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声劇台本「静かなこの夜に」

【静かなこの夜に】
(しずかなこのよるに)

【キャプション】
――それぞれの「好き」を抱える思春期の私達
いつか離れ離れになってしまうから、こんな日常の一コマさえ大事にしたいと思った

【詳細】
女性♀4 
性別変更不可
男性キャストが女性として演じることは可
所要時間:30~40分程度

【ご確認ください】
〇していい事〇
  一人称の変更・語尾の変更・方言への変更・男性キャストの女性キャラクターとしての上演・金銭の発生しない場での上演・演劇部などでの使用
×ご遠慮ください×
  キャラクターの性別変更・人数変更・過度なアドリブ・内容改変・前読み無し・茶化したり、誹謗中傷等・金銭の発生するサイトへの投稿(ご相談ください)

先生に怒られるので旅館では静かにしましょう
※叫べない環境の方が多いので大声を出さないでもできる女子シナリオが書きたいなぁと思って書きました( ˘ω˘ )
※一部気持ちとして百合(GL)を含みます

旅館の部屋のみで完結するので演劇の練習とかにも使ってもらえたら嬉しいです。
モノローグの部分は、全員ストップし暗転、モノローグの人物にだけスポットを当てる。モノローグのあと照明を付けて動き始めるという流れでどうぞ。

【登場人物】
■山城美玖(やましろみく)双子の姉 体操部所属
隣の席の加賀大和の事が気になっている
ストレートのロングヘア
■山城美亜(やましろみあ)双子の妹 合唱部所属
担任で顧問の三笠陸奥先生が好き
ふんわりとしたロングヘア
■霧島米子 (きりしまよねこ)帰宅部
双子には「よねこ」と呼ばれがち/明日海には「キリコ」と呼ばれている
文武両道でなんでも標準以上にはできる
短めの髪の毛
■日向明日海(ひゅうがあすみ)合唱部
クラスメイトの霧島米子のことが好き
双子には「アスちゃん」と呼ばれている/米子には「明日海」と呼ばれている
お嬢様で幼稚園から私立、女子校出身だったが自分を変えるため高校受験をして地方から出てきた
【お話に出てくる人物】
▲日向明日香(ひゅうがあすか)
明日海の姉で有名なコスプレイヤー
▲加賀大和(かがやまと)
美玖と米子の間の席の男子
▲三笠陸奥(みかさむつ)
四人の担任で合唱部の顧問

【配役表】
山城美玖 :
山城美亜 :
霧島米子 :
日向明日海:

===================『静かなこの夜に』


≪修学旅行先の旅館≫

美亜:あ~…疲れた
明日海:あ、もう美亜(みあ)さん!
明日海:荷物を放り出さないでください
美亜:んえ~?
美亜:い~じゃんい~じゃ~ん
美玖:あーっと、ごめんね、アスちゃん
美玖:ほら、美亜 私が恥ずかしい思いするんだから家みたいに寛(くつろ)がないでよ
美亜:なんでよ~!
美亜:旅館の女将さんがさ、『おうちにいるみたいに寛いでくださいね』って言ってたじゃん
米子:いやそれは決まり文句だろ?
美玖:まったく、誰に似たんだか…母さんか
美亜:ママだね~(笑う)
米子:ほれ、靴はそろえておいてやったから、もっとそっち寄ってくれよ
米子:美亜が部屋の真ん中で大の字になってたら皆が困るだろう?
美亜:あそっか(慌てて起きる)ごめんごめん!
美玖:疲れてるのは皆一緒でしょ
美玖:はぁ・・・まったく
 
美玖:ところでアスちゃんはそんな端っこで何やってるの?
明日海:私ですか?荷ほどきです
美亜:荷ほどき?
米子:なぁ、荷ほどきって部屋に入って早々(そうそう)することなのか?
明日海:ルーティンなんだから、仕方ないじゃないですか
美亜:え~もうちょっとゆっくりしようよ~
美玖:まぁまぁほらほら!
美玖:美亜のことはは置いといて
美亜:置いておかないでよ!
美玖:(被せて)置いておいてっ!
美玖:皆も窓の外見てみたら?
美玖:(カーテンを開ける)じゃーん!海側!
米子:おお!綺麗じゃん!明日海(あすみ)も来いよ!
明日海:うん(窓辺に近づく)
明日海:わぁ!綺麗!
美亜:ほんとだ!すご~い!
美玖:二人とも!部屋割りじゃんけんで海側の部屋を勝ち取った米子(よねこ)に感謝しなさいよね
米子:美玖!よねこって呼ばないで!
美亜:いや「よねこ」でも「キリコ」でもどっちでもよくない?
米子:よくない!
米子:霧島米子(きりしまよねこ)ってお酒みたいじゃん!
米子:でもキリコならサスペンスの悪役みたいでかっこいいだろ
美亜:そんなこと言って、隣の席の大和(やまと)にからかわれたんでしょ~?
明日海:私は、キリコが「キリコ」って呼ばれたいなら、それでいいと思う
米子:流石明日海(あすみ)!ありがとなっ(抱き着く)
明日海:っ(照れる)
美亜:お~お~イチャイチャしおってからにぃ
明日海:い、イチャイチャなんて!
米子:(同時位にかぶせる)いやイチャイチャはしてないだろ
明日海:あ、うん(しゅんとする)

明日海:そうだよね、キリコは私のことなんて何とも思ってないし

【間】

―明日海のモノローグ―
明日海:私は友達の霧島米子(きりしまよねこ)が好き
明日海:ずっと女子校で育ってきた私には男子との付き合い方がまだよくわからない
明日海:そんな私を、キリコはいつも助けてくれる
明日海:キリコは私のヒーローなの

明日海:男子に揶揄われ(からかわれ)困っていた私をキリコが助けてくれた
明日海:親には禁止されていたけど、姉の影響でこっそりとアニメをみて育った私には
明日海:女児が使うような、魔法少女みたいにキラキラした文房具は家を出てやっと持てた宝物だった
明日海:それを揶揄され(やゆされ)笑われた私は、動くことも声を発することもできなかった
明日海:けど、キリコは違った
明日海:「私も家にあるよ」と言って私のペンを取り戻してくれた
明日海:「何持っていたっていいじゃん。可愛い明日海にぴったりでしょ」と言って笑ってた
明日海:それからずっと、キリコと一緒にいる

明日海:いつでも私を助けてくれる
明日海:いつも私を見ててくれる
明日海:キリコは、私のヒーローなの
 
【間】

≪四人とも窓辺で細波(さざれなみ)を見ていた≫

美玖:さて、皆!眺めは堪能した?
美亜:した~!お~しゃんびゅ~!
美玖:そしたらアスちゃんも荷ほどきの続きしたいだろうし、
美玖:それぞれ荷物の整理とかしましょ?
美亜:え~旅館の探検は?
米子:さっさと荷物整理して、それから探検すればいいだろ
米子:早く終われば早く探検開始できるぞ
明日海:夕食の時間もありますし、早めに自由になっておいたほうがいいと思います
美亜:う~ん、それもそうか…
美玖:さっさとしないと三笠(みかさ)先生見回りにきちゃうかもよ?
美玖:ぐちゃぐちゃできったなーい部屋、見られてもいいの?
美亜:それは困る!
米子:流石に男性教師が女子部屋こなくないか?
明日海:そうですね、担任とはいえ異性ですし…
美玖:しー!二人ともしー!これで美亜がスピードアップするならそれでいいのよ
米子:あ、あ~~!そうだよな!むっちゃん先生担任だもんな!くるよな!な!
明日海:そ、そうですね。だから早く支度しましょう
美亜:うん!

【間】

―美亜のモノローグ―
美亜:私は担任の三笠陸奥(みかさむつ)先生が好き
美亜:先生と生徒なんて結ばれないってわかってるし
美亜:むっちゃん先生は人気者だ
美亜:だって思春期の私たちが通う学校で
美亜:若くて、かっこよくて、優しくて、独身(指折り数えながら)
美亜:加えて公務員、合唱部の顧問で美声(びせい)
美亜:人気がでないわけがないんだ
美亜:双子の姉、美玖(みく)にもミーハーだと呆れられた
美亜:それでもいい 今だけだとしてもいい
美亜:私は、むっちゃん先生が好きだ
美亜:もし、来年先生が担任じゃなくなっても
美亜:いつでも会えるようにって、合唱部に入った
美亜:でも、赴任先が変わるかもしれない
美亜:だからいつ会えなくなっても後悔しないように、
美亜:私はいつでも、むっちゃん先生を想ってる
美亜:大好き、せんせ

【間】

≪四人とも部屋で荷物の整理をしている≫

明日海:よし、これで終わり
米子:明日海(あすみ)は早いなぁ
美玖:アスちゃんはそもそも荷物綺麗にしてるしね
明日海:みんなの制服もかけておくね
美亜:アスちゃんありがとう~
美玖:私も終わったから皆の分お茶淹れるね
米子:美玖ありがとう
米子:よしっと、私も終わり!
米子:美亜は~?(振り返る)
美亜:うぅ・・・
米子:うわっ、きたなっ
美玖:あんたなんでこんなに広げてんの?!
美亜:だってどうやって整理するかわかんなくて
美亜:鞄、ひっくり返した
米子:うわぁ・・・
美玖:流石・・・
明日海:えっと・・・美玖、美亜って普段も・・・?
美玖:うーん、掃除は上手なんだけど、片づけは壊滅的なのよ
美亜:かいめつてき?!それはひどくない?
美玖:これ見たら皆納得しかしないわよ
米子:あー、うん、そうだな
明日海:えっと、まず服を整理して、お菓子をこちらに
美亜:うっ・・・アスちゃんありがとぅ
美玖:アスちゃん、ごめん
明日海:いえ、大丈夫です
明日海:姉の部屋も「こう」なので
米子:「こう」ってことは
美玖:まさか明日香(あすか)お姉さんも、部屋が
美亜:汚いということ?(嬉しそうに被せる)
明日海:あ、はい
明日海:そうなんですよ
明日海:でも、皆さんに話したことを知ったら
明日海:こっぴどく怒られるので内緒にしてくださいね
美亜:なんだ~仲間じゃん明日香ちゃん~
美玖:美亜!忘れなさい!
美玖:あんたは全力で本人に言いそうだから!忘れて!今すぐ!
米子:あ、ははは(乾いた笑い)
米子:あーでも、コスプレイヤーさんって部屋汚いっていうし
明日海:いえ、綺麗な方もたくさんいるのでそれは偏見(へんけん)です
米子:そうなのか?
明日海:もちろんです
明日海:そんな偏見で語ったら消されかねません
美亜:消されるってそんな大げさな
美玖:まぁ炎上はするでしょうね、SNSで何か言おうものなら
美亜:え、マジ?
米子:(頷く)
明日海:(頷く)
美亜:・・・黙っとく

米子:よ、よし美亜の片づけも終わったし
米子:旅館の探検でもいくか!
美亜:やったー!
明日海:旅館の地図も持ちました
美玖:売店でお土産を買ってもいいって言われてるから
美玖:ちゃんとお財布も持ったよ
米子:エコバックも持ったな
美亜:あ~待って待って!お財布と、エコバックと、スマホと
美玖:本っ当相変わらず・・・ごめんね、二人とも
明日海:大丈夫ですよ、まだお時間ありますし
米子:そうそう、美亜はムードメーカーだからな
美亜:そうそう!む~どめ~か~だからね!
美玖:あんたが言うことじゃないの!
美亜:いったぁ!
美玖:ほんっと、調子いいんだから
美玖:ほら、行くわよ
美亜:あ~美玖ってばリップ塗ってるじゃん 色付きの~
美玖:は、はぁ?そんなことないし
米子:塗ってるな ほんのりぴんく
明日海:つやっとしてますね
美玖:う~
美亜:はは~ん、そうだよね
美亜:売店でうっかり、大和に会うかもしれないもんね~
美亜:ほっほ~う
明日海:み、美亜さん
米子:まぁいいじゃん、バレなきゃ問題ないだろ
美亜:うえぇ?なんで皆美玖には優しいの?!

【間】

―美玖のモノローグ―
美玖:私は隣の席の加賀大和(かがやまと)が気になっている
美玖:気になっていると言っても、まだ付き合いたいとか、ちゅーしたいとか
美玖:そういうことじゃない
美玖:あいつはだれにでも優しいし 誰でも容赦なくからかう
美玖:いつからだろう、目で追うようになったのは
美玖:いつからだろう、大和が反対隣の米子と話していると胸がチクッと痛むのは
美玖:私はあいつが気になってる
美玖:でもこれが、恋なのか、独占欲なのか
美玖:私は決めかねているのだ
美玖:美亜と出かけても「あのマフラー、大和に似合いそうだな」とか
美玖:「あのケーキ、大和も好きかな」とか考えてしまうし
美玖:陸上部が体育館で練習していると、ついよそ見をして怒られてしまう
美玖:大和が女子マネと話していると悲しくなるし
美玖:ふと目が合うとドキッとする
美玖:私だけに笑いかけて欲しいって思う
美玖:だからこれはきっと、独占欲

【間】

≪夕食後 夜≫
美亜:は~お風呂気持ちよかった~
美玖:そうね、夕食も美味しかったし
明日海:旅館のあちこちも綺麗でしたし
米子:売店もお土産充実してたし
美亜:(同時だけど役の間で口々に)楽しかった~
美玖:(同時だけど役の間で口々に)楽しかったわね
明日海:(同時だけど役の間で口々に)楽しかったですね
米子:(同時だけど役の間で口々に)楽しかったな
0:四人共顔を見合わせて笑う
明日海:さて、お布団も敷きましたし
美玖:そうね、やるべきことは
美亜:(同時に)恋バナでしょ!
米子:(同時に)枕投げだな!
明日海:えっと?
美玖:なんて?
美亜:恋バナでしょ!こ~い~ば~な~!
米子:修学旅行の夜って言ったら枕投げだろ
美亜:ね!美玖!
米子:なぁ明日海!
明日海:えっと・・・(美玖に困惑した顔を向ける)
美玖:どうする?
美亜:明日香ちゃんたちも絶対恋バナしたよ!伝統は受け継がなきゃ!
米子:いやいや、絶対枕投げだろ!
美亜:女子と言えば恋バナだよぉ!
米子:枕投げだ!
美亜:そんな男子みたいなことしないよ~
明日海:えっと、姉は、コスプレ大会したって言ってました
米子:え?
美玖:わぁ
美亜:流石明日香ちゃんだね
明日海:すみません なので姉の事は参考にならないかと
美玖:そうね、障子や隣の部屋に迷惑をかけないのなら枕投げ、してもいいわ
米子:やりぃ!
美亜:え~!
美玖:その後、静かに恋バナすればいいでしょ
美玖:どうせ美亜が語りたいだけなんだから
美亜:思春期の恋は語りたいだろ!
米子:・・・
明日海:・・・
美玖:あんただけみたいよ?
美亜:う~!じゃぁ聞いてもらうからいい!
美玖:毎日聞いてる私はうんざりだけどね
美亜:復習だと思って!
美玖:何を復習すんのよ!
美亜:テストに出るから!
美玖:出ないでしょ!
明日海:(クスクス笑う)
米子:わかったわかった
米子:まったく山城姉妹は…いつもこうやって喧嘩してんのかよ
美玖:美亜がおバカさんなだけよ
美亜:あ~バカって言った~!
明日海:ほらほら、早くしないと消灯時間になってしまいますよ
米子:そうだな!ほら よっと(美亜に枕をなげる)
美亜:んはっ!ちょ!顔はダメだよぉ!
美玖:あはは!美亜がぼーっとしるから(美亜に枕を投げられる)
米子:明日海は無理しなくていいから、あんまりうるさかったら止めてくれよな
明日海:あ、うん えっと
美玖:はい(枕を手渡し)アスちゃんはこっちチームです!
美玖:美亜に投げて投げて!
明日海:え!はい!えいっ!

【間】

―米子のモノローグ―
米子:私はみんなが好きだ
米子:中学までは一匹狼のように扱われがちで
米子:毎日同じことの繰り返しで退屈だったけど
米子:この学校に入って、みんなと会って、
米子:美玖も美亜も、明日海も、いつも声をかけてくれて
米子:学校生活が楽しくなった
米子:それでもいつか、それぞれの道に進んでバラバラになってしまうだろう
米子:疎遠になってしまうと友達もいるかもしれない
米子:同窓会でしか会えなくなるかもしれない
米子:だから後悔しないように、今はこうやって
米子:みんなでバカやっていらるのが嬉しい

米子:私は美玖も、美亜も、明日海も、みんなの事が好きだ
米子:いつか離れ離れになってしまうから、こんな日常の一コマさえ大事にしたいと思ったんだ


≪お読みいただきありがとうございました≫

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