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ちょっとしたお仕事で試し書きしたやつ公開(笑)

脚本依頼で、最初頂いたアイデアで木田が勝手にイメージ膨らめて執筆した物です
恐らく日の目を見ることは無いだろうと思うので、ここで誰かに読んでもらおうかな、と
こんなご時世なので朗読とかをしたい方は是非どうぞ(一報もらえると嬉しいです)
※著作権はフリーです
以下本文

水上玲奈は、ある日疑問に思った
-もしかして私は、潔癖症なのかしら-
そう思い始めたのは、この数日のことだった
以前はそんなことを疑ったことも無ければ、考えた事も無い
それでもそう思ったのは、就職をして様々な年代の人間と働き始めてからである
私立の女子高の完全寮生活で育ってきた玲奈にとって社会は違和感の塊ばかりだった
トイレに行き平気で手を洗わずに戻って来る男性社員
共通の手洗いタオルを設置する職場のルール
歓迎会に行けば、菜箸を使わずに大皿から食事を取る同僚たちを目の当たりにした
バッグを机の上に置き、荷物を取り出す先輩社員もいる
食事中に平気で大声で唾液を飛沫させながら喋る女性社員
そんな中で自身の常識を疑い始め、白い目で見られることが怖くなり、誰にも相談も出来ず、ただただ暇を作っては手を洗いに行き、机を濡れティッシュで除菌し、人前で食事を控えるようになった
-もしかして私は、潔癖症なのかしら-
そう思い始めてから当然、異性とも距離を取るようになっていった
もともと男性が得意な方では無かったが、社会人になる直前にはそれでも自分も恋をするのだろう思っていた
しかしこんな自分が異性と触れ合うことが出来るとは到底思えず
ただただ毎日を清潔に生活する事だけが目的となっていた
そんなある日、玲奈は職場の通路で足をたまたま出ていた床の出っ張りにひっかけ転んでしまった
大したことは無い出来事だったが、それでも人前で転んでしまったことは玲奈にとっては恥ずかしい事だった
急いで立ち上がろうとしたが、はずみで足首をひねったらしく、一瞬鋭い痛みが体に走り、立ち上がることが出来なかった
そんな玲奈の前に手が差し伸べられた
顔を上げるとそこには隣の部署の男性社員だった
恐らく立ち上がれない玲奈を見て、手を貸そうとしてくれたのだろう
その位、玲奈もすぐに察した
しかしその手を取ることが出来なかった
躊躇ってしまった
目を逸らしてしまった
自分の為に手を差しだしてくれたのに失礼なことをしてしまった
「あの・・・すいませ・・・」
玲奈が言い終わる前に、その手は玲奈の肩を掴み、ゆっくりと立ち上がらせてくれた
大丈夫か?痛みは無いか?
玲奈の戸惑った顔を見て心配しているのだろう
「大丈夫です」
ようやく言えた言葉はそれだけだった
それでも男性は、その言葉を聞いて安心したようで
よかった
とつぶやき、微笑んだ
その顔に少し見惚れてしまった自分に気付いた玲奈は、慌てて誤魔化そうとして
まだ自分の肩に添えられた男性の手を振りほどき、添えられていた場所をハンカチではたいてしまった
「あ・・・」
また失礼な真似をしてしまった
何故こんな風になってしまったのだろう
自分は他人と違う、それがこんなにも悲しいのは何でなんだろう
ふいに目頭が熱くなってきた、鼻の奥が狭くなる感覚があった
-水上さんは、きれい好きなんだね-
ふいに聞こえた言葉だった
それは目の前の男性が発した言葉だろう
何故自分の名前を知っているのか
何故自分の失礼な態度に怒っていないのか
そんな疑問は浮かんだ瞬間に横へスライドしていった
-きれい好き-
その言葉と、男性の笑顔だけが脳裏に焼き付いた
そして去っていく男性の背中を見つめていた

その日から水上玲奈はきれい好きな女性になった

以上
最後まで読んでいただきありがとうございました

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