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ビタミンゼミ第23回 スタートアップが知っておくべきメディアPRの方法|白石 健太郎教授

今回は、朝日メディアラボベンチャーズ株式会社の白石 健太郎さんを教授としてむかえ、スタートアップの「広報」について教えていただきました!まだまだ知名度が低いスタートアップでも雑誌やテレビに取り上げられているような企業は、どんなことをしているのでしょうか…!“取り上げてほしいメディアを選んで自ら売り込んでいく”と言うスタートアップの「広報」術を学ぶことができます。

ビタミンゼミってなに?
ビタミンゼミについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

朝日メディアラボベンチャーズ株式会社の白石 健太郎さん

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朝日メディアラボベンチャーズ株式会社で投資担当ディレクターの白石教授(@ShiraishiK2)に講義をしていただきました!

2001年朝日新聞入社後、同社販売局にて600店以上の新聞販売店のエリアマネージャーを担当。2013年に新規事業部門のメディアラボに参画し、タイで教育事業、朝日アクセラレータープログラムの立ち上げ等を実施。2017年より朝日メディアラボベンチャーズにて、スタートアップ投資をされています。

また同社が実施されている朝日メディアアクセラレータープログラムは、2015年から2019年まで過去6回の開催をしており、現在は7期目を実施中です。今までに31社を支援しているベンチャー支援プログラムで、参加対象のスタートアップはVCから本格的な資金調達を目指すシードからシリーズAのステージが中心となっています。

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スタートアップが知っておくべきメディアPRの方法

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今回学べることは大きく2つ。特にシード、アーリーのスタートアップに特化して、「自分たちを取り上げてくれそうな記者の探し方」と「記者が取り上げたくなる様な内容を正しく伝える方法」が学べます。

❶メディアの探し方を学ぶ
取り上げて欲しいメディアを探すのではなく、取り上げてくれるメディアの記者を探す
❷メディアへの伝え方を学ぶ
自分が伝えたい内容ではなく、相手が関心を持つ内容を伝える  
聞き手を理解することが重要

メディアの探し方

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一番効果的なのは、すでにメディアとつながりがあるVCから直接紹介を受けることです。VCは、今までのスタートアップ投資を通じてメディアと一定の関係値があるので、まずは“他力を使う”という意味で既存のエンジェル投資家やVCを頼ってみると良いのではないでしょうか。
次に少しだけハードルを上げてみます。まず競合相手が取材されているメディアを調査します。その後、“日経テレコン21”というサービスを使い、競合先を取材した記者を見つけてアプローチをしてみましょう。重要な点は自分が取り上げて欲しいメディアを探すのではなく、競合をすでに取材しているメディアを探すことです。そのほうが皆さんを取り上げてくれる可能性が高くなります。日経テレコン21は、普通に使うとお金がかかるので、近くの大きな図書館で利用してみましょう。
そして最後は、自力で頑張る方法です。取り上げてほしいメディアやその記者を狙ってアプローチをします。単にお問い合わせをしても取り上げてはもらえないので、過去にその記者がどんなテーマを、どの様に取り上げているのかを詳しく確認しておきましょう。相手の記者が興味を持っているテーマを頭に入れておくことで、その後のアプローチが楽になります。

①他力
既存のエンジェル投資家、VCから紹介を受ける

②他力+自力
競合先のコーポレートページを利用する
※例として「食べチョク」を運営される株式会社ビビッドガーデンさんのコーポレートページをご紹介します。

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(1)ベンチマークとなる競合企業を羅列する
(2)競合先に広報ページから、取材されているメディアをリストアップ
(3)競合先に広報ページがない場合、競合の過去のプレスリリースを探す
(4)(2)・(3)で得た情報から日経テレコン21を使って記者を探す
(5)お問い合わせページから連絡をしてみる

③自力
(1)雑誌媒体・新聞社を探したい場合”日経テレコン21”を使う

日経テレコン21とは新聞各紙や雑誌、国内の企業データベース、人物プロフィルなど、幅広いビジネス情報を収録。

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●記者の探し方
①過去の報道記事を調べる(署名記事を探す)
・同業他社が掲載されている記事の記者を探す
・同業他社がない場合は別のキーワードで検索
② 媒体ごとにターゲットとなる記者を調べて探す
③ 上の作業を3社~100社調べてみる
④ 各媒体の記者名と所属を確認したのち、各社の問い合わせ
ページに”興味ありますか?”と連絡をする 

(2)TV局を探したい場合

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テレビ出た蔵”とは、テレビに出た情報を検索できるサービスです。企業名で検索するだけで、過去の出演情報が確認できます。
※例としてsnaq.meさんが王様のブランチに出演された際の様子をご紹介します。

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❷メディアへの伝え方

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「聞き手を理解する」ということに尽きるのですが、自分が伝えたい内容ではなく、相手=記者が関心を持つ内容を伝えることで取り上げてもらえる機会を増やしていきましょう

相手のニーズを考えること

・「記者が聞きたい(知りたい)ことは何か?
・「記者はどうしたいのか?」
・「どうしたら記事を書きたくなるのか?」
・「記者にどう行動して欲しいか?」
=そのためには、相手にどう考えさせ、どう言う情報を与えるべきか?

相手によって興味の対象が異なる

メディアでも3種類に分類することができ、それぞれ取り上げたい内容に特徴があります。PRで大事なのは、誰に対して情報を伝えるかを考える事、つまり聞き手を考えて手を打つということです。

①投資家
  →儲かるか、儲からないか
  (サービスが収益や価値にどう転換されるのか)
②顧客
  →企業の利益よりも製品に興味、その製品やサービスが
   自分たちの要求をどう満たすのか 
③従業員
  →働いたら自分がどう成長できるか、
   失敗した場合に直面するリスクは何か
④メディア
  →媒体によって聞きたい内容が異なる
 (1)トラディショナルなメディア(特に新聞社)
    → 社会的意義や世の中に伝えるべき新しい価値があるかどうか
 (2)C向けメディア
    →顧客と同じで利益に興味はなく、ユーザーの要求を
     どう満たしてくれるのか
 (3)専門誌(特にtoB向け)
    →※今回の講義では割愛

既存のピッチ資料を改変しバージョンを増やす

相手によって資料を変えていくことが重要です。大きく分けると、下記の様に3つに分類されます。基本的には、投資家向けの資料をベースにショーピッチやPRピッチを揃えていくとよいかと思います。

1 資金調達ピッチ <投資家向け> *全ての基本となる資料
 →儲かる話、ストーリー重視 (10-15min)
2 ショーピッチ<一般向け>
 →夢ピッチ、デモデイ、ピッチ大会向 (3-5min)
3 PRピッチ<メディア向け>
 →プレス・メディア向けに伝えるポイントを変える (5min)

メディア向けPRピッチで伝える内容

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① サービス紹介(誰でも分かる内容)
② 業界紹介 
 ・ 業界が盛り上がっている(注目されている)と言う紹介をする
③メディアによってアピール内容を変えていく

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追加でメディアに取り上げられるためにできるポイント5点を教えていただきました!

1 プレスリリースを書くときのポイント4点

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(1)取材できる(取材をあっせんできる)人・事例・場所などをいくつか用意しておくこと

・記者は常に複数の取材を抱えていたりするので、"思ったよりも
 事前準備に時間がかかりそうなネタ
”を避ける傾向がある
・リリースの内容から、具体的に取材できる人・事例・場所などが
 用意されている事がわかると、取材してみようか
と思う傾向がある

▶具体的には以下の通り
  (1)著作権フリーの写真を複数枚用意している
  (2)サービス利用者やユーザーを取材できることが記載
  (3)イベントの日程や内容を細かく記載している

(2)直接そのリリース内容と関係なくても、業界全体を見通せる材料を用意しておくこと

自社のリリース内容に直接関係がないとしても、業界全体を見通せる材料(データ)を提供する事が重要

<なぜか?>
公平性の観点から1社だけの取材がしにくい。単なる商品宣伝になってしまうと広告になってしまうため
同業他社の情報も掲載しておき、”この領域はホットですよ”と言う業界状況を伝えておいたり、市場に関連する具体的な数字の記載などがあったりすると、記事にしやすい

(3)遅くとも発表の2週間前までには送っておくこと

• 記者は常に複数の取材を抱えていたりするので、「明日からサービス
開始」とあれば、興味があってもそもそも取材ができない

• 日中にリリースが送られてきても取材や翌日の記事掲載準備のためほ
ぼ対応する事ができず、確認できても翌日になる事が多い

▶︎よって、少なくともプレスリリースは解禁日2週間位前に送ること。2週間あれば、何とか取材の調整ができる可能性が上がる

(4)twitterを会社名ではなく、個人の名前で運用する

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①サービス概要はTwitterでチェック
LPで内容を確認するのではなく、Twitterでチェックする事が多い
②サービスがどの程度盛り上がっているかどうかを確認できる
サービスがSNS上でどの様な評判になっているかも確認している
③取材依頼が出しやすい
メール:やり取りに時差が発生
Twitter:時間がなくとも取材依頼が出しやすい、かつ返信もすぐに頂ける事が多いので重宝している

2 新聞記者に取材をされる3つのポイント

(1)他には伝えていないプラスαの情報を用意しておく

当たり前ですが、どこでも手に入る情報は敬遠される傾向にあります。この情報は〇〇だけ、と言う伝え方だと新聞記者には特別感や他との違いが打ち出せるので、取材したくなります。

(2)広報担当者の名前とその人個人が結びつく様なエピソードを共有しておくこと

新聞記者は年間通じて相当数の人たちと会っています。そのため記者の記憶に残る様な強い印象を残しておきましょう。次会った時に、名前は忘れられていてもインパクトベースの記憶が残っていると、何となく次は取材してあげたくなる気持ちになります。

例1:こう見えて元警察官(官僚)です
例2:毎日餃子を食べる記録を更新中で現在は580日連続で達成しています

(3)記者の名前が分かったら、事前に他でどんな記事を書いていたかをテレコム21で確認しておく

記者の名前でWEBやDB(日経テレコン)を検索すれば、その記者が過去に書いてきた記事を確認できます。事前に調査しておき一言、”◯◯さんが==に対して書いた記事を読んだ事があります。もしかしたらこの分野にもご興味があると思い連絡しました”と言うのはかなり好印象です!
記者も人間です。特に自分の記事を読んでくれている人には優しくしてあげたくなるそうです。

記者も人間。特に自分の記事を読んでくれている人には優しくしてあげたくなるでしょう。

3 記者の取材タイプに合わせた話し方

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ペンだけで書く記者のときは「このまま話続けてもいいですかね?」とワンクッションおいて上げると、自分の伝えたい内容が伝わりやすくなるでしょう。

(1)レコーダー利用の記者
 →バンバン話しを進めてOK
(2)ペンだけで書く記者
 →書き終わるまで待ってあげると喜ぶ

4 記者に会った後のコミュニケーション

インタビューが終わったら「本日はありがとうございました」と一言コメントを入れてfbで友達申請をしましょう。ここからは営業と同じで、何かしらの情報を1ヶ月に1回は共有して下さい。共有することがなければ、記者の書いた直近の記事を読んで感想を伝えましょう。返信がなくても気にしなくて大丈夫です。メッセージは読んでいるものの、返信できないことが多いのでおくり続けていればいつかは返信が来るはずです。

(1)面会後は、facebookで名前を探して友達申請をしておく
(2)1ヶ月に1回は何かしらのニュースを共有する
(3)テレコンで記者名から記事を探して読んでおく、
   そして感想を伝える(事前に知っていればさらに良し)
(4)返事がなくても気にしない

5 専門誌の扱い方(B向け)

スタートアップ初期の頃はまだまだ有名ではないので、専門領域のストレート記事や代表インタビューに取り上げられることは難しいです。可能性があるとすればトレンドまとめとして複数社の中の1社として取り上げられるケースが多いです。

専門誌のニューストレンドは4つ(B向け)
1)ストレート記事
2)代表インタビュー
3)トレンドまとめ
 (1社だけではなく複数社の掲載)

4)有料記事広告

ここで重要なことは、複数社の中でも自社と他社との大きな違いを洗い出しておくことです。"この機能なら自社、他社ならこの機能"というポイントがまとまっていれば、そこがクローズアップされて紹介されます。

専門誌で伝えるべき内容
① サービス紹介(誰でも分かる内容)
② 業界紹介 
 ・ 業界が盛り上がっている(注目されている)と言う紹介をする
 ・×××という会社がある(他社紹介) 
 ・その中で自社と競合他社との大きな違いを洗い出す
 ・ この機能なら”弊社”・”他社”というポイントをそれぞれ出す
*直接の競合でなくても、業界が似ている領域でも良い

質問コーナー

Q:広報のKPIは行動数に置くのがベターですか?

A:基本メディア側から動いてくれることは無いので、まずはメディアのリストアップをしてそこから返信を月2件もらうみたいなところにK P Iを置くと良いのではないでしょうか。連絡が返ってこないときは伝え方が悪かったりします。記者の方は添付資料を見ないことも多いので、“添付資料のポイントはここです”みたいなコメントを入れておけば見てもらえる機会が増えるでしょう。また、タイトルには「〇〇様へ」と入れておくと良いでしょう。そういった細かい気遣いや、自分のことを印象づける文を含めましょう。
さらに、メールだけで返信がないときは「〇〇さんいらっしゃいますか」と営業のように直接電話をして見ると良いでしょう。なかなかいらっしゃらないことが多いので、「メールを確認してくださいとお伝え下さい」と一言入れるだけでも良いでしょう。

Q:Twitterのリツイート数は記者からどう見られているのでしょうか。意外と代表が何を話しているかとかが重要でしょうか。

A:そのサービスやプロダクトが実際に世間で盛り上がっている(受け入れられている)かどうかみたいなところで、リツイート数やU G Cは参考にしていると思います。ツイッター名は代表者の個人名で運用して下さい。会社名と名前が入っていると、記者が直接連絡を取りやすいので。

Q:調達のプレスリリースは出したほうがいいでしょうか?

A:数千万円の調達であれば、今はそこまで取り上げられないイメージがあります。大企業との業務提携と資金調達情報を合わせてリリースすると、よりプラスの情報になって取り上げられるでしょう。メディアは大企業に興味はあっても、初期のスタートアップにはまだそれほど興味がないので、連携先の企業との合わせ技リリースは重要です。
ただ、メディアによっては調達のみのプレスリリースでも取り上げてくれるメディアもあるので、そこにはユーザー獲得ための情報や次の投資家候補者向けの情報など伝えたい内容を整理してプラスすると良いでしょう。

Q:資料をどのタイミングでおくるべきでしょうか

A:バレンタインやクリスマスなどのイベントごとにお伝えするというのも手です。その場合事前に戦略を立てておくと良いでしょう。イベントごとと連携されていると、メディア側も取り上げやすい傾向にあります。また、専門誌は業界によって閑散期があるので、そこを狙っておくるとおすすめです。

Q:限られたリソースの中で広報は経営重要度をどう捉えるべきでしょうか。

A:やっぱり最初はプロダクトを磨いて、ユーザーを獲得することに専念していきましょう。PMFが達成されたら、リレーションを作りたいステークホルダーを明確にして戦略を立てて広報をはじめましょう。例えば、社員を募集したいとか、資金調達をしたい、ユーザーを獲得したいなどそれぞれの目的を定めるとどのメディアにどういう形で露出したいのかが決まるので、リソースを割くべき対象になるでしょう。
またシード、アーリー時の広報に関しては、起業家が直接やっていくことをおすすめします。広報担当を通さず、代表自らが広報をした方が、メディア側にも間違った情報は伝わりませんし、何よりもメディア側とのコミュニケーションが円滑にできると思います。エアクローゼットの代表の天沼さんも、立ち上げ当初の2年間は徹底的に自分でブランディングにこだわってP Rを展開していたと、何かの記事で言っておりました。

最後に

ビタミンゼミ第23回は、広報について朝日メディアラボベンチャーズ株式会社の白石 健太郎さんに講義していただきました!メディアの探し方とメディアへの伝え方が超具体的にわかりやすくしれたことで、これからのスタートアップ広報の在り方が変わってくるような気がしました。

❶メディアの探し方を学ぶ
取り上げて欲しいメディアを探すのではなく、取り上げてくれるメディアの記者を探す
❷メディアへの伝え方を学ぶ
自分が伝えたい内容ではなく、相手が関心を持つ内容を伝える  
聞き手を理解することが重要

白石教授(@ShiraishiK2)はTwitterでVCならではのTech情報や投資先の企業の情報を発信しています!スタートアップで働くみなさんはぜひフォローしてみましょう!

▼朝日ラボベンチャーズについてはこちら


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