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あやまれ!池袋に謝れ!『君は彼方』感想


おつかれさまです、バーチャル悪霊です。Vtuber的な事やってます

先日、noteから「始めてから9ヶ月経ったよ!えらい!」的なお褒めを頂き、動画にならないアレコレを書くと言った割には案外動画になっちゃってそんなに書けてないことに良心の呵責を抱いたので筆を執ります。

そういうわけで、映画君は彼方の感想です。
内容に触れざるを得ないのでネタバレには注意してくださいね。


何でもこの作品、池袋を舞台にしていて豊島区も協力しているのだとか。
コラボ列車走ってるし、百貨店には大きな垂れ幕と、もう町全体で応援している模様。ならば折角ですから池袋で観ましょう。さーて何時に観られるかしら……?11/27公開だし、まだ沢山残ってるでsy

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(引用:映画.com)

…………あれェ!?

■あらすじ

「だって・・・努力したからって、絶対報われるわけないじゃん。」
高校2年生のは学校の授業は適度に手を抜き、宿題もとりあえず後回し、本気で努力することが苦手な女の子。
幼馴染のと親友の円佳と、放課後は池袋で遊んで、それなりに楽しく生きていた。

「私、新のこと・・・気になってて」
そんなある日、円佳に新のことが好きだと告げられた澪は、自分も新の事が好きだったことに気づく。
でも、3人の関係が崩れることが怖くなり「応援する」と伝えてしまった。
どうしたら良いのか分からなくなった澪は、新にワザとよそよそしい態度を取ってしまい2人はケンカに。
すれ違いの中で、自分の気持ちから逃げてばかりだったことに気が付いた澪は、
新と向き合うことを決め、仲直りをしようと雨の中を新の元へ向かう途中、交通事故に遭ってしまう。

そこは、いつもと違ういつもの街――
澪が意識を取り戻し、目を開けると、そこには不思議な世界が。
海の上を走る電車、横を綺麗なクジラが泳いでいる・・・。
見たこともない場所。
電車が駅に到着し改札を出ると、今度は見慣れた池袋の街並みが広がっている!けど、どこか変。
不安になりながらも街を歩くと、澪は「この世界のガイドだ」と名乗るギーモンと出会う。
ギーモンから澪は<世の境>にいると説明され、望む世界に行けるという扉を開かせようとした、その時。

「これ以上、ガイドの話を聞いたらだめ。戻りましょう!」
謎の女の子・菊ちゃんに引き留められた澪は<世の境>から本当に抜けられる方法は<忘れ物口>と呼ばれる場所に行き、
元の世界での大切な思い出の中にある“忘れ物”と、帰りたい強い“想い”を伝えることだと教えられる。
ギーモンと菊ちゃんと共に<忘れ物口>を探し出した澪だったが、何故か“大切な思い出”が分からない。
答えられず戸惑う澪を残し、係員は消えてしまった。

「私、新に会いたい。どうしても伝えたいことがあるの!」

澪は新の元に戻るための唯一の手段、
“大切な忘れ物”を思い出で溢れた“誰もいない池袋”の街で辿ることとなる――


■どうだった?

・作画類の水準の低さ
・原典を超えられない既視感
・進展のない話、整理の出来てなさ
・悪い意味でアニメ的なキャラの動き

・池袋に謝れ

いや……うん……何だったんでしょうね……。


■作画類の水準の低さ

まず作画が常時微妙で作品に移入するどころじゃなかったのが1つ。キャラクターデザインは全然嫌いではないのだけど、劇場版アニメのクオリティに達していないどころかちょっと動きが激しくなるとあわや崩壊寸前(崩壊はしない)っていうギリギリの綱渡りを90分強に渡って続けるせいでもうハラハラしっぱなし。アオリやフカンになる度に漠然とした不安感が……。
戦闘やミュージカル等、見せ場らしきシーンも一杯あるんですが、破綻を来さないようにするのが精一杯で枚数を割けず、ただでさえ唐突感のあるそれらのシーンがただ冗長に盛り上がらないまま過ぎていくのはとても辛いものがありました。
スタッフロールを見れば納得、原画わずか9名。第二原画まで入れても11名。よく頑張ったよな……。
(ちなみに現在大ヒット中のアレですが、ざっくり数えて約100人くらいでした。すごいね)
特効類についてもどうにも安く、「これ無料編集ソフトのプラグインで出来るな……すげえな無料編集ソフト……」みたいな気持ちにならざるを得ませんでした。平面的なエフェクトや荒い解像度のパーティクルをそのままぶつけてきます。

■原典を超えられない既視感

そして各所でどうしても目に付く山ほどの既視感
恋愛による仲良し三人組の破綻を恐れる主人公
ペンギンが街の空を飛ぶ異世界
山寺宏一と大谷育江の声で喋るマスコット
影人間が乗る、海の上を走る路面電車
夏木マリの老婆
蜘蛛めいた化物と化して主人公を追う敵とも言い難い奴
急にRADめいた曲をミュージカル調で歌い始めるヒロイン
スピリチュアルめいた家系の力で異界にアクセス
現実と異界ですれ違うヒロインとヒーロー
空から落ちるヒロインとヒーロー
多少こじつけ臭くもありますが、こんだけそれっぽいもの山と見せられればそうでなくともそう見えるってなもんで。
これで作画や演出が十人並みの劇場アニメであれば、大なり小なりのブラッシュアップによって普通に観られたとは思うんですが、前述の通りの綱渡りの為全てが単なる劣化コピーになってるのが残念でした。
(それにしたって水上を走る路面電車に影人間が集う図はどう考えてもアウトなんだから避けるだろ普通とは思いつつ)


■進展のない話、整理の出来てなさ

じゃあ物語としてはどうだったのかと言えば、どうにも同じところをグルグル回っててもどかしさばかりが募る印象で。
ちょっとあらすじ(長くて大変でしょうが)読み返して欲しいんですけど、この流れで

「私、新に会いたい。どうしても伝えたいことがあるの!」

……って言って何を伝えたいのか察せないこと無いじゃないですか。実際まさにその通りの結論が出る話なんですけど、

「伝えたい思い分かった!現世帰るわ!」
→「まだ足りなかった!もっと思い出す!」
→「思い強くなった!現世帰るわ!」
→「まだ
無限ループって怖くね?

いちおう試練を超えたから大丈夫!さあ再チャレンジ!みたいな流れにはなってるんですが、どうも試練から解決までフワッとしたまんま、こなしたテイになってる割には案の定失敗してなんでなんで言う流れがずーっと続くもんだから、観てるこっちとしては「"すき"2文字思い出すのに何時間かける気だ?」というジレンマに襲われます。
(好きって言えずに足踏みしてるの、青春って感じでもどかしくて嫌いではないんですけど)

で、主人公の澪が忘れた思い出を取り戻し現世に帰る、というのが本筋としてあるのですが、対して現世にいる澪の思い人、新はというと、
・序盤からちょいちょい挟まれてたスピリチュアルな演出は実は新の霊能力を示唆するものでした
・彼の家系には幽体離脱を行える不思議な力がありました
・昔その力のせいで悲しい事故があったので力を使わないよう言われてました
・でもその力を使って新は幽体離脱して澪を助けに行きました
すみません、急に超能力もの始めるのやめてもらっていいですか?

いや、実際題材的には問題ない要素なのかもですが、ほんと急に始めるんですよ。その後も情報の整理や提示のタイミングが拙いばかりに全体から浮きまくってる印象を受けたんですよね、新の霊能力パート。
で、幽体離脱して澪を助けに行ったのですが、すんでのところで失敗します。
……ここまでの流れいったい何だったの!?


■悪い意味でアニメ的なキャラの動き

これは個人の感じ方ではあると思うのですが、
新の霊能力を知っており幽体離脱した事も察している人間が救護としてしばらく心臓マッサージと呼びかけを行い続ける(最終的に自分の霊能力で引き戻す)
実は自分が死んでいるという事実を告げられた途端、それまでの流れを全く無視して脈絡なく狂気じみた絶叫を上げる澪(絶叫自体はものすげえ上手い)
・澪の魂を呼び戻すために昨日の何てことない会話を泣きながら一言一句正確に読み上げ始める新
……等々、多分そういう印象的でかっこいい事やらせたさが先行してるんだけどその他が全く付いてきてない描写が目立ち、(あんま使いたくない雑な表現ですが)「キャラだなあ……」と冷ややかに見る事になってしまいました。

あと割と本域で許せないのがEDでの、
・円佳に新が好きだと伝え和解する澪。次のカットでは澪と新、円佳と見知らぬ男がカップルに!これで不幸になる人は誰もいないよ!やったね!
という描写。円佳というキャラに対して、引いてはもう恋愛って概念とかに対してもあまりにも不誠実でココばかりは割とマジで怒ってます。監督、人間に興味が無さすぎんか?
(ちょっと脱線ですが、澪がスマホをフリックではなくトグルで使う描写ってどうなんでしょうか。何も考えずに作り手の使い方がそのまま出てない?)


■池袋に謝れ

お待たせしました、本題です。
・池袋でのデートシーンがほぼ全部止め絵
(しかもコースが西に東にメチャクチャで雑)
・その割にはキーとなるシーンは架空の岬
・更にキーとなる思い出のシーンは架空の河川敷
池 袋 に マ ジ で 謝 れ

■まとめ

皆でお酒飲みながら観ると相当楽しいと思う。……だめ?
まあ出来は悪かったと思います。そこまで熱持って擁護も批判も出来ない、粗雑な出来の作品を、豪華キャスト
(特に言及してませんでしたが、松本穂香さんも瀬戸利樹さんも違和感なく聞けました。違和感を感じた所は演技以前に流れがアレだっただけで……。)や広告に費やして何とか取り繕おうとしたものの、そのものの出来がどうこうなる訳もなく……といった感じ。
監督が借金してきた2億(※)、何に使われたんかな……。

とは言え、
(これは先行の感想類でも言及されてますし僕自身とても印象に残った発言なので重複承知で出しますが)
HELLO WORLD』のインタビューで「『君の名は』のヒット以降、アニメ映画に求められるものが変わった」(意訳)というのがあり、この作品もその意向に捻じ曲げられた結果の悲しい産物ではあるのかも知れません。

実際、所属会社で関わっている過去の作品を見てみても、

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(引用:株式会社cucuri HP
乙女系作品やファンタジーバトルが多い為、そもそも得意分野ではなかったものを無理にやってたんであれば、「じゃあ得意分野でやったらどう?」という復権の機会は何かの形で与えられて然るべきかなとは思います。ちょうど大正剣戟バトルがこんだけ大流行りしてるワケですし。
時々見せるダメと一言で切るにはちょっと惜しい独特のセンス、変なところに刺されば大化けする気もしないではないので、もうちょっと(正邪半々の意味で)観ていきたいなあ、などと思っています。

しかしHP載ってるほぼ全作品でプロに混じってメイン声優やってんのスゲーなこの監督……。

以上、『君は彼方』の感想でした。また何か書くので、その時はよろしくね。

※下記動画参照


受肉代にします