マガジンのカバー画像

so.

196
「so.(エスオー)」は、女子高のとあるクラスの一日の間に起こる出来事を、様々な時間、それぞれの視点から綴る群像劇です。
運営しているクリエイター

2022年1月の記事一覧

【so.】新藤 五月[5時間目]

【so.】新藤 五月[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 教室へ戻り、三条先生が教卓の上から宣言した。わたしはまず大事なことを確認する。

「せんせー昼ご飯は?」

「このあと5時間目をその時間にする」

「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」

「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」

「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」

「そうはいかない。君たちに聞きたいことがあ

もっとみる
【so.】伊村 正乃[5時間目]

【so.】伊村 正乃[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 三条先生が教卓から声を上げて臨時のホームルームが始まった。早速、食物と空腹しか頭にない新藤五月が噛みついた。

「せんせー昼ご飯は?」

「このあと5時間目をその時間にする」

「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」

「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」

「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」

「そうはいか

もっとみる
【so.】埋田 寿惠[5時間目]

【so.】埋田 寿惠[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 三条が教卓の上から声を発する。深刻な表情をしているように見える。

「せんせー昼ご飯は?」

 新藤さんが空腹を訴えた。

「このあと5時間目をその時間にする」

「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」

「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」

「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」

「そうはいかない。君たちに

もっとみる
【so.】細田 直己[5時間目]

【so.】細田 直己[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 三条センセーが教壇から言った。

「せんせー昼ご飯は?」

 早速ぶーちゃんが餌の心配をしている。

「このあと5時間目をその時間にする」

「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」

 コンビニでなんか買ってきとけばいいじゃん。

「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」

「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」

もっとみる
【so.】神保 昌世[5時間目]

【so.】神保 昌世[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 壇上から三条先生が宣言して、5時間目へ跨いでのホームルームが始まった。

「せんせー昼ご飯は?」

 さっちんが早速気になることを聞いてくれた。

「このあと5時間目をその時間にする」

「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」

「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」

「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」

もっとみる
【so.】津田満瑠香[5時間目]

【so.】津田満瑠香[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 三条先生は深刻そうな表情で言った。でも、教室へ入ってくるときにハセベのパンの袋を持っていたことに私は気づいていた。あたし達には真っ直ぐ教室へ戻るよう委員長に言わせといて、その間に自分はちゃっかりパンを買ってたんだ。狡いなと思った。

「せんせー昼ご飯は?」

 さっちんが尋ねる。もし、さっちんにバレたら、三条先生は半殺しにされんじゃないかと思う。

「このあと

もっとみる
【so.】曽根 興華[5時間目]

【so.】曽根 興華[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 三条先生が教卓から宣言してホームルームが始まった。

「せんせー昼ご飯は?」

 新藤さんが早速昼食について問い合わせる。私も今日はお弁当を持ってきていないから、パンを買いに行けるのかどうかは気がかりだった。

「このあと5時間目をその時間にする」

「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」

「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んで

もっとみる
【so.】平 安代[5時間目]

【so.】平 安代[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 三条先生がホームルーム開始を宣言して、お弁当が遠くへ飛んでいってしまった。お腹がすいたなあ。さっそく新藤さんがいつ食べられるのか聞いてくれたら、このホームルームが終わったら食べられるってことが分かった。じゃあ何をやるのかなと思ったら、みんなに聞きたいことがあるって言う。

「こないだ面談やったじゃないっすかー」

 和泉さんが言うと、三条先生は答えた。

「年

もっとみる
【so.】荘司 直音[5時間目]

【so.】荘司 直音[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 三条先生が壇上より緊張の面持ちで宣言する。早速空腹についての訴求を新藤氏は試みた。

「せんせー昼ご飯は?」

「このあと5時間目をその時間にする」

 わたしは今朝コンビニエンスストアのオーゾンで購入した握り飯の昆布味とおかか味が無駄にならないことに安堵した。

「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」

 毎日昼にパンの行商へやって来るハセベのパンを何度か購

もっとみる
【so.】福岡 則子[5時間目]

【so.】福岡 則子[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 三条が教卓の上から宣言した。

「せんせー昼ご飯は?」

 新藤。たしかにお腹減ったなあとは思う。パン買いに行けないと困る。

「このあと5時間目をその時間にする」

「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」

「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」

「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」

「そうはいかない。君た

もっとみる
【so.】堀川 国子[5時間目]

【so.】堀川 国子[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 三条先生が教卓から声を響かせる。さっきの校長先生のお話からの続きで、人体模型落下事件についてのお話なのかなと思った。

「せんせー昼ご飯は?」

 新藤さんが先生に尋ねる。よくこの状況でお昼の心配ができるなと呆れてしまう。

「このあと5時間目をその時間にする」

「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」

 彼女はまだ諦めない。お弁当を持ってきていれば、そんな

もっとみる
【so.】大和 栞蔓[5時間目]

【so.】大和 栞蔓[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 三条先生が深刻な表情でそう言って、5時間目のホームルームが始まった。

「せんせー昼ご飯は?」

 さっそく、さっちんが昼ご飯について確認する。わたしも今日はパンを買わないといけないから、それは少し気がかりだった。

「このあと5時間目をその時間にする」

 三条先生は教室に入ってくるとき、小さな紙袋を持っていた。教卓の中にしまったらしいけれど、あれはどう見て

もっとみる
【so.】三条 宗雄[5時間目]

【so.】三条 宗雄[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 ちらりと青江を見ると青白い顔をしているものの、きちんと座っている。泣いていたようで、ハンカチで目を押さえる仕草を時折見せるものの、怪我をしたとかそういった心配はなさそうでひとまず安心した。

「せんせー昼ご飯は?」

 新藤が予想通りに昼飯のことを聞いてくる。騒ぎよりも己の腹具合の方が気がかりらしい。

「このあと5時間目をその時間にする」

「ハセベのおばち

もっとみる
【so.】橘 ひろ子[5時間目]

【so.】橘 ひろ子[5時間目]

「いまからホームルームを始める」

 壇上から三条先生が厳かに言う。

「せんせー昼ご飯は?」

 新藤さんが早速気になることを聞いてくれた。

「このあと5時間目をその時間にする」

「ハセベのおばちゃんが帰っちゃうよ!」

「ハセベさんにはさっき5時間目が終わるまで待っていてくれるよう頼んでおいたから安心しろ」

「マジか~。じゃあ5分でおわろ!」

「そうはいかない。君たちに聞きたいことがあ

もっとみる