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みちのく汐風トレイル(その2)

八戸線種市駅~陸中中野駅

朝食は6時15分より。定刻通りレストランに向いますが、既に満席で入場待ちの行列が通路にはみ出しています。レストランは地方色あふれる食材を使用し品数も豊富。

昨日の苦行経験がありますので、20分前に八戸線のホームに到着し列車最前列に席を確保します。発車時刻が迫ると続々と高校生が集まりあっという間に満席になってしまいました。この列車は2両連結のワンマンカーです。ということは、出口は1両目の一番前のドアだけです。必然的に短距離の乗客は前の車両に集まります。失敗しました。遠方への客は後ろの車両に乗るべきでした。八戸線は鮫駅から海岸沿いに南に下ります。車窓を流れる蕪島のウミネコに、種差海岸の青々とした天然芝生(天然記念物)を眺めながら時を過ごしているうちに、あっという間に「種市駅」に到着。ところで「種市」も「種差」も(アイヌ語のタンネ・エトゥは「長い・棒や針の先」で「長い岬」の意、タンネ・エサシは「長い・岬」の意)アイヌ語由来だとか…。

種市駅で友人と合流。早朝だというのに突き抜けるような青空、過酷な一日を予想させます。駅前の自販機でたっぷりと水を仕込んで、いざ南に向けて出発。種市には岩手県の水産試験場があってウニの養殖を研究しています。三陸はリアス式海岸で有名ですが、岬を回るごとにポケットビーチがあって、次々と小さな漁港が出現します。その数は岩手県のコンビニをしのぐものでしょうか。種市漁港、鹿糠漁港、玉川漁港、戸類家漁港と歩き続け、時刻は午前の10時。カンカン照りの陽射しが容赦なく肌を焼き付けます。外気は30度を超えていますが、海岸沿いに出ると心地よい霧が肌を濡らしてくれます。目を凝らして波間を眺めると、次々と薄い霧が沖から浜辺に押し寄せてきます。規模を縮小した「ヤマセ」ですね。暖かい東風が親潮に冷やされて凝結し、心地よいシャワーミストを提供してくれているのです。

原子内からは車道を離れ、堤防を乗り越え「有家浜」へ降り立ちます。目の前に広がる太平洋と白浜。気持ちいい!海から吹き寄せる冷涼な風を受けて砂浜を進みます。広く、白く続く浜辺。この浜には傾斜というものがありません。海の水が渚にあふれて浜の上を漂い、痕跡も残さず静かに足下の砂に吸い込まれていきます。ここには海と陸との境界がないのです。動揺している自分に動揺して写真を撮るのを忘れてしまいました。残念。浜を見下ろす高台にある「有家駅」で友人と別れ、私は一人南下を続けます。

「有家駅」と「陸中中野駅」の海岸線は開析が進み、渡河するための橋もなく、やむを得ず海岸段丘を120m登っていったん国道に出て有家大橋を渡り、それからもう一度崖を降りて海辺に降りなければなりません。ただ水平に歩くだけではなく、絶え間ない昇降を繰り返す、これがリアス海岸独特のトレイルコースなのです。朝の食事以後何も口にはしていません。血糖値もずいぶん低下してきました。携行食は用意したものの口にすることはなく、一刻も早く本日の最終目的地である「陸中中野駅」を目指して足を速めます。ほうほうの体で谷間にポツンの取り残された中野駅にたどり着いたのは2:30ころ。予定よりかなり早く到着しました。早速リュックからチョコバーを取り出すと中はドロドロ。この間汗は全身の毛穴という毛穴から吹きだしてきます。汗はだらだら、アイスはカチカチ、チョコはドロドロ。それでもこの期に及んで選択の余地はありません。鉄漿を生ぬるいポカリで胃に流し込みました。

しばらくして友人が到着。車は国道45号線から三陸道に、そして一気に久慈を目指します。40分ほど走ってホテルに到着。今夜の夕食は「魚棚」です。予約を入れてなかったので心配しましたが、ちょうど一部屋空いていて席確保に成功。刺身のアブラメ770円が、淡白なうえに歯ごたえもしっかりあって美味。華やかな香りの「田酒」とのマッチングは最高。あとは「ジャコ天」と「ブリカマ」をいただいて、締めて一人3,770円。計算間違いをしているのではないかと思うほどのお安さ。地方の食事は心にも財布にも優しいのです。

みちのく汐風トレイル(その3)
https://note.com/visonbaison/n/nb01ed4b2c281

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