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噓日記 5/28 バスカーでハイボールを

日曜の夜、明日から平日ということもあって現実を直視しないために酒で現実逃避する。
飲むのは最近ハマっているバスカー。
ハイボールにしてグイッといただく。
つまみはスーパーで買ったパック寿司。
あえて、こういうほどほどのプチ贅沢がなんだか社会人なのだと、人間なのだと再確認させてくれるような気がする。
平日に疲れた大人の振る舞いをコピーしているのだ。
我々は大人になると属するコミュニティで自分を確認する。
学校や部活以上に、必要とされているという実感が私を私たらしめている。
だからこそ私は必要とされているだろうか、誰かの役に立てているだろうかという疑問を酒の力で掻き消すことでどうにか厚顔無恥にも明日を生きようと思うのだ。
グラスいっぱいに氷を突っ込んで、3,4分目くらいまでバスカーウイスキーを注ぐ。
バースプーンでカラカラと回して冷やしたら、グラスの縁に沿わせるようにゆっくりと炭酸水を注いでいく。
琥珀色の芳しい液体がグラスに満ちて、私は少し笑顔になる。
パックの寿司を一つ摘んで、作ったハイボールを一気にグッと呷る。
どうしても上がってしまう口角と共に、その隙間から漏れていく声にならないような小さなため息に音を乗せてクゥーと吐き出す。
力が抜けていくようだ。
入りすぎていた肩の力が、緊張が、少しだけ緩んだような気がする。
働くとは大変なことだ。
生きるための糧を得るために働いていても、どうしてもそこにやりがいを見出してしまう。
自らで見出してしまったやりがいとは厄介なもので自覚していようとも、戦いたくなる。
仕事のために戦いたくなるのだ。
明確な殺意を持って、仕事でコイツを殺してやろうと思うほど自らの仕事に誇りを持ってしまうのだ。
私の感覚はもはや現代の働き方とは必ずしも符合しないのかもしれない。
ただ、どうしてもどうしても戦いたいのだ。
がむしゃらであることが美徳であった時代が終わってしまったのであっても、私はその役割の中でがむしゃらでありたい。
私の戦う姿はこうなのだと自らに言い聞かせるように、精魂が好き果てるまでファイティングポーズのまま殺し合いたい。
戦って、戦って、その末で明確な殺意を持って仕事で誰かを殺してやりたい。
そんな言葉も男のロマンだというのももはや現代の価値観とは合致しないのだろうが。
分かっている。
全部分かっているのだ。
ただ、今日だけ。
ゆっくり休ませておくれ。
戦士の休息を許しておくれ。
明日もまた戦うからさ。

どりゃあ!