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「神戸おでかけティップス」神戸観光コース vol.006~有馬温泉~

※〈ちょこっと倶楽部・神戸おでかけコース〉メンバー向けの限定記事でしたが、広く読んでいただきたい思いから一般記事とします


$${\small「神戸おでかけティップス」神戸観光コース}$$
$${\overline{\underline{\Large \boxed{神戸}  有馬の旅  \small ~市街からすぐ、癒やしの温泉街~}}}$$

神戸・六甲山の北、有馬温泉。

日本書紀、枕草子にも登場し、日本三古泉のひとつに数えられる。
さらに日本三名泉のひとつともされる。
・日本三古泉=道後/白浜/有馬
日本三名泉=草津/下呂/有馬
その両方に顔を出す有馬の実力、伝統たるやなかなかのものだ。
足利義満や豊臣秀吉が愛でた温泉としても知られ、江戸時代の温泉番付では最高格・西の大関に位置した。

そんな有馬が兵庫県の温泉であることはよく知られているようだ。
阪急交通社の2021年の全国調査では、71.7%の人が知っていたという。
兵庫には、志賀直哉に愛された城崎、そして谷崎潤一郎に愛された有馬があるのだ。

ただ、兵庫の中でも神戸にあるというのは知られていないかもしれない。
なにせ神戸といえば人口150万人を擁する大きな都市。
そんな街に三古泉かつ三名泉のひとつがあるというのは、なかなかの驚き。
奥山に分け入る必要はなく、神戸の中心からは30分、大阪からでも60分。
バス、電車、ロープウェー、車のいずれでもOKの、交通至便な温泉だ。

今回の〈神戸おでかけティップス〉は有馬の旅に決定!
せっかくだから電車で行くことにしよう。
車は行きたいところに行けて便利だが、ほら…飲めないから。

電車で有馬に行くなら「有馬・六甲周遊1dayパス」(4~12月限定)の利用が断然オススメ。
このパスがあれば、神戸から有馬までの電車、バス、ケーブルカー、ロープウェーが乗り放題なうえ、温泉にも入れて、有馬・六甲山の各施設で優待割引まであるという、なんとも太っ腹なパス。

有馬・六甲周遊1dayパス(©阪急電鉄)
1dayパス基本フリー区間(©阪急電鉄)

2023年現在、上図の基本フリー区間が乗り放題で2,400円、神戸の人はそれのみでOK。
でもホンマにスゴいのはここから。
なんと、大阪からの人はわずか+100円の2,500円でOKだし、京都の人もたった+200円の2,600円でOKなのだ。
京阪神の人だけでなく、新幹線や飛行機で関西入りした旅人も、有馬に行くのにこのパスを使わない手はない。

前置きはそれくらいにして、さぁいよいよ有馬1泊2日の旅の始まりだ。


🔶1日目


神戸電鉄(愛称:しんてつ)の有馬温泉駅に降り立つ。

神鉄・有馬温泉駅(©神戸電鉄)

うーん、都会的な今の駅舎よりどっしりした古い駅舎のほうが好きかな。

駅前にはいきなり土産物店が並ぶ。
中でも目を引くのが明治元年創業の〈吉高屋〉。

吉高屋

「美肌石鹸」や「有馬入浴剤」が人気商品だが、他にもいろんなジャンルのおもろい商品がいっぱい並ぶ。
店の公式サイトを見ると、老舗なのにどうやら客を「びっくりさせることに喜びを感じて」いるらしい。
旅の初めに覗いて、店の思惑どおり「びっくり」してみるのもおもしろい。

🔹温泉街といえば

まずは宿に直行。
荷物から解放されたいのはもちろんだが、浴衣に着替えるためだ。
温泉街を歩くのに、ジーンズやヒールなんていただけない。

ちなみに今宵はこちらに泊まることにしよう。
駅から徒歩3分、まさに有馬の玄関口に位置する温泉宿〈有馬御苑〉。
有馬の金泉・銀泉、そして神戸ビーフを堪能するならこの宿で決まり。

有馬御苑(©Feel KOBE)

チェックインして部屋に上がり、さっそく浴衣にチェンジ。
寒い季節なら丹前を羽織り、玄関で下駄や草履を借りたらいざ出発。

…正直に告白すると、実は有馬を浴衣姿で歩く人はなかなかに少ない。
神戸・大阪から気軽に行けるからか、温泉街を歩くのはいずれも三宮や梅田を歩く人たちと変わらぬ出で立ち。
同じ兵庫の温泉でも、町をあげて浴衣でのそぞろ歩きを推奨し、浴衣の似合う温泉街としてたびたび全国ランキング首位に立つ城崎とは大違いだ。

じゃ、やめとく? いやいや、ここはもちろん初志貫徹で。

🔹浴衣で有馬めぐり

宿でもらったマップを片手に、有馬の町に飛び出そう。
そうそう、「有馬・六甲周遊1dayパス」付録の「金の湯・銀の湯ご利用券」もお忘れなく。

有馬温泉マップ

さぁ、どこ歩く?

浴衣姿で温泉街をそぞろ歩き

有馬といえば〈炭酸せんべい〉だ。
軽い食感が、もうやめられない止まらない。

手焼き炭酸煎餅は縁にバリが残る

諸説あるが、炭酸煎餅は明治末頃、有馬の炭酸泉を使って〈三ツ森本舗〉が考案したとされる。
〈三ツ森本舗〉はこの小さな温泉街に9つも店舗を出しており、中でも本店は今宵の宿〈有馬御苑〉を出てすぐ。

炭酸煎餅元祖・三ツ森本舗

有馬では今も手焼きで炭酸煎餅を作る店が多い。
焼いたあとの縁にできるバリを折る作業をじっと眺めてたら、兄ちゃん食べてみてと完成品の煎餅を試食にくれる。
え、試食なんてその破片でいいのにと思いながら、おいしくいただく。

手焼き炭酸煎餅のバリ取り

古い街並みをもう少し先に行く。
湯本坂を折れてみよう。

賑わう湯本坂

🔹金泉・銀泉

湯本坂を少し上がると市営浴場〈金の湯〉に出る。
ここが有馬温泉街の中心的存在だ。
有馬にはいくつもの泉源があり、それぞれに泉質が異なるが、茶褐色の湯は〈金泉〉、その他の湯は〈銀泉〉と総称されている。

神戸市営浴場・金の湯(©Feel KOBE)

ここ〈金の湯〉では金泉を、少し先にある〈銀の湯〉では銀泉を楽しめる。
そして手に握りしめているはずの「金の湯・銀の湯ご利用券」はもちろん今が使いどき!
この利用券で〈金の湯〉または〈銀の湯〉いずれかを無料で堪能できる。

いかに〈金泉〉が特徴的かは、写真を見れば分かる。

金泉とはこういうの(©Feel KOBE)

うっかりタオルを湯につけようものなら、あっという間に茶に染まる。
湧き出た直後は無色透明だが、豊富に含まれる鉄分が酸化してこんな色に。
海水の2倍の塩分も含まれていて、ぽかぽかになる。

館外に設けられた〈金泉〉の足湯は嬉しいことに無料。
もし館内の温泉に浸かっている時間がないなら、この足湯だけでもぜひ。
金泉の効能をほんの一部味わえるかもしれない。

金泉の足湯(©Feel KOBE)

いやぁ、温まる~

ピントはお湯に合わせましょう

身体がポカポカ温まったら、また先へ歩こう。

🔹兵庫県最古の企業

もう少し坂を上がったところに〈川上商店〉という店がある。
創業1559年というから室町時代、信長が尾張を統一した年のこと。
文句なしに兵庫県内最古の企業だ。

佃煮・川上商店

有馬の特産品〈有馬山椒〉をふんだんに使った佃煮店として長い歴史を紡いできた。
有馬山椒は一時期廃れたが、六甲山中で見つかった原木を殖やし、今復興の途上にある。
山椒を効かせた料理のことを「有馬煮」「有馬焼」などというのは、有馬が山椒の名産地だったからだ。
ニューヨークの和食料理店でも「Arima」と呼ばれているのは誇らしい。

もう少し歩いてみよう。

🔹泉源めぐり

温泉街でところどころ見える湯けむりに近づいてみると、泉源だ。
天神、有明、炭酸、極楽、御所、妬(うわなり)などの泉源があって、これらを巡るのも楽しい。

妬(うわなり)泉源
御所泉源
炭酸泉源

炭酸泉源で飲める炭酸泉はピリリと舌に心地よい刺激。
〈三ツ森本舗〉の炭酸煎餅はまさにこのすぐ横で発明されたのだ。
またこの炭酸泉で作られた有馬サイダーは日本初のサイダーという。

有馬サイダー・てつぽう水

温泉街の散策を満喫したら、暗くなる前に宿に戻ってうふふの晩餐だ。

🔹温泉宿〈有馬御苑〉

〈有馬御苑〉は有馬でいちばんに神戸ビーフの取扱を始めた宿とされ、もちろん今でもここで出される神戸ビーフに味の狂いはない。

美味、美酒の晩餐
神戸ビーフしゃぶしゃぶ
鮮度ピチピチのお造り
なんだっけ…

いやぁ、声を上げられないほどの美味が押し寄せる…
注意したいのは、日中の散策で食べ過ぎてはいけないこと。
今頃言うな、と怒られそうだけど。

館内には昔の大型旅館にはあたりまえにあったラウンジやカラオケも健在で、晩餐の美酒に酔いつぶれていなければぜひ利用してみたい。

一日おつかれさまでした。
おやすみなさい。

🔶2日目


おはようございます。

目が覚めたらもちろんすぐに朝風呂へ。
〈有馬御苑〉は源泉から金泉を引き込んでいるので、昨日の〈金の湯〉を時間の都合で逃した人もここで挽回できる。

金泉(©有馬御苑)

…だけでなく、銀泉も。
いいのかな、こんなに楽しんでしまって。

銀泉(©有馬御苑)

朝風呂ってなんでこんなに身も心も洗われるのだろう。
温泉宿に泊まって朝風呂に入らないなんてありえない。

寝乱れた部屋にはなかなか配膳しにくいという理由から、朝は朝食会場へお越しくださいという宿が増えたが、ここは嬉しい部屋食だ。

部屋で楽しめる朝食

朝から干魚を炙って食べられるなんて、家では絶対にありえない贅沢。

腹ごしらえができたら、チェックアウトして昨日に引き続き町ブラ。
また戻ってくるとは限らないから、気に入った土産が見つかったら先に買っておこう。

🔹有馬土産

定番の炭酸煎餅はもちろん絶対。
でも大人なあなたにはこんな工芸品もオススメ。

◎有馬人形筆
室町時代から続く、かわいらしい人形筆は有馬の名産品。
字を書こうと筆を持つと筆の尻からかわいい豆人形がひょっこり顔を出すからくり細工と、絹糸を巻いた美しい筆の柄が特徴だ。

有馬人形筆(©Feel KoBE)

◎有馬籠
秀吉や千利休に愛され、400年の伝統を今に伝える竹の工芸品。
主に花器として茶道の中で愛用されてきた。

有馬籠(©Feel KoBE)

食べてなくなる土産菓子もいいが、たまにはしっとりと。
大人の買い物を楽しんだら、歩を先に進めよう。

🔹太閤の湯殿館

極楽寺の境内に建つのは市立〈太閤の湯殿館〉。
震災で倒壊した建物の下から発見された太閤秀吉の湯殿の遺跡だ。

太閤の湯殿館(©Feel KoBE)

現物は埋め戻され、その上にこの資料館が建つが、岩風呂・蒸し風呂の遺構の一部が見えるように展示されている。

太閤蒸し風呂遺構(©Feel KOBE)

有馬をこよなく愛し、中興の祖といってもいいほど支援を惜しまなかった太閤秀吉が、実際にこの湯殿で寛いだのかと思うと感慨深い。
おそらく極楽寺の境内一円がこの湯殿の敷地だったことだろう。

秀吉の没後、徳川によって破却され地中深く埋められて没し、400年後の阪神大震災まで見つからなかった。
大阪城しかり、関西に秀吉びいき・アンチ家康が多いのはそうした理由もあってのことだ。

いよいよ有馬の旅も終盤に近づいてきた。

🔹有馬ます池

さらに奥へ進むとニジマス釣りが楽しめる〈有馬ます池〉がある。
休日には大勢のファミリー、カップルで賑わう。

有馬ます池

釣り料(1竿1400円・2023年現在)を払えば3匹まで釣ることができ、なんとその場で唐揚げにしてくれる。
温泉でしんみりと過ごした2日間は、最後にこんなアクティビティで締めるのがいいかもしれない。

帰りはまた神鉄の駅まで戻ってもよいが、せっかく奥まで来たので別のルートで神戸に帰ろう。
ます池からさらに坂を上っていくと、ロープウェーの有馬温泉駅に到着。

ロープウェー・有馬温泉駅

ここから六甲山まで一直線の空中散歩で帰途につこう。
今回使ったすぐれものパス「有馬・六甲周遊1dayパス」は、なんとこのロープウェーにも乗れるのだ。
わずか12分で六甲山上に着く。

六甲有馬ロープウェー(©Feel KOBE)

時間がある人は六甲山に点在する施設を楽しんで帰るのもいい。
なにせ「有馬・六甲周遊1dayパス」、その名のとおり六甲の主要な施設を巡る山上バスにも乗れるから、またまたお得に遊べる。

でも。
六甲は数日かけても遊びきれないほどだから、有馬の思い出は有馬だけにとどめて帰ることをオススメしたい。
六甲はまた別の機会に楽しむとしよう。

旅は家に帰るまで。
どうぞお気をつけて。
おつかれさまでした。

(2023/5/14記)

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