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真っ暗な沼の底から抜け出す

先週末の衝撃的なニュースがこの数日ずっと心の中に鉛のように残っている。私は彼の特別なファンでもなく、最近の出演作だって観ていなかった。それなのに、なぜだか自分でも不思議なくらい、その事実に胸がしめつけられるくらい苦しくて悲しくて、涙が溢れて止まらなかった。

衝撃の第一報のあと、関連するニュースや追悼のメッセージなどを読み漁ってしまい、ずっと泣き続けていた。そして、何がそんなに自分に動揺を与えているのか、考えていた。

向き合えずに蓋をした未消化な悲しみ

私には彼と同じ亡くなり方をした親族が2人いる。もう20年近く前の大きな衝撃と、そして8年前にはどこか予想していたような、そんな身近な人の死を経験した。だから、そのこととリンクしたのかも知れない。身内のことだからこそ、そこには悲しみと同時に後悔や罪悪感とそして無念さがあって、それは恐らくとても真っ向から向き合っては自分の精神がもたないようなそのくらい深いものだったから、だから私たち家族はそれらと向き合わないことに決めた。そしてその悲しみにも蓋をしていたのだと思う。

彼のニュースで涙が溢れて溢れて止まらなかった。たぶん、過去に閉じ込めた分も溢れ出して一緒に流していたのだろう。やっと嘆くことができたような気がする。

死んでしまったことより、死にたいと思っていたことがつらいの

そしてそれだけじゃなくて、私の心に鉛のように重くのしかかっているのは、彼に対する共感のようなものだ。もちろん彼がそのことに至ったとき、どんな精神状態だったかは実際のところは分かり得なくて、これは憶測でしかないんだけど、たぶん一種のうつ状態だったのだろうと思う。
世間で「死を選ぶしかなかったのか」というような書かれ方をされるのを目にすると違和感を感じる。選ぶとか、決断するとか、生きようと思えるとか、そういう状態じゃなかったんじゃないだろうか。

これは本当に憶測。なぜかというと私の身内は恐らく2人とも一瞬の衝動的な行為としての結果だった。自殺について詳しい実態を知っているわけじゃないけど、恐らく多くのケースではある種のうつ状態のときに一線を超えてしまうということなのではないかという気がする。

そして何より、私自身もその衝動に掻き立てられる気持ちがよく分かるからだ。自他共に楽天家と言われてきた私だが、実はうつの経験がある、というかいまもある。

最初は8年前の身内の件があった後に、仕事のストレスが限界にきてほんの一時だけどうつ状態になったことがある。頭が働かなくて、いつも当たり前にやっている仕事ができなくて、何も考えられなくて、それでも普通にいつもどおりオフィスにいて人とコミュニケーションできているように見えるから他の人からみたら全く気が付かないし、自分でも自分の状態がよくわからない。だけど頭の中は霧が掛かったようにもやもやとしていて、そしてもうダメだ自分はダメだどうにもならないという絶望感でいっぱいで、そしてふと口から漏れそうになった言葉は「死にたい」で、その言葉に自分自身で驚いて我に返ったのを覚えている。

そして昨年末にも同じような状態を体験した。一見普通に仕事をして普通に友だちと会って、普通に家族との時間を過ごしているように見えるのだけど、なにかとやる気がでなくてつい無為な時間を過ごすことが多くなる。そしてそのうち頭の中では常にネガティブなワードがぐるぐる回っていっぱいになる。
自分はなんてダメなんだ、何もできなくて、ちゃんとやってこなかったから恐ろしいほどの時間を無駄にしてしまった、もうダメだ取り返しがつかない、という絶望感でいっぱい。やり直しはもう無理だ、死ぬしか無い。。。それは本当に苦しくてつらくてしんどくて、、、それは抜け出せない真っ暗な沼の底にいるようだった。

彼もあの真っ暗な沼の底で本当に苦しくて辛くてしんどい思いをしていたのかな、、、それを思うと、胸がつぶれそうになる。

残された人たちは理由を探そうとする。何か周囲の人からみても「そういうことがあったなら、それは死にたくなっても仕方ないかもしれない」というような納得できる理由が欲しくなるのだけど、そんなものはないと思う。

私だって、自分を客観視すればなぜそういう状態になるか分からないくらい、外からは環境的にも普段の生活も何も困っていないし真っ当に生きているように見えると思う。それでも、自身の精神世界の中では本当にもう生きていられないと思うような状態が起こるのだ。つまり理屈ではないのだ。

苦しんでいる人に知っておいてほしいこと

こんな何にも前向きじゃないことを書いてどうするんだと思うので、あえて言うなら、抜け出せないと思っていた沼の底からは抜け出すことはできるのだ、と書いておきたい。
誰もが必ずできるとは言えないが、少なくとも私は抜け出せた。そして抜け出してみると、あの時なんであんなネガティブなワードが頭の中を回っていたのか自分でも理解できない。そのくらい、納得のいく分かりやすい原因と結果なんてないのだ。

もちろん始まりはちょっとした気持ち。自分を自分のままで受け入られなくて「このままじゃダメだ」「どうにかしよう」という変化を望む気持ち。たぶんそれが上手に作用すれば成長意欲につながるけど、自己否定とのちょっとしたバランスが崩れていくとどんどん立て直せなくなってくる。

そして、ある種のうつ症状として現れたときにはもう気持ちの問題なんてものではなくて脳機能障害という一時的な身体症状なんだと思う。だからその症状の回復はできるはずだ。

うつ症状がどんな状態で、そして回復することはできるものだということを事前に知っていることは大事だと思う。もしあなたがいま苦しくて、だんだんと沼の底に沈んでいくような感覚だったら、まずはこれはうつという身体症状かもしれないと自覚してほしい。

※全て実体験からの私見であり、正確な診断や専門知識に基づいてはいませんのでご注意ください。


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