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【so.】和泉 美兼[3時間目]

「今日の体育は小ホールで卓球だそうですー!」

 生物室から教室へ戻ると、堀川が「ヤッホー」って叫ぶみたいに口に手を当てて大声をあげていた。こういう仕草がいちいちムカつかれてるって事に気づいてないよな。

 体操服に着替えて隣のつだまるが着替えるのを座って待っていると、遠くの方から堀川がこっちを見てる事に気づいた。わたしじゃないと良いなぁって思いながら立ち上がると手招きをしている。

「わたしー?」

「そう。和泉さん」

「つだまるー、先行くー」

 何の用だよメンドクセエな。教室の反対の堀川の机まで歩いて行った。

「どしたの委員長?」

「橋本さんが言ってたんだけどね」

 言いながら歩き出すから、わたしも後をついて行った。メガネが何だって?

「年末の件は田口さんが黒幕みたいな事を和泉さんが言ってるって、細田さんから聞いたらしくて」

「は?」

「だから橋本さんが細田さんから聞いたのが」

「話に登場人物が多くて分かんないんだけど」

「田口さんが黒幕って本当?」

「何の事か分かんないし、ヨシミとサトミの事もよく知らないし」

「なら、変なこと言いふらさない方がいいよ?」

 言うだけ言って堀川は行ってしまった。はぁ? ふざけんな!

「いーんちょー、何だって?」

 後ろからつだまるが話しかけてきた。

「わっけわっかんねー!」


 寒い寒い言いながら小ホールの床に座っていても、まださっきのことでカッカしてくる。

「今日は寒いから暖房の効いた小ホールで卓球だ。喜べおまえらー。って、何だ少ないな今日。まぁいいや。トーナメントやるぞー」

 この寒いのに体育教師の石堂は無駄に元気だ。


 まず最初にストレートで倒したぶーちゃんは、ロクに動いてないはずなのに汗まみれになっていた。
 次に、意外と上手かったけど正恵を倒し、相手はつだまる。カットした球を全部拾えないザコだった。

「イズミン、何でそんな上手いん? ひょっとして卓球経験者?」

「あたり」

「暗ぁー」

「うるせーな」

 次の相手はヨシミだった。

「ヨシミ意外と強いんだねー」

 声をかけたんだけれど、ものすごく怖い顔をして闘志に溢れている。

「いま委員長から聞いたんだけど」

 言うなり思いっきり球を叩きつけてきた。女帝がなぜだか爆発してる。

「あたしが黒幕って何よ。あたしがやったってこと?」

 ヨシミのはサーブとかスマッシュとかそういうルールに沿ったものではなかった。

「どういう事だよ! 答えろよ!」

「何の事かわかんないんだって! ほんとに!」

 ヨシミはラケットで球を叩きつけ、直接わたしを狙って打ちまくってきた。

「もし今度変な噂流したら、ただじゃおかねーからな」

 ヨシミは捨て台詞を吐いて去り、わたしはストレート勝ちなのに精神的にはボロ負けだった。ヨシミの怒りの原因がさっぱり分からず、そんな事を考えていたからか決勝戦の相手のブツブツにも軽く負けた。

「川部! 凄いじゃないか!」

 石堂が褒めちぎる、よりによって底辺の空気みたいな奴に負けた事が更にショックだった。
 だいたい黒幕ってなんだ。どういう事だ。堀川の言っていた事をもう一度整理してみよう。
 年末の件がヨシミの仕業だとわたしが言ってたと、細…田……直己?
 そういえば今朝、後ろの席の直己がなんか言ってきた事を思い出した。何だったっけ。何だったっけ。なんとか思い出してヨシミの誤解を解かないとヤバい。マジで堀川ふざけんな、空気読めよなちくしょう! ちくしょう!

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