マンガの紹介・感想を自由に書いていく(その1)
この記事では、好きなようにマンガを紹介したりその感想を書いていきます。
作品の新旧に関わらず、その時紹介したいものを紹介します。
今回は3作品を紹介します。
神さまがまちガえる / 仲谷鳰(既巻2冊)
◆どのような作品か
"バグ"と呼ばれる超常現象が常に起きている世界を舞台に、シェアハウスで暮らす中学生の紺や大家のかさねを始めとした、人々の暮らしを描く日常系SFマンガ。
現実の世界に近いながらも、この作品の人々は超常現象の存在を当たり前のものとして認知しながら生活を送っている。つまりバグとの共存が様々に行われているのである。
例としてバグの影響で人が空中を歩けるようになるエピソード(1巻)では、はじめはみな恐る恐る空中へ足を踏みしめながらも、割かしすんなりバグに適応しつかの間の空中散歩を楽しんだり、日常の何気ないことに活かしている様子がたくましく描かれている。
◆ポイント
この作品の超常現象は、それ自体は非現実でありながらも同時に日常の延長であることが徹底されているのがポイントです。まるで自然科学を学ぶときのようなわくわくした気持ちで読むことができます。
仲谷鳰先生の過去作『やがて君になる』は恋愛マンガでしたが、この作品は温かみのある人間描写はそのままにまったく新しい境地を切り開いてくれそうです。
少年のアビス / 峰浪りょう(既巻11冊)
◆どのような作品か
地方の小さな町を舞台とした、人間関係の深いしがらみによって生まれる狂気じみた愛憎や事件を描いたボーイ・ミーツ・ガールものの青年マンガ。
家庭や町の人間関係に"縛られ"生きていた高校生の黒瀬令児と突如町に現れた現役アイドルの美女青江ナギを始め、幼馴染のチャコ、ナギと同居する小説家の似非森、同級生で町の権力者の家柄の峰岸、担任の柴沢、令児の母親の夕子など多くの人物の想いが交錯し深い業を成していく。
◆ポイント
地方の町という(精神的な意味での)閉鎖空間に伏在するとてもつもなく深い絶望が作品の根底にあり、土地に根差したしがらみの恐ろしさを余すことなく描いています。
最初は小火に過ぎなかったはずの感情のほつれが周り人間の抱えていた問題に次々と延焼し、勢いを増した負の連鎖は主人公が生まれる前から続く業までをあぶり出していきます。
なお、リアル志向の作品かと思いきやかなり劇場的な展開が多いので、それによる好みの差はあると思います。
あの頃の増田こうすけ劇場 ギャグマンガ家めざし日和 / 増田こうすけ(全1冊)
◆どのような作品か
「ギャグマンガ日和」の作者として知られる増田こうすけによるエッセイマンガ。
アルバイト生活をしていた氏がギャグマンガ家という天職と出会い、ギャグマンガ日和の連載開始に至るまでのエピソードがマンガとして描かれている。
◆ポイント
まず言えることとして、エッセイマンガなのにシュールで笑えるシーンがかなり多いです。これはもう流石としか言いようがなく、計算なのか天然なのかも判然としない氏のセンスがいかんなく発揮されています。
また、読んで分かるのが氏がとんでもなく人見知りであることです。人見知りに由来する独特のネガティブ思考が度々登場します。
一方で読み取れるのが、氏のマンガ家として才覚です。この作品は「時には挫折もしたけど諦めずに努力したら夢がかないました!」というありがち(?)な成功譚ではまったくなく、むしろ「試しにマンガを描いてみたら、なんかめっちゃ才能があるっぽいことが判明した……」というある意味奇妙ともいえる成功体験となっています。作中にも、本人が「何でマンガのことだけこんなうまくいくんだ?」と思い返すシーンがあるほどです。
もちろん、画具がうまく扱えずに苦労したとか、幼馴染と再会したら立派な社会人になっていて落ち込んだとか、赤塚賞の授賞式で死ぬほど緊張したとか氏の苦悩や葛藤は幾度となく描写されていますが、客観的な事実だけを追えば氏はほぼストレートにマンガ家へと登り詰めているのです。
もう一点興味深いこととして、氏は作品の設定や題材について悩むことはあってもギャグの内容については悩んでいる描写がほぼありませんでした。
締め
今回は以上の3作品を紹介させていただきました。みなさんのマンガ選びの参考になれば幸いです。
(追記)
マンガ紹介の記事をまとめるマガジンを作成しました。
よかったら是非他の記事もご覧いただければと思います。