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ヴァージンVS 過去・現在・未来45~ライブレとコーディングと・・・~

「ヴァージンVS 過去・現在・未来28」にも書きましたが、ライブとレコーディングの音というよりパフォーマンス全体の違いというものを我々は埋めることができなかった。
要は納得のいくレコーディングができなかったということ。
そもそもバンドはレコーディングから始めるものではなく、まずはライブをやるために練習します。最近はライブをやらずにいきなりレコーディングするバンドもいるようですが。
もっと言うなら、バンド名義で音源を1人で作り、それを再現するためにメンバーを集めてライブをする。これならレコーディングの音源ありきでそれをライブで再現することがそのライブのコンセプトとしては成立するので問題ない。逆にレコーディングでしかできないことをどうやってライブで表現するのかという問題はありますが。でも今は何でも「機械」でできてしまうのでしょう。

しかしライブ活動から始まったバンドは、ライブでのパフォーマンスをどのようにレコーディングで表現するのかが悩みの種となります。
レコーディングスタジオで言われることは、
「レコードは何回も繰り返し聞かれるものだから、ライブのように感情的なモノだけではなく、普遍性があるものでなければならない。」
という意見です。
これはもちろん理解できます。
しかしこの論に沿って「さじ加減」を間違えてレコーディングを進めていくと、熱気も覇気もない音になってしまう。
ロックから熱気や覇気がなくなればただの雑音でしかない。
この稿はヴァージンVSのライブとレコーディングの演奏、音の違いについて述べたいと思います。
これはあくまで私見ですが、何かしらレコーディング、ライブ活動をする演奏者にとっての「普遍性」のある論になるかもしれません。

まず、ライブ会場での演奏において、バンドの音はPAスピーカー、モニター、箱鳴り(会場全体の音)などに体全体が包み込まれ、なんか気持ちの良い、えらい勢いのある音になります。
もちろん残念なデッドな音の箱(ライブ会場)もありますが、最近のイヤモニを使用しても音圧感は体で感じ取れます。
しかし、レコーディングスタジオではヘッドフォンの中だけの世界なので、体全体で音を感じるわけではない。ここに最初の試練が待っている。
おまけに最初のリズム隊の録音ではドンカマはあるし、上物の楽器は入っていないし、間奏部分はスカスカだし、ガイドの仮歌はあるが、あくまでガイドだし、という環境の中で、すべてがそろっているというイメージでエモーショナルな演奏をしなければなりません。
特にドラムは大変ですね。
レスポール氏が多重録音を発明する以前のスタジオレコーディングというものは、スタジオにおいてライブと同じように演奏されたものをそのまま録音するということでした。だからよいレコーディングとは、良い演奏を録音することだったわけです。

レスポール氏と8トラックレコーディングマシーン

もちろんマイキングや音のバランスの良し悪しはありました。ジャズの名盤と言われているものは、演奏はもちろん、プレイヤーの息遣いまでが聞こえるような臨場感あふれるレコードです。

ゲッツ/ジルベルトの「イパネマの娘」
ミキサーはあのフィル・ラモーン大先生

しかし多重録音が始まると、演奏者はライブとは違う環境で演奏するようになります。後で色々な楽器や声をダビングして最終的に全部の音のバランスを調整するため、各トラックにはできるだけ他の音が入らないようにします。大きな音がするドラムなんかはブースの中で演奏します。よって、同じスタジオフロアで演奏していても、バンド全体の音は体ではなく耳だけで感じることになります。この状態でいわゆる「グルーヴ感」を出せるのがプロのバンドということでしょう。ここで問題となるのが「グルーヴ感」というもの。 ヴァージンVSのコンセプトとしてあったのは、相反するものを十字に組むということ。音楽的に言うなら「パンク+テクノ」。そのころのテクノはクラフトワークのような単調な無機的なリズムの上に印象的なシーケンスリフ+ヴォイスという構造で、これにパンクを組み合わせるということになります。
ではレコーディングではどんな「グルーヴ感」を出せばよいのか??
テクノだから「グルーヴ感」は必要ないのか??
しかし、ライブではエモーショナルにグルーヴしている気がするぞ。じゃあ、どうすれば良いの?答えはあるのか?
結局は誰も答えられないままレコーディングが進行していったような気がします。特に印象的だったのが「ロンリーローラー」のレコーディング。 最初はドンカマ入りで何テイクか録音しましたがいまいちだったので、ドンカマなしでやってみたらしっくりときた。そりゃそうだ、ライブではドンカマなしだからこっちの方が慣れている。で、これでいこう!となりかけたが、結局はなんやかんやでドンカマありのそこそこのテイクを使用することになりました。

「ロンリー・ローラー」最初のジャケット

ここが一つの分岐点だったかと思います。
一曲目から分岐点かぁ・・・(この稿続く)

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