのは苦しいですね。ですが、住友化学の場合ずっと赤字ではなく、2022年度のみ赤字になっていますね。
大きな要因が多額の減損です。2022年度の減損だけで約1,000億円の利益が吹っ飛んでいます。主な減損の内容は医薬品の特許やのれんによるものです。つまり、医薬品の特許を取得することでもっと儲かるはずだったのが、実際は儲からなかったということです。
ですが、そもそも売上総利益の段階で2022年度の方が売上額は多いのに少なくなってしまっているのが気になりますね。原材料などのコスト上昇が原因だと思われますが、今後売上総利益率については注目です。
当期純利益は約460億円の赤字となっています。営業利益も赤字だったため当期純利益も赤字になってしまうのは当然といえば当然でしょう。赤字をカバーするために固定資産等は売却しなかったようですが、その判断が吉と出るか凶と出るか。
配当金も2021年度と比較すると下がってしまいました。赤字の場合配当を出さないという選択肢もありますが、住友化学は配当を出しました。2022年度以前はコロナの影響で一時下がりましたが、そこから上がってきています。
目標の配当性向は30%台で株主への還元のバランスが適切です。今後も売上が増え続ければ、今後の配当金の増加も期待できそうですね。

住友化学の倒産リスクは?

会社が潰れてしまう可能性があるか?を判断するには流動比率の分析はかかせません。流動比率とは流動資産÷流動負債で求めることができ、短期的な資金繰りに問題がないかが分かります。
流動資産は1年以内に現金になりえる資産、流動負債は1年以内に払う負債のことです。流動資産が流動負債より多ければとりあえずOKです。
ですが気をつけるのは棚卸資産の項目です。棚卸資産は1年以内に販売できるかできないか分からないからです。その前段階である原材料も考慮が必要でしょう。
住友化学の流動資産を確認すると約1.7兆円あります。その内棚卸資産は約7,400億円ですので流動資産の約40%です。一方で、流動負債は約1.2兆円と流動資産より約5,000億円少なくなっています。棚卸資産を除いたら資産は約9,600億円あり流動負債が流動資産を上回っています。2021年度と比較すると棚卸資産が約1,000億円増えているのは気になる点ですね。短期的な支払い能力についてすぐには問題にならなさそうですが、この状況が続くのであれば注意する必要があります。

住友化学の固定資産

住友化学の固定資産は微減しています。これは特許権やのれんの減損の影響で固定資産の評価額が下がっているのが原因です。ですが、各事業の製造設備を強化しており、設備投資は2022年度に約1,400億円行っています。これによって2023年度の売上と利益にどのように影響してくるのか注目です。

まとめ

  • 2021年度と比較すると売上が4%増加。コロナの影響で売上が少し落ち込むも2020年度以外は毎年増収。2022年度は直近で最高売上

  • 2022年度の営業利益は赤字。多額の減損損失が原因

  • コロナ以降回復しているが、多額の減損損失があったり、売上総利益率が低下していることからも今後稼ぎ続けられるかは注視が必要

  • 配当額のバランスは良いが次も赤字だった場合の配当には注意が必要。今後も利益額が増加すれば配当金の増加が期待できる。

  • 短期的な資金繰りについてすぐには問題にはならなさそうだが、注視が必要

  • 設備投資は行っているので今後の売上増加、収益改善に期待

評価

成長性:3
収益性:2
安全性:3
生産性:3
配当:4 
合計:15/25

ここまで読んでいただきありがとうございます。コメントにどの企業の分析をやって欲しい等書いていただければ分析します!

出典:EDINET閲覧(提出)サイト https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100QXTB.pdf?sv=2020-08-04&st=2024-06-12T11%3A26%3A17Z&se=2033-06-21T15%3A00%3A00Z&sr=b&sp=rl&sig=RAHSWnowGv9PO4MWnNYc%2Fs4oPbwmMVCpLBd143gODTQ%3D

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