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各社のブラウザはなぜ無料で提供されているのか - そのビジネスモデルを考察してみた

こんにちは、Vivaldiブラウザです。

多くのブラウザは、無料で使用できますよね。ビジネスモデルはどうなっているのでしょうか?見てみましょう。

<この記事のポイント>
★ 「ブラウザ=検索エンジン」では、ありません。
★ ブラウザの収益源は、検索エンジンからの割合が大きい。
★ ブラウザを無料提供するからには、どこかでお金は動いている。

ブラウザと検索エンジンは、別のもの

(検索エンジンの)Googleを組み込んだGoogle社のブラウザ「Google Chrome」の市場シェアが高いことから、「ブラウザ = 検索エンジン = Google」と思っている人もいるかもしれません。

インターネット上にある無数のウェブサイトや画像などを整理して、ユーザーが入力した検索ワードと特性に応じた検索結果を返してくれるもの、それが検索エンジンです。

世の中にはGoogle以外にも、多くの検索エンジンがあります。WikipediaやAmazon内の検索機能も一種の検索エンジンですし、収入によって植林活動を行うEcosiaや、ユーザーの追跡を行わないDuckDuckGo、特定の言語圏で高いシェアを持つものなど、多種多様なものがあります。

検索エンジンは通常、ブラウザを通じてアクセスできます。ブラウザこそがパソコンやスマホなどのデバイスに入っており、ブラウザでウェブサイトの安全性が検証されたり、ウェブサイトが表示できたりします。

行きたいサイトのアドレスを知っているのであれば、検索エンジンの力を借りなくても、ブラウザからそのページを訪問することもできます。例えば、アドレスバーにyahoo.co.jpと打って確定すれば、検索エンジンを経由せず直接Yahoo Japan!に行けますね。

私たちVivaldiのようにブラウザを開発する会社も複数あり、Apple社もSafariという自前のブラウザを持っていますよね。SafariではGoogleが、VivaldiではBingがデフォルトの検索エンジンに設定されていることから、必ずしもブラウザを開発する会社が検索エンジンも作っているわけではないことを、イメージ頂けるかと思います。その逆もまた然りです。

マネーは検索エンジンからブラウザに流れる

「ブラウザ ≠ 検索エンジン」という前置きを踏まえた上で、様々な情報がオープンな無料ウェブブラウザFirefoxを例に、無料ブラウザのカラクリを見てみましょう。

Firefoxを手がける非営利団体Mozilla Foundationの年次報告による2018年の団体収益には、95%が「Royalties」から来ているとあります。

同資料には、以下のようにあります。

Mozilla has entered into contracts with search engine provides for royalties which expire through November 2020. Approximately 91% and 93% of Mozilla's royalty revenues were derived from these contracts for 2018 and 2017, respectively, with receivables from these contracts representing approximately 75% and 79% of the December 31, 2018 and 2017 outstanding receivables, respectively.
Mozillaは検索エンジンプロバイダーと、2020年11月まで有効なロイヤルティー契約を結んでいる。2018年と2017年の12月31日時点における未収債権の約75%(2018年)、79%(2017年)を占める債権を含めると、Mozillaのロイヤルティー収益の約91%(2018年)、93%(2017年)がこれらの契約から生じている。(筆者訳)

Mozillaの収益の約9割が、検索エンジンプロバイダーとの契約から生じている。つまり、検索エンジンからの収入が大半なわけです。

(2020年8月13日現在の最新版Firefox 79のデフォルト検索エンジンであるGoogleを例にとると)「世の中にいくつも検索エンジンがある中で、FirefoxユーザーのおかげでGoogleでの検索が発生する分、FirefoxはGoogleにとって価値がある」という構造が、この検索エンジン→ブラウザのマネーの流れを生んでいると考えて良いでしょう。

Firefoxと同じく、Vivaldiも(Googleを除く)検索エンジンとのレベニューシェアがあります。加えて、上のブログ記事にあるように、初期設定時のブックマークとして掲載されているサイトとのレベニューシェアなどもあります。

Google Chrome内でのGoogle検索においては、いずれも同じ会社のサービスなので、「ブラウザベンダーが検索エンジンからお金をいただく」という形にはなっていないはずです。

ですが、Chromeの利用を経て得られたユーザーデータは、Googleユーザーへのより効果的な広告に結びつけられるので、広告主にも高い料金を要求しやすくなる可能性が考えられます。その根拠として、Chromeを通じた集計情報が広告主に共有されることがある旨が、「Google Chrome のプライバシーに関するお知らせ(最終更新日: 2020 年 5 月 20 日)」から窺えます。以下、当該ページの一部引用です。

Google は、個人を特定できない集計情報を一般公開したり、サイト運営者、広告主、ウェブ デベロッパーなどのパートナーと共有したりすることがあります。

Apple社のSafariも無料で利用できますね。一説によると、iOS上のSafariでGoogleがデフォルト検索エンジンと設定されるために、Google社は2018年にApple社に1兆円を支払っていたようです。

ブラウザは毎日何億人ものひとが使う、生活に欠かせないアプリケーションです。長年多くのブラウザが無料で成り立ってきたということは、どこかで相応のお金が動いていることになります。

検索エンジンやブックマーク以外にも、ビジネスモデルは存在します。VivaldiのCEO、ヨン・フォン・テッツナーが創設・牽引したOperaは、2005年9月まで有料版がありました

レンダリングエンジン開発コストには莫大なコストがかかるため、VivaldiはChrome、Edge、Opera、Braveなどと同じくオープンソースプロジェクトのChromiumをベースにしています。

Braveはウェブサイト・ユーザー・広告主間でレベニューシェアするなど、収益構造にブラウザの個性や開発会社の指針が現れていますね。

つい数日前、ZDNetはFirefoxとGoogleの契約延長を報じたばかり。今後も様々な展開が予想されるブラウザ事業のファイナンス面にも、ぜひご注目ください。

では、Ha det!


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