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院長先生の融資・借入の話

こんにちは。あつおです。
創業時の内装工事や医療機器の購入、改装改築、分院展開など、院長先生と融資の話は切っても切れません。
ですが、どのように融資を使ったら有利なのかは、余り事前に情報を知るきっかけもないし、知った時には終わっているのではないかと思います。なにせ、普通なら一生に2~3回しか必要ありませんし、しかも必要となったらまぁまぁ迅速に必要なので、選んでいる暇がないというのが実情かなと思います。

融資実行は事務長の仕事

融資については、最終的には院長先生の本人確認が必要ですが、それ以外の多くの仕事はほとんど事務長が代行することができます。
しかし、外注事務長(事務長サービス等)ではやってくれませんので、まさに所属事務長の本領発揮と言えるでしょう。

主にどんなことをするのか

融資実行までに行われることは以下のことです。
1)金融機関に融資を受けたいと連絡
2)膨大な資料の提出
3)院長個人の本人確認
4)契約
5)実行

ここで問題となるのは
・どこで借りるのか
・膨大な資料を集める

の2点になります。

どこで借りるのがお得か

融資に関しては、見るべき場所がいくつかあります。

1)金利
金利に関しては、もちろん安いほうがよいです。
2024年現在でも、内容を選ばなければ、30年1億円0.5%なんていうものも存在しています。返済総額は1億700万円です。
片や、10年2%というものもあり、1億1000万円にもなります。
ただし、金利だけで選んではいけません。

2)据え置き期間
据え置き期間は、返済を開始する時期を遅らせてくれるものです。
例えば、10年の返済を、1年据え置きということは、1年間は支払いが開始されないが、2年目から10年目までの9年間で返済を行うということです。
創業時には、仮に4月開業だとしても、初めてまとまった入金があるのは「2か月後」の6月になります。融資を受けるもの以外にも、物品購入・採用費・人件費など相当な出費があります。
それを1年間まってもらえるというのはとてもありがたいものです。

3)担保性
融資を受ける際に「担保設定」が必要になることがあります。事業専用の土地の購入などで、購入する土地に担保設定があるなどであれば、万が一事業が失敗しても、その土地が使えなくなるだけです。
しかし、「テナント開業」で、「自宅を担保」などにした場合には、万が一事業が失敗すると、自宅もなって、しかも借金が残るという事態になります。
とはいえ、担保設定がなかったとしても、事業失敗時には院長先生個人にのしかかる支払いは多いのですが、それでも担保として取られるのと、売買で契約が発生するのではまったく結果がことなります。
「どこも融資をしてくれない・・・」みたいな状態でしたら担保設定は致し方ないのかもしれませんが、例えば「担保あり」なら金利が下がるなども十分考えられますので、おいそれと担保OKとはしないように気をつけましょう。

医師会または歯科医師会に加入し提携の融資を受ける

例えば、東京都での開業の場合、歯科の場合は「東京都歯科医師会」、医師の場合は「医師協同組合・医師信用組合」など。特徴としては
1)専業貸金 (医師・歯科医師とか事業が固定されている)
2)医師会・歯科医師会に入らないと使えない
3)金利がむちゃくそ安い
4)担保や保証人はしっかりとられる
医師会・歯科医師会など「面倒だ」と思われる院長先生方も多いと思いますが、「市の検診」や「市の歯科検診」など、市から委託される「健康診断」などがありますし、学校医や園医なども期待でき集患にもつながります。また、夜間救急での勤務などの業務にも日当がでます。面倒なのは「集会・定例会・飲み会・ゴルフ会」など、好きでもないのに行かなければならない点なので、昔はかなり強制されたようですが、今は参加率はそんなに高くありません。きちんと地域に根ざした保険診療を行うのであれば、絶対的に必要で、せっかく加入するのであれば、有利の融資を使うのを第一候補に入れていいと思います。
あ、美容クリニックとかやるなら、メリットゼロかもしれませんが。。。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は「創業融資」の意味合いが強いのですが、全然普通に融資もやっています。
特徴としては、
1)創業時に強い (事業実績がなくてもOK
2)担保をあまり設定してこない
3)代わりにちょっと金利高め
4)運転資金も借りられる
担保に入れる土地や、数千万単位の預金などがなくても、融資を受けられる可能性が高いです。(金融ブラックとかは無理よ?)
金利はある程度ありますが、2年据え置き10年ローンとかは、事業開始時にはとんでもなく助かります。

地銀

融資と言ったら銀行というイメージで銀行で融資を受けようされていませんか?さて、相当数のある銀行、まずはどこにいきましょうか。
いつも個人で使っているメガバンクで借りるのは、結論から言うと不可能です。前年売上の何%という数字しか見てくれませんので、創業の時点でNG。仮に前年決算が3億あっても、借りられたとしてあちらの基準だと1000万。そんなはした金貸してくれないというのが実情です。
メガバンクの融資は、個人事業の創業などにはまったく不向きで、いわば言うだけ無駄という感覚です。
なので2択です。
1)地方銀行
2)信用金庫
今、個人的に口座のある地方銀行があれば、そこで聞いてみてください。それがおそらく銀行の中では一番可能性が高いです。
そこが行けるなら、取引のない他の地銀も声かけてみて、金利などで比較してみるのがいいですね。
銀行でよい結果がでなければ、信用金庫がいいですね。開業する場所の近くで、googlemapで信用金庫を探して、どこでもいいのでお電話してアポイントを取りましょう。

そんなにたくさんいく必要ある??

あります。
多くの先生方が、順調に開業したあとにも、なんらかの理由で追加融資をうける可能性が高いです。
例えば、内装工事。
患者さんが増えてきたけど、受付が狭いので、いっそ改装しちゃおう
みたいな。
または、
となりのテナントも借りちゃって壁ぶち抜いて広くしよう
とか。
普通に 分院展開 してみたりとか。
これらは、結構どこへいっても貸してくれるんですよ。
目的があって用途がはっきりしていて先行投資だから。

でも、そうじゃない時もあるんです。
例えば、
近隣に競合ができてしまって、経営が思わしくないから、CTを導入して差別化を計り事業を立て直したい
とか。
賞与を払いたいがキャッシュフローがきつくて今月賞与が払えない
とか。
苦しいけれど、攻めの姿勢で、次の一手を打ちたい!というとき。
そんなときに、もうちょっと融資枠のある金融機関との取引履歴がとても重要になります。


協調融資(2つ以上から融資を受けること)

例えば、
医師信用組合から、内装工事代金を4000万。
日本政策金融公庫から、医療機器購入費用を3000万。
信用金庫から、運転資金を1000万
のような借り方です。
協調融資にはメリットが2つあります。
1)1行では難しい額が、2行なら借りられる場合がある
2)将来の資金調達の幅が広がる

融資を受ける際には、3000万円というのが一つのボーダーになります。
それは、自店舗内だけで決済できる限界です。3000万なら支店長決済だけど、3000万を超えると本社決済が必要になる場合が多いです。
となると、審査に時間もかかりますし、厳しい目で事業性や、院長先生自身の属性を見られます。

また、どんなに院長先生がよい経営を行っても、1クリニックで上げられる利益はある程度上限があります。そして、その院長先生が借りられる総資金も上限があります。それが3億円と言われます。
1クリニックを立ち上げるのに約1億かかります。そして、3~6か月で単月黒字転換し、成功事例をたたき出します。
そして分院展開を行います。自医院と同じスタイルで別の場所で戦ってもいいですし、自医院の近くで違うスタイルで戦ってもいいと思います。
とにかく、「勝てる見込みがあれば出店したい」と、2つめのクリニックを出します。次は1医院目よりも大きく、1.5億借りてやるぞ!!と。
また半年で単月黒字転換した!!
よし、次出すぞ!!  ➡ あ、もう貸せません。限界です。

っていうことが起きます。
そうなったときに、次の金融機関にまたあのゼロからの融資を受けなくてはなりません。

昨年度3億の売上があって、利益が9000万もあるのに、なんで3000万しか貸してくれないんだよ

よく聞くお言葉

3000万なら自支店内で決済できるんで、絶対利益出してるし大丈夫だけど、本社決済となったら本格的な事業計画を作って、マーケティングもやって、いやでももうすでに2.5億貸しているし、どっちにしてもあと5000万しか貸せないよね。じゃあ、支店決済の3000万しか貸せないわ。

となるんです。
なので、1つの金融機関で多額に融資を受けるよりも、1クリニック目では
医師信用組合から、内装工事代金を4000万。
日本政策金融公庫から、医療機器購入費用を3000万。
信用金庫Aから、運転資金を1000万

のような協調融資を受けておいて、2つ目のクリニックでは
医師信用組合から、内装工事代金を9000万。
日本政策金融公庫から、医療機器購入費用を3000万。
信用金庫から、運転資金を3000万
のように借りて、3つ目のクリニックでは
医師信用組合から、内装工事代金+医療機器を1億2000万。
日本政策金融公庫から、運転資金を3000万。
信用金庫から、運転資金を3000万
というように、安定して融資を受けて事業を拡大することができます。

協調融資のデメリットは?

はい。あります。
それは、時間がかかるということです。

ちなみに、日本政策金融公庫での運転資金融資は、3000万なら最速で1か月あれば着金します。
ところが協調融資となると、A銀行とB信金と公庫で利率やら金額やらにらめっこが始まります。また、着金のタイミングも今すぐ!!ってわけに行かず、早くても3か月以上はかかると思ったほうがいいです。
なので、計画を開始した段階から、早期に相談を開始し、資料を提供し、資金面がクリアーになってから、契約書に捺印をするようにすべきです。

でも、そんなことやってる暇なくない?

はい。院長先生がそんなことをやっていたら、診察が滞ってしまいます。
なので、事務長を採用して、事務長にやってもらいましょう。
事務長採用に関してお困りでしたら、ちょっとはお手伝いできるかもしれません。とても希少な「事務長」という職の採用と育成に特化した事業を行っています。
ご興味あればぜひどうぞ。


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