同じ釜の飯を食うアンサンブル

 学生時代、オケでパート内の演奏がバラついていると「お前らこの後焼肉(or飲みに)行ってこい」と指揮者が言うことがあった。飲食、とりわけ食事を共にすることはアンサンブルに少なからぬ影響を及ぼすものらしい。
 興味深いのは、お茶とケーキよりも食事の方が効果を発揮することだ。
 単純に時間の長さの違いだろうか。

 「芸は人なり」との言葉通り楽器演奏には、演奏者の本性が出る。どんなに言葉を尽くし表面を繕っても、こればかりは誤魔化しようがない。生命活動に直結し、思いもよらないところで素を出させる食には、相通ずるものがあるということなのだろう。

 令和の今はいざ知らず、昔のお見合いは食事をしながら行われていたことを思い出しつつ、この文章を書いている。
 よくよく考えれば、普段の生活でも食事で相手との距離を測り、縮めたり拡げたり現状維持を図ったりしているではないか。

 食事やおやつ休憩は室内楽リハの楽しみの一つだ。共演者が何を好み、どんな様子で飲み且つ食べるのか。どんな話題を選ぶのか。言葉や音だけでは交わしきれない情報がそこには詰まっている。

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